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爆走腐男子くん  作者: らんたお
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おいでませ、生徒会!

 数多ある学園ものBL本の多くは、生徒会という組織に関して定説がある。

 それは……美形と権力は王道、ということ!!

 だって、ねぇ? この状況がオイシイのは、疑いようがないほど当たり前なわけで。


「未来、久しぶりだね。元気にしてた?」


 にっこりと、前生徒会長がそのお美しいご尊顔を綻ばせつつ後光を放っていらっしゃいます。目がぁ~目がぁ~!!

 まるで八雲くんみたいな優しい口調の美形な前生徒会長。実は、半分ドイツ人の血を引いて居られます~!!

 口調が柔らかいのはドイツ人のお母様の影響らしく、中3に上がる頃に日本に移り住むまで向こうで日本語を教わっていたんだそうだ。

 美しい金髪に綺麗なグリーンの瞳。お母様が童顔なせいか、彼も男前ながらも若干幼さを残しておられて…って、何で僕がこんなも敬語を使っているかとお申しますと!!


「いい加減にせんか!!」

「痛ぁ!!」


 い、痛いぃ~!! 頭が割れるぅ~!! 今の、絶対拳だったでしょう!?

 お久しぶりかつ貴重な前生徒会長のお姿に浸っているところをよくも邪魔しやがってと、最大の恨みを乗せて睨み上げたら、お前がグダグダうっせぇのが悪い、と悪びれた様子もなく、けっけっけっと馬鹿にする生徒会長。

 ムキィ~!! そんなところもイラつくムカつくカッコいい!! 僕が頭悪くなったらどうするの、俺様暴君~!!

 反撃を試みてみた…が、僕の頭を鷲掴み、反撃回避。くっ…リーチの差が、憎い!! 全く届かないじゃないか!!

 一方的な死闘を繰り広げていたら、前生徒会長のお上品な笑い声が聞こえて来て…


「ふふふっ、未来は本当に面白いなぁ」


 僕の事詳しいね、と大変楽しそうに仰られ……た、助けて下さいよ!! っていうか、あれ? もしかして僕、また口に出てたの?

 そういえば生徒会長が、グダグダうっせぇのが悪いとかなんとか言ってたけど……だからかぁ~

 いや、だからって殴られるのおかしい!!

 暴力には暴力で応戦と息巻いていると、お前の攻撃はいつだってそよ風だな、心地いい春風をどうもありがとう、とか言われる。くっそぉ~う!!

 ムギギィ~と必死に攻撃を仕掛けている間も、前生徒会長はにこにこと見守っていて……なんだか、幼子の反応を微笑ましく見守ってる感がありありと伝わってきて気まずい。

 なんか居たたまれなくなったので、作戦変更!!


「前生徒会長!! 生徒会長がいじめるんです!!」


 いつもいじめられる、すぐ殴られる、だから懲らしめてやってくださいと懇願していれば、お優しい前生徒会長ならばきっと、僕の味方になってくれるに違いない!!

 そうなの、それはかわいそうだね、そんなことはいけないね、と憐れみの表情を浮かべ、生徒会長を叱ってくれるに決まっている!!


「そうなの? じゃれてるだけかと思ったよ」


 と、僕の期待とは正反対な笑顔で仰られました。何故そうなる!? ていうか、あれを見てじゃれてるだなんて…バイオレンス過ぎるにもほどがあるでしょう!?

 僕は暴力を振るわれているのにぃ~!!

 でも、終始、未来はいちいち反応が可愛いからからかわれちゃうんだね、と取り合ってくれない。

 必死に訴えれば訴えるほど頭を撫でられるばかりで…次第に、前生徒会長から放たれるマイナスイオンで、こっちまでほわ~っとなってしまう始末。

 あれ? 僕今まで何してたんだろう? 取りあえず僕も、えへへと笑い返すことにした。


「つかさ、お前何しに来たんだよ」


 勝手に入ってくんな部外者、と生徒会長の呆れ声で、せっかくのマイナスイオン効果終了~

 僕を現実世界に引っ張り戻すな!!


 ていうかさ、そもそも本当のBL学園ものみたいに一般生徒立ち入り禁止でもあるまいし、僕がここにいてもよいではないか。

 何ケチケチしてるんだよとむくれちゃったけど、そう言えば、3年生だからと生徒会を辞めたはずの前生徒会メンバーを何故招集しちゃってんだろう、と疑問に思う。

 もしかしなくても、それほど忙しいってこと? 皆が黙々と作業しているのを傍らから盗み見てはぽぉ~っとしてたのって、かなり迷惑だったり?

 目が合うと苦笑を漏らしては僕の頭を撫でたり、居心地悪そうにしてたりしたけど…お邪魔だったかな?


 でもでも、こんな機会滅多にないんだよ!? 前生徒会と現生徒会だよ!? この美形メンバーが一堂に会すことなんて、この先何回あるか分からないのに!! 是非ともこの瞬間をこの目に焼き付けとかなくちゃって思うじゃん!?

 腐男子としての使命に闘志を燃やす僕の熱意に、生徒会長の冷ややかな眼差しが向けられる……が、知ったことか!! 例え人類を敵に回しても、僕の腐男子魂が尽きることはないのである!!

 という挑戦的な視線を送れば、生徒会長の諦めに似た深い溜め息。よし! 僕の勝ち!!


「まぁいい。居るなら居るで、仕事手伝え」

「やだ!! 僕は今、前生徒会長を見つめるので忙しいので拒否します!!」

「か~え~れぇ~!!」


 ぎゃぁ~!! 生徒会長が、般若と化した!! ちょっ、どんだけ余裕ないのこの人!!

 そういえば、僕に呆れてる以前になんか元気ないよね。もしかして、物凄く疲れてる? いやでも、こんなに怒られるようなことかなぁ?

 避難のためと、多少の申し訳なさから前生徒会長に密着しつつ、この人怖いんですけどと訴えたら、頭を撫でながら笑顔で仰られた。


「ホッチキス止めお願いね」

「……はい」


 どうやら、手伝うしかなさそうである。てか、そんなに人手不足だったの? 言ってくれれば、クラスメイトを連れてきたのに!!

 ホッチキス止めしなければならないプリントの山達を見ながら絶望する。何、この量!! これを生徒会だけでやるつもりだったの!? 無謀にもほどがあるよ!!

 絶対普通に配った方が効率がいいのに、と思いながら、目の前の山と格闘した。

 あぁあ~僕の生徒会ウォッチングゥ~と項垂れていたら、後ろで生徒会長のせせら笑う声が聞こえてカチン!! 通り過ぎ様に、思いっきり足を踏ん付けてやったのは不可抗力!!





 手伝い始めてからどれぐらい経ったのか、目がしょぼしょぼし始める。

 眠すぎて、何も出来ない。あぁ~瞼が、もう……



 はっとした。あれあれ? 僕、どうしたんだっけ?

 体を起こして、目の前を見る。

 プリントの山……ホッチキス止め!! 僕、もしかしなくても寝ちゃってた!?

 思いっきり背もたれにもたれ掛ってた気がするけど、皆に気付かれる前に仕事仕事っと気を取り戻した瞬間、カシャッ。

 まるでシャッター音みたいと思いつつ、気にせずに目をぱちぱちしながらよだれを拭いていたら、カシャッ。

 というか、今のってフラッシュだよね? 音の方を見上げた瞬間、カシャッ。


「……ほぇ?」


 カメラのレンズが、僕に向いている。って、ナニゴト!?

 唖然としてたら、カメラの向こう側から前生徒会長が現れ……え。


「あ、ごめんね? 寝顔が可愛かったから、つい」


 苦笑交じりにそう仰る前生徒会長。母に君のことを話したら、是非見てみたいと頼まれたから写真撮っちゃった、とのこと……え。

 一瞬間を置いて、あぁ、そうだった…と思い出した。前生徒会長は大の写真好きで、以前、大きなフォトコンテストで優勝したことがあるんだった、と。

 いやでも、彼の被写体はほとんど物や自然だったはず!!

 人物は、申し訳程度に写る感じだと聞いていたんだけど……ソレ、僕思いっきり写っちゃってませんかね!?

 ていうかそれ以前に…


「消して下さいぃ~!!」


 よ、よだれ垂らして寝てる顔はアウトォ~!!

 駄目絶対っ、と前生徒会長にお願いしたけれど、油断した君が悪いんだよ、と嬉しそうに微笑まれてはどうすることも出来なかった。

 その後、僕がもたれ掛っていたのが実は前生徒会副会長だったことや、本当はプリントのホッチキス止めはそんなに性急にやらなくちゃいけない作業じゃなかったなど、なんかもう、色々あってうわぁ~ってなった。

 ていうか、もたれ掛っていたっていうか、正確にはしがみ付いてたんだけどね!! つまり、前生徒会副会長のブレザーによだれをつけてしまっ…ごっ、ごめんなさいぃ!!

 別に怒ってなかったけど、僕が寝ちゃってた間、しがみ付かれてたから作業を中断してたらしい。

 だって、前生徒会副会長の左腕の袖を思いっきり掴んでたらしいからね!!

 これはもう、謝り倒すしかない気がする。


「申し訳ございませんお代官様ぁ~!!」


 土下座したのは言うまでもない。

 どうかお許し下さいませ~と謝り倒す僕に、俺は悪代官か、と前生徒会副会長の適切なツッコミ。

 普段だったら、イイネッて最高のスマイルと共に親指立てて言ってるところだけど、相手が前生徒会副会長なので無理でしたごめんなさい!!

 平に平に謝り続ける僕を馬鹿にして笑っていた生徒会長にはカチンと来たので、指さしながら、生徒会長は札付きの悪な山賊の頭ってことでと言った途端頭を殴られた。

 この、乱暴者ぉ~

 そんなポンポン僕のこと殴る人、この世で生徒会長だけだよ!!

 ていうか、何、殴るぞって言いながら殴ってるんだよ! それだったら、殴るぞって聞く意味ないし!!


 って、それどころではない!! 潔癖症であると有名な前生徒会副会長のブレザーをよだれで汚したのだ。これは、死刑に値するかもしれない!!

 弁償かクリーニングか。僕の少ないお小遣いでどうにかできるレベルで選択するならばクリーニングなんですけど、それでも宜しいですかと聞いたら、別に構わない、早く家に帰って眠れ子リス、と頭をポンポンされながら仰られました……これは、とんでもなくお怒りになっていらっしゃると解釈してよろしいか!?

 だって、自分にも他人にも厳しいと称される前生徒会副会長からのお言葉だよ!? きっと、言葉の通りに受け取っちゃいけないに違いない!!

 お前のせいで仕事が滞ったどうしてくれる、眠いんならさっさと家に帰って寝ろ邪魔だ、きっとこういう意味に違いない!!

 前生徒会副会長を見つめながらあたふたする。


「お前、いい加減粟森先輩のこと誤解すんの止めろよな」


 粟森先輩はそんな怖い人じゃねぇよ、と生徒会長。

 おまけに、前生徒会長まで、康晴は誤解されやすいんだよねぇ、と苦笑気味に仰られた。


「コイツに誤解されてない奴なんているんですかね。俺なんて乱暴者な俺様だと思われてるんすよ」

「それはあながち間違ってはいないよね」


 と、生徒会長の言葉にいい笑顔で断言する前生徒会長。ですよね!? と、そこに僕が加わったことで生徒会長に小突かれたけど、まぁ和気あいあいとしていたと思う。

 ただ、何故か視線を感じて…視線の先には、前生徒会副会長。しかも、すぅっと目が細められて、右手が伸びて来るではないか!? もしかして、叩かれる!?

 思わずぎゅうっと目を瞑ったら、頭に若干の重みが……って、これってまさか?

 見上げた先に、前生徒会副会長の顔。


「別に、そこまで潔癖症じゃない。俺が嫌いなのは、汚らわしいものだけだからな」


 と、無表情で何考えてるのか分からないと称されるそのご尊顔を綻ばせておられました。

 ちょっとばっかり気になる発言もあったものの、あえてそこはスルーしつつの僕の行動は非常に俊敏だった。

 目にも止まらぬ速さでブレザーのポケットからスマホを取り出し、カシャリと撮影成功!!

 まぁ、完全なる一瞬ではなかったので若干前生徒会副会長の笑顔が驚き顔へと変化し始めてはいたが…取りあえずセーフ。


「はぁ~危なかった」


 危うく、ベストショットを逃すところだった!! 自分の瞬発力に感謝!!

 そうこうしている間に、驚きの呪縛からいち早く復活した生徒会長が声を上げる。


「は……あ? 何がだよ。てか、何だ今の俊敏な動作!! お前はロボットアームか!!」


 顔も体も動かないのに手だけ素早く動くのってなんか気持ち悪いな、とすっごい不気味がられた。

 いやいやいや、ロボットアームって…さすがにそんな機械的に動いてるわけないでしょ!

 そりゃ確かに、偶発的に起きるシャッターチャンスを逃すまいと、無意識下に撮影できるよう家で何度も練習をしたけどさ。

 だって、もう二度と、八雲くんの王子様の微笑のシャッターチャンスを逃したくなかったんだもん。

 しかし自分よくやった、偉いぞ自分! と内心褒め称えつつ、前生徒会副会長の了承を得て、マイベストコレクションフォトギャラリーに永久保存させてもらった。

 その際、それで俺への誤解が解けるなら、と仰っていた意味は分からないけども。

 僕は別に誤解なんてしてないよ? 前生徒会副会長が前生徒会長と只ならぬ仲だってことも、潔癖が高じてマイクから30cm以上に口を放すことも、その他諸々、全部ぜぇ~ぶ本当のことだもん!!


「いや、前者が明らかにおかしいだろ。それを誤解と言わずしてなんて言うんだ」


 勝手に付き合ってることにすんなよ、と生徒会長。生徒会長こそ、何を言っているんだ!!

 お二人はそれこそ、親同士仲がいいこともあって幼少期からそれぞれの実家や別荘に休暇の度に泊まり込みするほどに親しい間柄なんだから、そうなっちゃってないわけないじゃん!?


「いや、普通そういう間柄のことを幼馴染と言うだろ。幼馴染イコール恋人ってなったら、世の中どんだけの人達が対象になっちまうんだよ。ねぇわ」

「ふっ、2人は学園内でもとってもとっても仲がいいじゃん!! 2人が一緒にいないことってないじゃん!?」

「それは、僕が世間知らずだからだよね」

「昔から、オスヴァルトの不可解な言動を止めるのは俺の役目だったからな」


 やっぱり、まだまだ日本の文化に慣れてない所があるんだよね~、と仰った前生徒会長に対し、いやお前のそれは天然だ、と仰る前生徒会副会長。

 そんな微笑ましいやり取りがなされる様を見れば……


「やっぱり、お2人は只ならぬ仲!!」

「じゃねぇよ!!」


 バチーンと、生徒会長に頭を叩かれる。

 グーじゃないだけマシ……とか、そんなわけないからぁ~!!


「暴力会長ぉ~!!」


 ポカスカ生徒会長を叩いていたら見回りの先生が現れ、もう遅いからお前ら帰れ、と追い出されました。

 って!! せっかく現生徒会と前生徒会の共演を眼福しに来たはずだったのにぃ!!

 しょんぼりしながら、帰宅したのは言うまでもない。

 いやでも、前生徒会副会長の微笑みゲットしたし、まぁよしとするか!! お姉ちゃんに話すネタも出来たし、とホクホクしながらお家に帰ったのだった!!

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