運動部の萌え展開!
あれ以来、僕と八雲くんは暇さえあれば休日に遊びに行ってて、映画見たり、図書館行ったり、ウィンドウショッピングしたりと過ごしてきたわけなんだけど…
そろそろ、ゲームセンターに行ってみたいんだよね。昔から興味はあったけどさ、行ったことなくて…
何故か友達にその話題を振るといつも青ざめて、いつか、また今度、って言いながら話題を逸らされて、結局連れて行ってくれなかったんだよねぇ。
まぁ、その代わりに景品のぬいぐるみをたっぷり貰ったけどさ!
だからかな、ぬいぐるみを貰う度に馳せる思いが強くなって、遂には僕のゲームセンターへの欲求を最大限まで押し上げてしまったのだ!!
高校生になったら絶対行くぞと思いながら今まで過ごしていたんだけど…どうやら八雲くん、ゲームセンターには行ったことがないみたいなんだよね。
八雲くんもイケメンだったおかげで今まで苦労してきたみたいだし、そもそも八雲くんにゲームセンターってイメージに合わないし…
となると、だ。ここは一つ、栄くんを駆り出すしかないではないか!!
でも……
栄くんはバスケ部だからなぁ。早朝・放課後・休日と、いっつも部活三昧なんだよねぇ。
しかも、今年入ったばかりの新人だ。当然、練習を休めるはずもない…
でも、諦めたくない!! そう思った瞬間、僕は思い出した。
日曜日はバレー部の練習試合で体育館が使えないから、練習は休みだって言っていたことを!!
早速、栄くんの日曜日の予定を確保するため、僕は戦地・体育館に赴いたのであ~る!!
「未来くん、栄を呼ばなくていいの?」
八雲くんも一緒にね!!
べ、別に、一人で来るのが怖かったとかじゃないんだからね!? 巨体のオンパレード過ぎて、僕1人小人みたいになっちゃうからって怯えてるわけじゃないよ!?
前からマネージャーにならないかって凄い勢いでキャプテンに誘われてて、このままじゃ本当にマネージャーにされちゃいそうだから単独行動はしないようにしてるってだけだから。アーンド、栄くん確保のためには愛する八雲くんがいれば完璧っと思っただけ!
決して、決して、1人じゃ太刀打ちできないからってわけじゃなかったんだからね!?
「おー!! 未来じゃないか! よく来たな!!」
「うぎゃ~!!」
キャ、キャ、キャ、キャプテン!! てか、僕の視点が高くなって……か、担がれている!?
ジタバタしている間にも、キャプテンはスカズカと体育館の中へ僕を攫ってって…たっ、助けて八雲くん!!
僕の必死さに八雲くんも慌てて体育館へ…って!! 駄目だ、よく考えたら、八雲くんもバスケ部に誘われてる1人だった!!
「おぉ!! お前も来たのか美形くん!! やっとバスケ部に入ってくれる気になったんだな!?」
「!? 名前も知らないくせに勧誘してたの!?」
八雲くんが否定の言葉を口にするより先に、思わず声を上げた僕。名前ぐらい把握しとけよぉ~! 大体、八雲くんはバスケ部には入らないし!!
勉強も出来る上に運動神経も抜群だからサッカー部にもバレー部にも誘われてるけど、家事をお姉さんや妹さんと一緒にやってるからって断ってるんだよ。
美形家族だからか、お姉さんや妹さん目当てのストーカー紛いの人がいるらしくて、男の自分は出来るだけ2人の傍にいてあげたいんだって前に話してくれた。
だから無理なの!! 勧誘して来ないで!!
因みにだけど、この間の放課後街ブラは、たまたまお姉さんや妹さんに予定があって一日暇だったからOKだったんだよ、と付け加えておく。
「八雲くんはバスケ部には入らないよ! 僕だって、BLウォッチングがあるからやらないんだからぁ!!」
「何ウォッチングだか知らねぇ~が、お前がいると先月死んだみるくちゃん思い出して頑張れるんだ。だから頼む! 居てくれ!!」
「だから僕はリスじゃないってば!!」
みるくちゃんと言えば、キャプテンの愛すべきペットのリスの名前だ。このデカい図体に似合わずリスを溺愛する様は、目撃者を最大限にドン引きさせてきたそうな。
しかし先月、老衰のためみるくちゃんは亡くなって、その時のキャプテンの哀しみ様と言ったら凄まじかったらしい。
ろくに部活にも顔を出さなくなり、部活に来たかと思えば泣き崩れる日々。そんなキャプテンを慰めようと、そういえばうちの学校にリスみたいな新入生いたよなって話題になったらしい。
キャプテンは最初、みるくちゃん以外のリスに浮気するもんかっとカッカしてたそうだが、たまたまBLウォッチング中の僕を見つけてしまい……好かれてしまった。
いやホント、急にみるくちゃぁ~んっと言って抱き付いてこられた時には、殺られるっと思ったからね!!
本当に怖かったんだよぉ…
デカい図体ながらも、熊って言うよりはバスケマンガに出て来そうな高身長のイケメンのはずなんだけど……残念なイケメンなんだよねぇ。
「未来ぃ~バスケ部の癒し!!」
「バスケ部じゃないってば!!」
いつものように噛み合わない会話でギャースカギャースカやってる僕等に、栄くんは何やってんだお前等、な視線。いや、そんな冷めた目で見てる暇があったら、僕を助けてよぉ~!!
完全にキャプテンの懐の中で暴れても効果なしな状況に、一つの転機が訪れる……己のイケメン度をこれ以上ないほど自覚しているイケメンさんのご登場で。
「笹嶋、いい加減放してやれよ。未来はうちのマネージャーだぞ?」
「!? 飯田!! 性懲りもなくまた来やがったか!!」
って、何火花散らしてんだよキャプテン!! あ、因みに僕がバスケ部部長の笹嶋先輩のことをキャプテンって呼ぶのは栄くんの影響だよ!
も一つおまけに、今登場した飯田先輩はサッカー部のキャプテンなんだけど……己のカッコ良さを際立たせるためだけにサッカー部に入ったという強者だったりする。
女にモテるから、という理由だけでサッカーやってるなんて凄過ぎだけど、なんでもそつなくこなせてしまう上に、なんだかんだで部活には真面目に出てるし人望もあるんだよねぇ。
キャプテンとしては何の不足もない人材であることは間違いない、んだけど…無駄に、しかも意識的にキラキラを放出させるってのが玉に瑕。
「さ、いい加減俺の子リスちゃんを返してもらえる?」
「だ、誰がお前の子リスだ!! 未来はうちの子リスだ!!」
いやだから、リスじゃないってば!! せめて人間扱いしてくれません!?
そもそも、僕はあなた方をサポートする気なんて全然ないから、マネージャーにはならないし!! いい加減にしろってのは僕のセリフだよ!!
どうもこの2人、幼馴染らしいんだけど、昔っからこんな調子で張り合ってるらしい。ホント、最高に迷惑だよねぇ。
主に僕が!!
彼等が言い合いしている間にキャプテンから抜け出して、八雲くんの元へと避難する。
栄くんにも目配せしてこっち来いと言ってみたけど、知るかばぁ~かな視線一つ寄越しただけで練習に戻ってしまった…これは、育児放棄ってやつだ!! って、何言ってんだ僕!!
いかんいかん、生徒会長の影響を受け過ぎたな…
いっつも、栄くんを僕の保護者扱いするからぁ~っと思っていると、言い合いが白熱したのか、キャプテンが飯田先輩の胸ぐらを掴んだ。
さすがにまずいことになったと周りも慌て始めたところに、キャプテンの腕を振り払おうとした飯田先輩の手を避けた拍子にバランスを崩したキャプテンは…飯田先輩と一緒に倒れ込んでしまう。
とまぁ、そんなお決まりの展開に待ち受けていたのは…
「きゃぁ~~!!!!」
な、なんて美味しい展開なのぉ~!?
キャプテンの上に乗っかる形で倒れた飯田先輩の唇が、これまた上手いことキャプテンの唇に重なっているではありませんかぁ~!? 僕もうっ、死んでもいい!!
「ちょっ、未来くん!? 死んじゃ駄目だよ!?」
「つーか、お前は女子か。何、奇声上げてんだよ」
八雲くんの慌てふためいた声と、微かに聞こえてきた栄くんの声も聞き流しちゃうぐらい、今の僕は全力で脳内妄想中なのです!!
幼い頃から何かと比較され続け、友情は段々とライバル意識へとすり替わり、下らない言い合いや喧嘩を経て築かれていった関係は、いつしかお互いの存在を意識させるまでになり…何故こんなに奴が気になるのか、どうしていつも奴のことを考えているのか、そんなどうしようもない感情に支配されている時、不意に起きた事故……ゼロ距離に、奴がいる!!
と、妄想し始めたら止まらない!!
あらゆる妄想が駆け巡り過ぎて、オーバーヒット寸前だ!! そんな間にも、2人はさっさと距離を取ってげんなり、及び嫌悪し合っており……って、んなわけない!!
2人はきっと、人前でこんなベタな展開になってしまって照れているだけなんだぁ~!!
「んなわけあるか。ショック過ぎて死にたくなってるに決まってんだろ」
「お黙り!!」
つか変な妄想すんなと呆れ顔で近付いて来た栄くんに、妄想は自由だよっと反論。一方八雲くんは、凄いね未来くん小説家になれるよって褒めてくれた。
さすが八雲くん!! 僕の気持ちを分かってくれてっ…と思うが、どうも釈然としない。
僕は別に小説家になりたいわけじゃない。BLを見たいだけなんだよ!!
お互い、口元を腕で擦って事実を消そうとしている先輩方…それはつまり、自覚への第一歩。
そう、2人は今…いや、これから、愛を育んでいくに違いないのだ!! 2人の元へと駆け足で近付き、僕は宣言する。
「僕、応援してますから!! 全力で、2人を応援しますから!!」
期待に胸躍らせる僕の勢いに圧倒され引いちゃってるご様子のお2人だったが、僕の言わんとすることの意味を理解できなかったらしいキャプテンは、じゃあマネージャーになってくれっと言ってくる。
もし、もしも2人のこんな姿がまた見れるのならば…マネージャー、いいかもしれない…なんて思っていると、誰かが、僕の頭を鷲掴んできた。
って、こんなことするの、一人しかいない!!
「未来、お前の魂胆は見え見えだ。俺が許すはずがないだろぉ…」
「痛い痛い痛い!! 僕はバスケットボールじゃないよぉ!!」
「栄、暴力は駄目だよ。未来くんの頭がもっと縮んじゃうよ!」
鬼の形相な栄くんにバスケットボールよろしく鷲掴まれていると、慌てた様子の八雲くんが止めに入ってくれる。
それは有難い、有難いのだけど…もっと縮むってどういう意味かな!? そりゃあ僕、頭ちっさいけどさ。まるで今までも縮んでたみたいに聞えちゃったのは僕の気のせい!?
ていうか、指食い込んできてるんですけどぉ!?
どんだけの握力だよと思いながら、うえ~ん、痛い痛い~と泣いていたら、小動物への虐待禁止っ、とキャプテンが仲裁してくれる。
僕人間ですって言っても、可愛い子リスに癒されて嫌なことなんて全部吹っ飛んだよ、とキャプテンに頬ずりされる始末。
って、相変わらず意思の疎通が量れないんですけど!!
ていうかね、嫌な事って何の話!? 僕にとっては美味しいことでしたが!? とにもかくにも…
「僕じゃなくて、飯田先輩に抱き付いて下さい~!!」
僕にやっても意味ないですからぁ~っと言っていたら、飯田先輩は飯田先輩で、未来なら大歓迎だよと両手を広げて待ち構えちゃって……えっ、やっぱり飯田先輩そっちのけがあるんだね!? 男オッケーならば、是非ともキャプテンをお願いします~!!
僕を挟んで繰り広げられるいつもの光景に戻った体育館に、いい加減練習しろやっ、とバスケ部副キャプテンの大善先輩の怒号が響く。
なんだかんだでこのバスケ部を牛耳っているのは大善先輩なので、皆大人しく従ってたよ。あのキャプテンですらね…
キャプテン…あなたこそ、このバスケ部のマスコットなんじゃないですかと聞きたくなる瞬間であった。
その後、結局お前等何しに来たんだ、と呆れ顔の栄くんに言われて目的を思い出した僕は、今度の日曜日どっか遊びに行こうよと誘ったんだけど…一体何が目的だ、って訝しがられた。
なっ、それじゃあ僕がいつも何か企んでるみたいじゃないかと反論したら、現にそうだろ、と返されたよ…
酷いと抗議したんだけど、普段の行いの結果だろ、と冷たくあしらわれるだけだった。
八雲くんに泣き付いて事情を説明してもらったから事なきを得たけど、そうじゃなかったら本気で信じなかったんじゃないかってぐらい疑われたよ!? 友達を疑うなんて酷すぎる!!
いやでも、裏を返せば八雲くんには全幅の信頼を置いているということですよねぇ……なんかテンション上がった!! 栄くんを許そうではないか!!
僕ってばやっさしぃ~いと自画自賛しながら、日曜日の予定に想いを馳せるのであった。