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爆走腐男子くん  作者: らんたお
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新世界行き御一行様、こちらです!

 教室を飛び出したついでのBLウォッチングが見つかり、連行中の僕。一体何処に連れてくつもりなんだろうか生徒会長……なんちゃって。

 どう見ても、僕のクラスまっしぐらでござる!!

 これは、担任のお説教コースかもしれないなぁ…って、サボった時点で確定でございましたねありがとうございます!!


 僕を引きずったまま、生徒会長は教室後方の扉をがらりと開けた。


「おい倉橋、届け物だぞ。迷子になってたお前のペットだ。有難く受け取れ」


 ぽいっと、栄くんに投げつけられる僕。その上生徒会長、ちゃんと首輪付けとけよ飼い主、とか抜かしやがりました……ぼ、僕、人間!!


「…飼い主じゃねぇですよ」


 そうだそうだ!! って、弁解するとこ違うよ!! 僕もペットじゃないんだからぁ!!

 にしても、なんで栄くんは面倒くさそうにしてるの!? 普段より、五割増で目付き悪いよ!?


「お前、何処行ってたんだ? あんま遅ぇから、お前命名の学園の警備隊員に不審者逃走中って通報するところだったぞ」

「なんで不審者として!?」

「いやお前…俺が発見した時、思いっきり不審者だったぜ?」


 そんな、生徒会長まで…ちょっと、柱の陰に隠れてBLウォッチングしてただけなのに!!


「それを人は不審者って言うよね」


 や、八雲くんまで酷い…

 BLウォッチングは腐男子の嗜みなんだよ?

 こんな、見渡す限り男男男な美味しい状況で、なんでそれを観賞してただけで不審者扱いされないといけないんだ…


 落ち込んでいたら、生徒会長が不可解だと言いたげに学園ものBLを否定していく。


「つかさぁ、大体お前の言う学校ってのがそもそも有り得ねぇんだわ。何、子供の時から男だけしかいねぇ学校って…少年院か? なんで金持ちがそんなとこに子供行かせんだよ。その親、酷すぎだろ。私立に行かせるにしても、大体が家から通うっつうの。もちろん共学。大体、俺等だって金持ちじゃねぇし。一般家庭で育った上に、今まで普通に共学だったんだから。ここの連中だって、三分の一は彼女持ちだし、居なくても男だけは絶対ぇあり得ねぇって思ってんぜ?」

「そんなことないそんなことない! 絶対そんなことないも~ん!!」


 少年期からずっと男子校な全寮制の学園も、お金持ち率が非常に高いことも、男同士に偏見がないことも、むしろ同性愛歓迎も、全部全部、絶対あるんだ!! じゃないと…そうじゃないと……


「全寮制の男子校に通いたかったけど家族に反対されて、仕方なく家から通える男子校を選んだ意味が無くなっちゃうじゃないか!!」


 僕の人生を賭けた強い想い!! それを口にした途端…教室内が、静まり返った。

 だからどうした、知るもんか!!


 少子化のせいか、全寮制の男子校って、もう本当に絶滅危惧種かって言っていいほど数が少なくなってきてる。

 僅かに残った全寮制男子校も、全寮制にするからにはそれなりの理由があったりなんたりで…僕にはっ、僕には通えなかったんだ!!

 普通の男子校ですら、少子化のあおりで共学校にシフトチェンジしちゃう時代だよ!? 社会が…社会が、僕の夢や希望を奪っていくだなんて!!


 悔しいやら悲しいやらで膝をつく。絶望する僕の頭上から、呆れた声が降ってきた。


「…お前は馬鹿か?」

「憐れなやつ…」


 人が絶望の果てに悲観してるっていうのに、生徒会長も栄くんも、何コイツかわいそぉ~って感じに言わないでよ!!

 ぼ、僕がどれだけこの学校に夢を託していたことか!! 2人には分からないんだ!!

 そんな2人とは違い、悲しむ僕を慰めてくれる八雲くん。さすがだね!!


「大丈夫だよ。現実ではそんな学校存在しないけど、未来くんの大好きな物語の世界ではちゃんと存在しているからね」

「って、慰めになってない!!」


 八雲くんも、僕の望んでる言葉はくれないんだね。悲しいよぅ~

 ここに入るのだって、僕結構苦労したんだよ~? それなのに…ここには、僕の楽園は存在しなかったなんて!!


 未だ立ち直れない僕を尻目に、生徒会長は呆れたように話を続けた。


「大体さぁ~ここに通ってる奴等って、偏差値的な問題で滑り止めにしてたかとかじゃね?」

「俺は、素行が悪いからって親に無理やり決められた感じですけどね」

「え!? 栄くんのどこが素行が悪いの!?」


 むしろ逆でしょ!? 不良な見た目って言ったって、別に髪型が奇抜、格好が奇抜ってわけじゃないし、目付きが悪いってぐらいじゃん!?

 それだって、街を歩けばイケメンだって言われて振り返られちゃうぐらいの、意志の強い瞳に切れ長の目ってだけだし。


 聞けば、友人に引っ張って連れまわされてた遊びってのが悪い遊びだったらしく、それで何度か補導されたらしい。

 多分、身長が高いから目立ったのと、逃げるのが面倒で逃げなかったのが原因だと思うんだよねぇ。

 栄くん、心底走るの嫌いだもんね。運動音痴でもないのにさ…

 てか、それが分かってて友人達も栄くんを盾にするつもりで連れまわしてたんじゃ!? ひ、酷いよ。そんなの友達じゃない!!


「さ、栄くん…辛い目に遭ってきたんだね…」

「なんで泣きそうになってんだお前? てか、お前に同情されてる?」


 なんか心外だ…って、こっちこそ心外だよ!! 僕の同情に、何か不満でも!?

 う゛~と威嚇していたら、八雲くんも会話に加わった。


「俺の場合はちょっと事情が違うかな。姉や妹に、男子校なら安全だからって薦められた感じだったし」

「!? 共学校だと、八雲くんの身に何が起こるの!?」


 安全を優先されて薦められるって、一体どういう状況!?

 聞くところによると、イケメンが故の悩みを抱えて来たようで…早い話、女の子達に奪い合われてきたらしい。

 女の嫉妬とは恐ろしいもので、八雲くんがいじめとか嫌いな人だって分かってるから公然とは卑劣ないじめはやらなかったようだが、総スカンしたりして、はぶってはぶられてを繰り返しながら八雲くんの隣を奪い合っていたようだ。

 その都度、皆で仲良くしようねって言ってたらしいんだけど、結局女同士のドロドロした嫉妬は凄まじく、このままではやばいと思った学校側が、幾度となく学校集会を開いちゃうほど、八雲くんはオモテになっていたのだという…

 リア充爆発しろ!!


 これで相手が男の子だったら美味しい状況なんだけど…生粋の腐男子は、ノーマルには厳しいのだ。

 だというのに…


「あぁ…俺もお前ほどじゃねぇけど、毎日一緒に下校しようって誘われたりしてたわ。月替わりで告白されたり、バレンタインには毎年家にまで押しかけられたりしたなぁ…」

「勉強で分からないところあると、休み時間毎にやってきて聞かれたな。ダチとだべりたいのにそれだから、ホント迷惑だった。まぁ、さくさくっと要領だけ教えて放置してたけど。放課後の勉強会に誘われたりして、ホント面倒くさかった。まぁ、バスケ部だったから行かなかったけど、いっつも部活が終わるまできゃーきゃー言いながら待ってたわ…」

「このっ、モテ男共!!」


 僕はどうせ、そんなエピソード一つもありませんよ!

 会長みたいに、バレンタインに本命チョコ貰わなかったし…友チョコはいっぱい貰ったけど。

 栄くんみたいに、運動も勉強も出来なかったし…ドジっ子可愛いと愛でられていたけど。

 でも、そんなエピソードを聞かされて、僕と同じことを思ったクラスメイトは数知れず。皆、モテ男のモテエピソードに遠い目をしていた。


「まぁでも、お前だって愛玩動物よろしく可愛がられてたんだろ?」

「頭ん中が腐ってさえなければ、完全にマスコットだもんな」

「そうだね。未来くんは愛嬌があるもんね」

「そんな慰めいらないよ!!」


 イケメンからの同情なんていらないよ! 第一、僕は別にモテたいわけじゃない。

 自分の人生をバラ色にしようだなんて、思ってないから。

 だけどさ、こうも不条理な現実を突き付けられちゃうと…なんか、人として落ち込んじゃうよね。


 でもでも、僕にはBLがある! 男同士のバラ色に期待してるから、別にいいんだ!!

 それさえ拝めれば、僕の腐男子人生に一点の悔いなしなんだからね!!


「つうかよぉ~。お前、何でそんなに男同士の乳繰り合いが見てぇんだ? 見て何が楽しいんだ?」


 キモイだけだろうが…と生徒会長。

 なっ、何を言っているのかね!? この世に、これほどまでにあらゆる苦難を乗り越えて結ばれる素晴らしい愛はないじゃないか!! って、別にそれ以外の恋愛が素晴らしくないって言ってるわけじゃないけど。

 でも、禁断中の禁断でしょ!?

 世間は決して認めてくれない…それが分かっていながら惹かれ合う2人…秘めたる関係は遂には綻びを見せるが、それをも凌駕する愛…それこそが、BLの醍醐味!!


「分からん…全然分からん…」

「つか、別れる時は別れるんじゃね? 男同士だろうがなんだろうが…」

「そんな一生ものの恋なんて、異性間でも稀だよねぇ」

「現実は黙らっしゃい!!」


 皆して、僕の夢を壊さないで!!

 生徒会長は、もうお前にはついていけねぇと呆れ返り、現実は妄想とは違うぞと栄くんも呆れ返り、もうちょっと現実を勉強してみようかと八雲くんには諭され……ぼっ、僕のBLライフを奪わないでぇ~!!


 でもねっ、例え皆が何と言おうと、僕は決して諦めないんだから。この世に男達がいる限り、BLが尽きることはない。

 そして、必ずこの学園でそれは起こるのだ!!

 僕は信じている。だから皆、僕の萌えのために!!


「いざ行かん!! 新世界へ!!」


 スビシッと太陽を指さす僕。

 それを見て生徒会長と栄くんは…


「お前のために、なんで俺等が人生を棒に振らなきゃなんねぇんだよ!!」

「新世界は知らんが、新人類なら今俺の目の前にいるぜ?」


 それってやっぱり、未来的な僕の思考への賞賛なんですよね!?

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