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爆走腐男子くん  作者: らんたお
16/23

最大イベントカウントダウン!2

 僕はそわそわしていた。放課後になって、更にそわそわした!!


「未来くん、帰ろう」


 八雲くんが王子様スマイルで誘ってくれるが、そういうわけにはいかない僕。だってこれから、各学校の代表達が集まるんだもの!! 行かなくちゃいけないんだもの!!

 え~っとねぇ~う~んとねぇ~とまごまごしてたら、栄くんが見透かしたように言った。


「せいぜい、厚木先輩には迷惑かけんなよ」

「な、何のことやら分からずじまい!!」

「未来くん? 日本語おかしいよ?」


 おかしいのはいつものことだろと栄くんは呆れ、先輩以上に俺に迷惑かけんなと言って早々に部活へ行ってしまった。って、何で僕が栄くんに迷惑かけることが前提になってんの!?

 栄くんの中で、僕って一体どういう位置付けになっているのやら。なんか、友人って枠じゃない気がしてきた!! まさか本気でペット枠とかなんじゃ……

 なんか納得いかないと思うけども、今さそんなことにかまけている暇はなかった。八雲くんには、先に帰っていいよ~と引き止める間も与えずさよならして、生徒会室へと急いだ。






 そこには生徒会長はおらず、数名の役員達が慌ただしく動き回っているだけだった。それぞれの学校の代表をお招きするという場所には不向きだし、やはり第一会議室かなとあたりを付ける。あそこは、ほとんど職員会議とか保護者会とかで使われてるだけだから、最も適切ではあるんだよねぇ~

 抜き足差し足忍び足、で第一会議室へと向かった。

 もしもの時のためにと持ち歩いているボイスレコーダーを、交流会に参加できなかった時用にどこかに忍ばせられるように準備し、決定的瞬間を納めるためにとデジカメも準備万端にしておく。

 スマホは、それらが使えなくなった際の、不測の事態に備えての予備だ。


 僕の腐男子パワーを全開にして第一会議室の中が見える窓際へと忍んでいたのだが、どうせなら、彼等とのファーストアタックをこの目で見たい……ってことで!! 正門を死角無く見渡せる位置で隠れていると……それらしい一行の姿が現れた!!

 とてつもないオーラを身にまとう美形な方々の登場に、腐男子魂がバーニング!!

 パシャパシャと、その熱意のままに撮影していたら。


「何やってんだ、おめぇ」

「ひゃ~~!!」


 突然後ろから声が!! ビックリして、飛び上がるように後ろを振り向いたら……な、なんと!! 隣のクラスの不良くん、京藤冬至!!

 今日も不機嫌そうな顔をしている。それにしても、なんでこんなところで寝転がってんの!?

 藪を挟んでいたとはいえ、まったく気配に気付かなかった。


 彼は僕の手元を見て、顔をしかめる。その目はまるで、不審者を見るような目だった。


「盗撮は違法だぞ」

「盗撮じゃないよ!!」


 これは腐男子の僕に与えられた使命だからと言うと、不可解そうに眉間に皺を寄せる。よく分からねぇが要は一緒だろと言いたげだ。

 でもどうでもよくなったのか、大きなあくびをして立ち上がると、鞄を持ってそのまま正門の方へと……そこで僕は、何故か彼を引き留めようと制服にしがみ付いてしまった。

 本当に、何故止めたんだろうね!? その拍子に、僕の体は藪から出てしまい……その光景をばっちり生徒会長に見つかってしまった。

 何しがみ付いてんだな不良くんの面倒くさそうな顔に、何やってんだな生徒会長の顔。次第に生徒会長の表情が険しくなる。


「未来……お前ぇ~」


 駄目だっつっただろーがと、お怒りモード。それもそのはず、どう考えてもそうしか見えないもんね。

 不良くんは、いい加減放せよな感じであるが、生徒会長が怖いので放したくても放せない僕。尚のことしがみ付く形になって、不良くんは僕の首根っこ掴んで立ち上がらせた。

 制服から一時的に離れた僕だったけども、生徒会長が近付いてきたことで再びしがみ付く結果に!!


「お前、こんなところで何やってんだ? えぇ?」

「ななななな、何も!!」

「嘘付くなこら!!」


 俺達南校の生き恥を晒す気かぁ~、と凄まれる。生き恥とは何ぞや!?


「生き恥じゃないよ!! 素晴らしい趣味だよ!!」

「俺達にとっちゃ違うんだよ!!」


 いいからもう帰れな生徒会長に、嫌ですな僕。そんなやり取りに挟まれる不良くん、と謎な光景がしばらく続いていたら……


「あ、未来くん。ここにいたんだね」


 探したよ、と笑顔の八雲くんが現れた。あれれ? 八雲くん、帰ってなかったの?

 どうやら八雲くん、帰り際にお姉さんに僕を家に連れて来てと言われたらしいんだけど、僕がどっか行っちゃって、お姉さんに僕は用事があるみたいだと伝えたらしい。

 そうしたらお姉さん、用事を済ませた後でいいから連れて来てと言ったそうで、取りあえず僕に電話してから決めようと思い電話したけど中々出ないものだから、校内を探してくれていたんだって。見れば、確かに着信が!!


 というか今更だけど、もはやこれどういう状況なの!?

 交流会のためにやって来た各学校の代表の人達も、どうしたんですかな顔をしている。

 ていうか……え!? 代表の中に、見覚えのある顔が……目が合うと、にやりとニヒルに笑うその仕草!!

 段々と、僕の血の気が引いていく……


「あ……ああああ、悪魔が……悪魔がイルゥ~~~~!!」


 僕の天敵にして、史上最悪な悪魔がぁ~~~!! 僕が大事にしていた物はなんでも壊すし、隠すし、嫌味を言っては僕を苔にする笑顔の悪魔がぁ~~~!!

 あの制服からすると、北高の生徒ってことぉ!? あ、悪夢だ……


 ふっと力が抜けて、抜け殻の様になる僕。震える手で指さした手からも力が抜けて、心が完全燃焼する。交流会は最高に楽しみなイベントだと信じていたのに、まさかこんな事態になるとは。

 僕の楽しみを尽く奪っていって、僕を孤立無援にした幼少期を忘れてはいない!! その上人当たりはいいから、僕以外には本性を見破られないという周到さ。何故か昔から僕をいじめる幼馴染、というか従兄弟・鴻島康大!!

 僕から大事なものを人も物もすべて奪うので、僕は彼のことを悪魔と呼んでいる。


 絶望である。これは絶望の始まりである。どうしたらいいんだぁ~


 打ちひしがれる僕を不審がる皆。生徒会長も僕と僕の視線の先の従兄弟を見比べて不思議そうにし、八雲くんも心配げだ。

 そんな中、康大と同じ北高の制服を着た代表がやっぱりなと言いたげに康大を見ていた。


「お前、やっぱり只者じゃなかったのか」

「嫌だなぁ。俺は松風先輩ほどではありませんよ? 生徒会書記・木曽野先輩?」


 に~っこりと、それこそ人のいい笑顔で康大は言ったわけだが、何故か木曽野先輩と言われた人は顔面蒼白にしていた。

 何? 松風先輩って人は康大よりも悪いの!? ていうかこの先輩、そもそも来た時から顔色悪かった気がする。 若干歩くのきつそうだったもんね。体調悪いのかな?


 ともかく僕は、康大に立ち向かえる気がしないので逃げようと思う!!

 そうと決まれば、惜しいけども善は急げである!! 敬礼しつつ、生徒会長に訴えた。


「生徒会長!! 僕帰ります!! 速攻で! 最速で! 光速で帰ります!!」

「あ? そうか? まぁいいや、帰れ」


 何かよく分からねぇがじゃあな、と生徒会長。迎えに来てくれたという八雲くんの傍まで行って、さぁ帰ろうと促すのだが。


「未来、久しぶりに会うのに、そんな逃げるように帰らなくてもいいじゃないか?」


 親戚の集まりにも顔を出さないから5年ぶりぐらいだろ、と康大。会いたくないのだから、顔を出さないのは当たり前だよ!!

 僕には他にも従兄弟やはとこがいるんだけど、康大が標的にするのは何故か僕だけで、その上僕一人の時だけにチクチクと言って来るので始末に負えない。

 だから誰も、康大がそんな意地悪な奴だって信じてくれないんだ!!


 小学生の時、たまたま友達と遊んでたところで康大と遭遇でもしようものなら、あいつホントはこういうやつだよって言っても、皆僕のことを信じてくれなかったりする。

 ファーストコンタクトの後は、へぇそうなんだ意外だなという感じなんだけど、気付けばいつの間にかその友達が康大派になっていたってことがしばしば。

 知らないところで友達と仲良くなっているようで、僕の話がやっかみか妬みにしか聞こえなくなっちゃうんだよね。だからいつも、いい従兄弟じゃないかと言われる度に苦笑いするしかない。

 違うのに!! ホントは違うのに!!


 康大のせいで、同じ幼稚園に通っていた時あんまり友達がいなかった。その頃はまだ、康大にこんなこと言われたされたんだと皆に言っていたから、むしろ僕の方が嘘つきのいじわるな奴だって思われていたしね。

 おかげで僕、一人ぼっちだったんだ。思い出したら泣けてきた……

 なんであんな思いしてたんだ僕! 康大のばーかばーかばぁ~か!!


 てことで、康大は僕の敵!! 何かある度に僕にダメージを与えずにはいられない悪魔なのだ!!

 だから帰るしかないっと思うわけだけど、その前に東高の代表が気になる!! ここでじっくり見ておかなくては、腐男子の沽券に関わるではないか!!

 ということで……


 気だるげな表情で今にも帰りたそうな雰囲気を纏いつつも、威厳ある姿で事の成り行きを見守っていた東高の代表。どことなくうちの生徒会長に似た雰囲気を持っているが、明らかにもっと高貴なオーラを纏っている。

 正に王様って感じの威風堂々たるお姿っていうかなんというか……うむ、男子校に王様ってBLには必須だよね!! と一人納得して頷いていたら、東高の代表は不思議そうな顔をし、生徒会長は、口に出さなかっただけマシ、と僕の心を見透かしつつほっとしていた。

 そんな中……


「で、俺はもう帰ってもいいよな?」


 と、不良くん。ごめんね、京藤冬至くん! 引き止めちゃってごめんね!!

 なんかごめんねと謝った。

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