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爆走腐男子くん  作者: らんたお
12/23

オイシイ話大歓迎!

 日曜日の予定はクラスメイトも知るところだったから、聞かれるままに八雲くんの武勇伝を聞かせてあげた。

 八雲くんは何をやらせても上手いんだよ、ゲームやったことないのに強かったんだよ、とクラス中に響き渡る感じに話して聞かせたら……その日のお昼までに、学校中に広まっていた。

 早!!


 生徒会長達のために作らされた御重を持って生徒会室まで行く道すがら、他クラスや先輩方に、ゲーム強ぇのかお前、今度対戦しようぜ、等々と声をかけられる八雲くん。その度に、とんでもないです、ありがとうございます、と律儀に相手する八雲くんに、この事態って僕のせいだよねごめんねと心の中で謝罪する。

 ていうか、皆八雲くんに関心持ち過ぎ!! え、八雲くん実は、この学園のアイドルなの!?

 この分だと、一週間以内に南校以外にも広まってる気がする。中には、いやでもお前と外出なんて殺傷事件に発展しかねないんだったっけ、と自分で持ちかけておきながら遠慮する人もいた。

 ちょ、そんなことまで知ってるの!? 皆、八雲くんのこと知りつくし過ぎ!!

 さすがアイドルだね…と八雲くんを見ながら感心してたら、一体何の話だい、と不思議がられた。

 いいから早く行こうぜ腹減った、と栄くんに催促され、歩みが止まっていたことに気付く。なんてことだ!! 早く行かないと、生徒会長になんて言われるか!!

 足早に、生徒会室へと向かった。





「遅ぇよ」


 開口一番がそれだった。 何言ってんの、そんなに遅れてないでしょ!?

 横暴な生徒会長様は、早くしろよなと欠伸をする。って、そんな退屈させるほど待たせてないけど!?

 因みにだけどね。この御重、四段もある大きな御重だから、中身入ってると結構重いんだよ!?

 今は八雲くんの紳士的サポートのおかげで手ぶらだけど、朝は死ぬかと思ったから!

 しかも、成長期の高校生男子をこれだけで満足させられるか分からなかったから、更に二段御重も持って来たからね。地獄だったよ!!

 そんな苦労もいざ知らず、何を偉そうにぃ~!! お吸い物だって持って来てあげたんだからチクショウ!!


 箸と取り皿とお吸い物を入れる容器を配り、御重を広げる。眠そうな顔をしていた生徒会長も、それを見て感心してくれた。


「うわ、美味そう。マジで女子力半端ねぇ~」


 お前が女だったら考えてやらねぇこともなかったぞ、と生徒会長。願い下げですけど何か!?

 そんな言葉、まともなデートの出来る感性を養ってから言って下さいね。まぁ、それでも願い下げだけど。

 俺様生徒会長って、二次元だけで充分だったと気付いたよ昨日!! 僕を女性達から守ってくれた理由だけで充分だったのにぃ~!!

 その後失望した!!


 プリプリ怒りながらも、いただきまぁ~すとお手手合わせて言っていたら、生徒会長がぼそりと言った。


「昨日も思ったけど、お前ちゃんと躾けられてるんだなぁ~」


 いただきますをちゃんと言えるのか偉いでちゅねぇ~と、バカにする。

 何を言う!? 八雲くんだって風紀委員長だって、ちゃんとやってるじゃないか!? てか、子供扱いするなぁ~!!

 そんなことばっかり言ってるとあげないよと言ったら、へ~へ~すみませんでした、と言いつつ勝手に食べ始めた。バ会長、いつか覚えてやがれ!!

 そんな中、真っ先にお吸い物を飲んでいた風紀委員長が、これは市販のものか、と聞いてくる。ちゃんと出汁から取って作りましたよと返すと、皆驚いていた。


「出汁から? 鰹節と昆布からってことか?」

「はい、そうですけど?」


 風紀委員長の問いかけに頷くと、皆もお吸い物を飲み始めた。そして口々に、美味い、と言ってくれる。

 八雲くんは、本当に料理上手だねと褒めてくれて、栄くんは本格的過ぎだろ、と感想を述べ、生徒会長はよし嫁に来る準備をしろ、と言ってきた。いや、だから、願い下げですってば!


「俺は金持ちで料理上手な家庭的な女と結婚したいんだよなぁ。でも、金持ちで家庭的って中々居ないよなぁ~。というわけで、愛人の座は空けといてやるぞ未来」

「僕は家政婦か!!」


 ふざけるなぁ~と怒っていたら、あぁそれもいいな、と言って来る生徒会長。

 どこまで本気か分からないが、男の僕を嫁やら愛人やら言うのであれば、本気で男の子と付き合えばいいじゃん!!

 お金持ちで家庭的な男の子知ってるよ、紹介するからっと言ったんだけど、男は無理、と真顔で返された。

 すっごく可愛い子なのにぃ~とふて腐れてたら、可愛かろうが男だろうが、とバッサリ切り捨てられる。女の子みたいに可愛い子なのにぃ~と更に畳みかけたら、ほんの少しだけ興味が湧いたらしい。


「女みたいって、お前みたいな感じか?」

「断然美人!!」


 へぇ~っと、完全に興味が湧いたのか、画像ねぇのと聞いて来る。ウキウキしながら、スマホを取り出した。

 これで生徒会長があーくんと付き合ったら…と思うと、とてつもなく楽しみである。

 ふっふっふぅ~と上機嫌で画像を選び、印籠の如くそれを生徒会長の前に掲げる!! 控え居ろう~この方をどなたの心得るぅ~!!

 そんな気持ちで生徒会長を見守っていたら……


「…これ、マジに男か?」


 嘘付くな、と呆れられた。いやっ、本気で男の子だし!! あーくんは美人なんだよぉ~と主張するも、いまいち信じていないご様子。

 生徒会長の両隣の栄くんにも風紀委員長にも、僕のお隣の八雲くんにも見せたけど、信じられない、といった反応だった。だったらその証拠に、ムービーだ!!


「これでどうだ!!」


 名前を呼ばれて振り返ったあーくんが、可憐に微笑んで僕の頭を撫でてくれるムービーである。と言っても、撮影者が僕なので、あーくんのドアップが映っているだけ…

 それでも、僕とあーくんのやり取りが映し出されている。

 じぃーっと見つめる風紀委員長、生徒会長、栄くん。八雲くんには、後で見せてあげるね!


 どうだ恐れ入ったか、と自慢げな僕に、生徒会長はぼそっと言った。


「男装の麗人…とか?」

「じゃないから!」


 ちゃんと男の子だからぁ~!! まぁ確かに、中学生ということもあって声変わり前だから分かりづらいかもだけど。

 だけど生徒会長、だとしても俺の趣味じゃねぇや、と興味を無くした。何だとう!?


「あーくん美人でしょう!?」

「俺の好みは、女ということが最低条件の豊満な胸にスタイル抜群の美味そうな女」


 可愛いは論外、男は拒否、と…

 確かにあーくんは、可愛い美人さんだけども…お金持ちの一人息子だよ!?


「一人息子なら、尚更男とは駄目だろ」


 跡継ぎどうすんだ、な栄くんの呆れ顔に、僕はそれでもねと食い下がる。本人の意思が固いんだから諦めろ、な風紀委員長。

 そうか、生徒会長には風紀委員長がいた!! そうでしたそうでした、二人の仲を裂こうだなんて、何を考えていたのだろう僕!

 その瞬間、空気がピリッと凍った。


「未来…いい加減にしろよ?」

「……ふぁぃ…」


 生徒会長が、ブチギレそう!! もう、この話題は止めとこう…



 黙々とご飯を食べる僕達だったが、栄くんの、この卵焼き美味ぇな、の一言で空気が変わる。

 おぉ、それは!! 僕の力作、卵焼き!! さすが栄くん、お目が高いね!

 しかも、だし巻き卵で冷めても美味いのを作れるって凄ぇよ、と褒めちぎってくれている。いやぁそれほどでもぉ~と照れながら、だったらと、梅肉を少し加えたバージョンの卵焼きも勧めてみることに。

 ほんの少しばかりシソの葉が入っているから他の卵焼きと違うのは分かるだろうけど、梅肉が入っているってのは客観的には分からないんだよねぇ。

 ということで!!


「栄くん、これも美味しいから食べてみて!」

「あぁ、そう…か……」


 と、卵焼きを見つめたまま固まる栄くん。何故か、他の皆も固まっている。

 Why!?

 じぃーっと、お箸の先に挟まったままの卵焼きを見つめる栄くんだったが、しばらくして呪縛が解けたのか、取り皿を卵焼きの高さまで差し出す。

 そこでやっと僕も、卵焼きを手放せた…って、もう、早くしてよね! 手が攣っちゃうじゃないと思っていると、生徒会長がボソッと。


「あ~ん、って…」


 何処のバカップルだ、と……なぬ!? バカップルがいるのか!? いやしかし何処に!?

 ワクワクして辺りを見回したけど、発見できずに落胆する。ここには僕等だけしかいないじゃないかぁと、楽しい気持ちが萎んだ。


「お前のことだろが」


 と生徒会長の呆れ声。僕がいつ、バカップルになったと言うのだ!?

 馬鹿にするでないとプリプリすると、馬鹿にするってーか呆れただけだ、と。

 口元までおかずを持って行ってたらそう見えるな、と風紀委員長まで。

 別にあ~んじゃないし! 梅肉の香りを嗅がせただけだし!

 一見すると梅肉が入っているようには見えない色だからね。嗅いで食べて、初めて分かるのさ。


「だったら先にそう言え」


 栄くんまで呆れ顔だ。何故だ!?

 八雲くんに、僕は間違ってないよねと聞いてみたけど、うぅ~ん、と微妙な返事を返された。何故だ!?


「お前、自分の言った言葉を思い出してみろ。梅肉入りのだし巻き卵だって言ったか?」


 言ってねぇだろ、と生徒会長。……言われてみれば、言っていなかったような気がする?

 おやおやぁ~と思っていると、溜め息を吐きつつ生徒会長が重大発表。


「そういや、微妙な時期だが転校生が来るみたいだな」


 なぬぅ!? 今、なんて言った!? ててててっ、転校生って言った!? この時期に!?


 何年生!? どのクラス!? どんな子!? と生徒会長に詰め寄るのを八雲くんに引き戻される。

 ご飯中に立っちゃ駄目だよ、と諭された。いや、それどころではないのだよ!! 八雲くん、これはとっても大事な事なんだよ!?


「ご飯食べながらでも聞けるからね。取りあえず座って聞こうね」


 うんうんっと全力で頷く。何でもいいから、早く聞きたい!

 すぐさま生徒会長の方に向き直り、さっさと情報寄越せっと念を送った。そんな僕に呆れつつ、いつもの調子で事もなげに言う生徒会長。


「一年ってことしか知らねぇな」


 後は学級担任に聞いてみろ、と興味なさげだ。

 ちょっと待て、転校生くんのお迎えは!? やっぱ副会長の役目なんだよね!? と捲し立てるも、んなもん本人が直接職員室まで来るだろ、後は担任の仕事だ、と取り合ってくれない。

 もぉ~~う!!


「生徒会の人間が転校生くんを迎えに行かないでどうするの!?」


 BL学園もの最大のイベントでしょう!?

 これを逃してはBLが始まらないよと奮起していたら、元から始まらねぇけどな、つか直接本人に頼んでみたら、と何故か僕の頭上に視線を送る生徒会長。

 何故?


 一体何があるのかと、振り向くよりも先に…僕の真横から手が伸びて来た。

 What!?

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