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爆走腐男子くん  作者: らんたお
10/23

日曜は決戦日!3

 意地悪モードな栄くんに告げ口されたせいで、お昼を食べた後撮影会が行われた。

 もう抵抗する気力もなくて、しずしずと撮影されていくのをただただ耐えるしかなく…って、何、全員分のツーショット撮ってるの!? しかも、色々なカットで撮られてるから、結構な枚数に達してるし!!

 八雲くんも、一枚とか言ってたけど、何枚撮った!? もう、数えきれないほどの生き恥が記録されたよ!!

 本当に、可愛いもの好きの拗らせ方が、家族揃って半端ないよね。生徒会長は心底楽しそうだったし、栄くんも、ここぞとばかりに楽しんでた!

 唯一、風紀委員長だけが普段通りだったけどね。さすがだ!!


 途中、心がやつれてしまいそうだったけど、BLへの愛の力で踏ん張った。

 これはそう、僕であるということを抜きにしたら、とっても美味しい場面だったのだから。だって、イケメン達が男の子を構い倒していたわけだからね!

 でも…なんで僕なの!! 他所でやってよ!! そしてそれを盗み見らせて!!


 最後に全員で記念撮影を撮ったところで、当初の目的であったゲームセンターへと足を向けた…って、何、生徒会長達までついて来てんの!?

 さも、当然のように行動を共にしているけどさ。まぁいい、一緒に来ると言うなら、何か奢ってもらおう!

 撮影会で散々遊ばれた恨みを抱きながら、栄くんについて行った。











 率直に感想を述べると、ゲームセンターという所は……うるさい。耳がおかしくなりそうなほど音に溢れていて、うるさい。

 今まで、通り過ぎ様にうるさいなぁとは思っていたけど、こんなにも爆音だったのか。

 色々な音が、互いに主張し過ぎてて何が何やら分からない。とはいえ、ユーフォ―キャッチャーなるものは、見ているだけでも楽しいもののようだ。

 何のマスコットだか分からないけど、可愛いわんちゃんやねこちゃんのぬいぐるみがゴロゴロ転がっている。思わず噛り付いて見てしまうほどに!!


「未来くん、それが欲しいの?」

「えっ、いや見てただけだよ?」

「とか言いつつ、欲しそうな顔してんぞお前」


 八雲くんに指摘され、栄くんに呆れられる。おまけに、よだれ垂れてんぞ、と栄くん。

 んなっ、そんなに欲しそうにしてないよ!!

 だけど、噛り付いて見てたら確かにそう見えるかも…? いや、さすがによだれは垂らしてないから!

 生徒会長も、よっしゃあ、じゃあ俺様の腕前を披露してやろうじゃねぇか、と嬉々として機械に向かい合っていたけども…これは、どう見ても僕にかこつけて楽しんでるだけだ。

 そんな僕等を遠巻きにチラチラ見て来る女性達。しかし彼等は、全然周りの女性達の視線に気付いていない様子。

 こんなに、こんなにも刺すような視線を送ってきているのに!!


 そもそも、ここに来るまでの間も、女性陣のみならず男性陣にまで視線を送られていたんだけどね……僕以外美形過ぎてごめんなさい!!

 特に、八雲くんへと向けられる女性の熱視線はとてつもなかったんだけど、そんな八雲くんが道中やたらと僕を構うので、視線は送られども声を掛けられることはなかった。

 若干、彼氏彼女に見られちゃったんじゃないかと危惧しちゃうほど、落胆と羨望の眼差しが凄かったわけで…って、きっと僕が女の子の格好をしているせいだろうな!

 美形達の間に女の子一人、にしか見えないもんね。

 恥だ……


 俺様の腕前を…とか言ってたくせに、生徒会長はぬいぐるみを取ることが出来なかった。

 悔しそうにもう一度トライするも無理で…選手交代とばかりに、栄くんがやってみることに。

 だけど、やっぱり無理だったようだ。


「アームが緩いな」


 こりゃ取れねぇわ、と諦めモードとなり、じゃあしょうがないねとなるところだったんだけど、八雲くんが、俺もやってみていいかなと言うので一同それを見守った。

 ウィーン…トスン。あっさりと、取ってしまわれた。


「なんつー、神懸かり的な取り方だよ」


 下の方に埋もれてるぬいぐるみの紐をアームに引っかけるとか、何処で習った、と生徒会長は驚き、お前、なんでもそつなくこなせるんだな、と栄くんも感心していた。

 一方風紀委員長は…って、この人に至ってはほぼノーリアクションなのであえて言う必要はないか。

 八雲くんは肩を竦めつつ、ただの偶然だよ、な感じで微笑むけど、経験のない僕でも分かる。

 下の方にあったぬいぐるみを掘り起こした上にそれを取っちゃうって、絶対凄いことに違いない!!

 凄技に圧倒されていたら、目の前にぬいぐるみが差し出される。


「はい、未来くん。欲しかったんでしょう?」


 あげるよ、と言われて笑顔で差し出されちゃったら、ありがとうと言って受け取る他ない。

 いや、欲しいっちゃあ欲しかったけども、驚きなことにコレ、リスだよ!! 可愛いから何でもいいけどさ、何故ピンポイントにコレ!?

 普段からリスリス言われてるから、もうリスでもいいかなぁ~なんて半ば諦め気味に思って来ているところではあるけど、わんちゃんやねこちゃんが主なぬいぐるみの中からコレを引き当てる八雲くんの凄さに驚くよ!!


 改めてリスのぬいぐるみを観察していたら、体を抱え上げた時、尻尾がてろーんと垂れ下がってしまうところがなんだか可愛い。

 えへへっと、ニコニコ顔で嬉しがっていたら、栄くんや生徒会長や風紀委員長が感心していた。


「お前とぬいぐるみって、本当に違和感ないよな」

「むしろもっと、フリフリの付いた格好してても違和感ねぇよ」

「女性や子供はぬいぐるみが好きなんだ。察しろ」


 って、失礼だよ!?

 栄くんはまだしも、生徒会長と風紀委員長はどうなの? 僕は女装趣味はないって言ってるでしょ!!

 そして、子供って何さ!! 歳は一歳しか変わらないでしょ!


 もういいや、別のやろうぜ、と生徒会長が言ったのを皮切りに、他の場所へと移動する一向。

 僕のこの消化不良な気持ちはどうするの! と思ったけど、ぐっと堪えるしかなかった。

 もう、ぬいぐるみに癒してもらう!!






 メダルゲームやら対戦ゲーム、音ゲーと言われるものまで一通りやってみたところ……八雲くんが、圧巻の独り勝ち。

 え…ゲームセンターは初めてなんだよね? ていうか、ゲーム自体初めてなんだよね?

 スマホゲームですらやらない八雲くんが、何故にこんなになんでも出来てしまうのか。もはや王子様と言うより、神か仙人級の達人に出会ってしまったかのような気持ちになる。

 皆からそんな視線を送られたからか、困惑顔で恐縮する八雲くん。

 勿論、シャッターチャンスは逃さなかったよ!!

 いやしかし、凄い。生徒会長や栄くんも、風紀委員長でさえ驚きの声を上げる。


「お前は本当に人間か? カリスマを通り越して、もはや神だぞ」

「俺、お前には一生勝てそうにねぇわ。降参するから、そろそろ許してくれ」

「本当にたまたまの偶然だよ。運が良かっただけだから」

「だとしたら、漣の強運は聖人君子と文武両道、動体視力と反射神経なんだな。そこに美形という要素も加わるということか…天は二物三物を与えたようだ」


 とかなんとか言っちゃってるけど、そういう風紀委員長だって全部持ってるじゃん!! 天から二物以上与えられちゃってる人が何を言う!

 僕なんて、腐男子ということ以外何も持ってないよ!! しかしまぁ、今の状況ってBL的にオイシイ場面じゃない!? まるで八雲くんが皆に攻められているかのようだよ!!

 八雲くんは優しくて控えめな性格だから、あんまり強い反論とかしないし、声を荒げることもないからね。

 王子様としての気品に溢れているというか、他の同級生達とはとにかく違うんだよ!

 だから、こういう時にからかわれちゃうんだろうね。

 まぁ、多少嫌味も入ってるんだろうけどさ…それはさすがに、かわいそうだ。

 王子様を虐めるなと割って入ろうとしたところに、数人の女性達が近付いて来る。八雲くんを護り隊隊長の出番は、訪れなかった…


「あの~、もし良かったら、私達と遊びません?」

「ちょっと行ったところに、ボーリングとかカラオケが出来るところがあるから、そこに行かない?」

「絶対楽しいから、行きましょう?」


 わぁ~お、この子達、ぐいぐい来るねぇ~

 言いながら、生徒会長達の腕に絡みついていく彼女達…って、八雲くんにまで!!

 そんな彼女達のことを少し離れたところから控えめに見て困った顔をしている女性も合わせると、どうやら彼女達は4人で行動を共にしていたようだ。

 4人のイケメンと、4人の可愛い女性達…うん、そりゃあ人数的にも遊ぶにはぴったりだもんね。

 いやしかし、僕はどうすれば!? 彼女達の視界に入っているのは彼等だけなので、完全に僕空気だよね!?

 まぁ、仕方ないか。

 イケメンを前にして逆ナンしないとか有り得ない、な感じで声をかけるほど度量のある子達みたいだし、僕の存在アウトオブ眼中なのはしょうがないだろう。

 腐男子としてはあれだけど、この状況をイケメン達がどうするのか人間観察をするというのも楽しいかもしれない。

 後で彼女達を可愛い男の子に変換すればいいだけなんだしと、遠巻きに見ていたわけだけど、生徒会長の予想だにしない言動で僕は巻き込まれることに…


「わりぃな。俺等今デート中なんだわ。な、未来?」


 とか言ってグイッと引き寄せられ、今俺等が口説き中の子、と僕を紹介した。

 What!? 何言っちゃってんの!?

 一体何なのと困惑している間にも、僕の頭を抱えるように横抱きにしたまま、生徒会長の口は止まらない。


「可愛いだろ? だから俺等口説きまくってんだけど、ぜっんぜん落ちねぇでやんの。逆に燃えるよなぁ~?」


 と、栄くん達に同意を求めるような視線を送るが、答えを聞く気はないのか、すぐにまた彼女達に向かって話し始めた。

 皆でこの子を奪い合ってる最中だから、邪魔しないでくれる、と彼女達を突き放すように言って、どっか他行こうぜ、と僕を抱え込んだまま歩き出す。

 ななな、何が起こっているぅ!? だって生徒会長、僕等とばったり会った時、女を紹介しろ的な事言ってなかった!? 正にその状況になっていたのに、なんでこうなっているの?

 僕一人混乱している中、しばらく歩いたところでやっと僕は開放された。


「俺ぁ~もっと年上がいいんだよなぁ。二十歳か二十歳後半ぐらいの。あの子等は範疇外だわ」


 俺等と同い年ぐらいで女を武器にしても、まだまだお子様だっつーの、と持論を展開する生徒会長。

 いや、十代でも大人な雰囲気の子っているよ? 八雲くんの妹さんとかも、もうちょっとすればそんな感じだもん。

 ていうか、あれは本当に何だったの。

 むしろ生徒会長なら、喜んで彼女達と遊びそうな感じなのに…まさか本当に、もっと年上の女性じゃなかったから、ってことなの?

 不可解過ぎる行動に、僕だけじゃなく、栄くん達も不思議そうだ。

 ただ、元々女性と遊ぶ気のなかった彼等だから、それはそれで良かったみたいだけど。

 でも、何故に、という疑問だけが残る。それを察した生徒会長が、断った理由を話してくれた。


「あの子等と行動してたら、未来の事がバレるだろ。あの子達、きっとすぐに拡散させるぜ? んなことになったら取り返しがつかねぇからな」


 女装趣味を公言してるならいいが、違うんだったら止めた方がいいだろ、と生徒会長。

 まさか、僕のために!?


「生徒会長…」


 感動して思わず名前を呼んだら、照れ隠しなのか本気なのか、頭を掻きながら、いや、それは今思いついた、と言った。

 ちょっ、僕の感動を返せ!! いやでも、今思いついたんだとしても感動もんだけどね!!

 だって、女いたら遊びづらいだろうが、とかなんとか言っちゃってますけど、無視して前者の理由だけを脳内に記憶しててあげる!

 八雲くんも前者の意見に納得したように、確かにまずいですよね、と同意する。後者は照れ隠しってことになってる、八雲くんの中では。

 なんでもいいが、おかげで肉食女子を撒けた、とか言ってた栄くんの呟きは無視するとして、風紀委員長の疑問に一同固まる。


「で? 俺達は未来を取り合っているのか?」


 って、今更その部分蒸し返すの!? 

 違うに決まってますと反論した僕に、お前時々抜けたこと言うよな、と呆れ顔の生徒会長。

 嫌そうな顔で、何で俺がこんなリスを口説くんですか、と栄くん。

 確かに可愛いですけど、未来くんはお友達ですよ、と困り顔の八雲くん。

 だけど、それを聞いて何を思いついちゃったのか、悪戯心全開の笑顔で生徒会長は提案した。


「んじゃあ、ホントに口説くか?」


 未来を好きな女に見立てて、偽デートするってのはどうだ、ととんでもないことを言い出す始末。

 ちょっ、それただ、自分が楽しみたいだけでしょ!? 皆のデートが見てみたいとか、そんな理由でしょ!? 僕をダシに、遊びたいだけじゃん!!

 一同の呆れ顔やら困惑顔の中に不満顔が加わると、生徒会長は僕に手招きして、近付いたところで耳打ちしてきた。


「お前にとってもこれは美味しいと思うぜ? 何せ、イケメンが男の子とデートするって図なんだからな?」


 女装ってことを除けばそうだろが、と……その瞬間、僕の心は決まった!!


「よし皆! 行くよ!!」


 ボーイズラブの世界へ!! 満面の笑顔で、期待に満ちた心で、いざ行かんと彼等を先導する。

 げんなりした栄くんや、苦笑まじりの八雲くん、いつもと変わらぬ冷静な風紀委員長に、悪戯が成功して楽しそうな生徒会長。

 僕は今、さいっこうに心躍っている!!


「何耳打ちされたのか一目瞭然だな。お前、マジでその脳みそどうにかしろよ。迷惑だわ」

「未来くんって、本当に好きなんだねぇ」

「自分が楽しむためなら、幼気な後輩を餌で釣って遊ぶのも構わないとは…お前は悪魔か」

「何言ってんだ。お前の発案だろ? 大体さぁ、楽しけりゃ別にいいじゃん?」


 発案はお前だろうが、な風紀委員長の言葉に、そうだっけ、とはぐらかす生徒会長。

 アンタも大概にしろよ、と胡乱げな視線の栄くんに、皆さん落ち着いて、と苦笑する八雲くん。

 彼等がワーギャーやっている間、僕はドキドキワクワクしていた。

 皆が一体どんなデートを『男の子』とするのか、最高に楽しみではないか!?

 ウキウキしながら、デートに想いを馳せるのだった。

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