1ー1 始まり
俺はカメラが嫌いだ。
レンズ全般嫌いだが、その中でもとりわけカメラが嫌いだ。
その理由は特段人に話すほどのものでもないが、
ここではあえて語ることにしようと思う。
カメラってのはまず一瞬を切り取る。こんな見る価値もない、汚いものだらけのこの世界をわざわざ切り取ってそして永遠にしてしまうなんて悪趣味がすぎると思わないか?
しかも、だ。
この目で見るよりもよっぽど色んな情報を写してしまう。
普段は見て見ないふりできるようなことがしっかり飛び込んでくるのだ。
こんな恐ろしいことはないだろう。
そもそも思い出というのは一瞬のことだから美しいのだ。
それがだんだん記憶の中で美化されていってよりよい思い出になるのが、正しい姿である。
それを時間を固定して、美化どころか色褪せさせてしまうなんてそれはもう冒涜である!大罪である!大いなる悪逆だ!
とまあ、流石に言いすぎたがこれで俺がどどれだけカメラが嫌いかはわかってもらえたと思う。
え?さっきから誰に向かって喋ってるんだって?
「そりゃあ俺がどんなにカメラ嫌いかということをだな・・・」
「はいはい。お前のカメラ嫌いの話はもう耳にタコができるほど聞いたって」
こいつは俺の単なるクラスメイトである、佐藤拓海だ。こいつには虚言癖があってよく嘘をついたり、話を盛ったりする。
何百回も、というのはもちろん嘘である。嘘ったら嘘なのだ。
嘘のはずだ、まだ百回くらいのはずだ。
「そういやカメラっていえば聞いたか?写真部の新しい部長・・・」
「おい、俺の前で写真部の話なんかするな!」
「・・・がすっげえ可愛いらしいぜ。いいよな〜うちの部活なんて男しかいねぇからなぁ」
「どんなに可愛くても写真部なんてなぁ」
そうたわいもない話をしているとなんだか教室の入り口の方がなんだか騒がしい。
そちらになんとはなしに視線を向けると
「あなたが藤堂望くんだよね?写真部に興味はない?」