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派閥の誕生と信者の拡大 信者勧誘競争


「どうぞ」


 晴奈は自分の弁当から卵焼きと唐揚げとウィンナーを蓋にのせて哲平に渡す。

 昼休みになると、雨は止み空は明るくなっていた。


「お。いつもありがとう」


 哲平は晴奈から弁当の蓋を受け取ると、唐揚げを指で摘まんで口に放り込み「ハルハルの作るおかずは美味しい」と言っているのだが食べながらの為、モゴモゴとしか聞こえない。


 哲平が持っている弁当の蓋の上にある卵焼きを箸で取って口に入れる美咲。その行為にムッとする晴奈。

だが、晴奈の表情を気にも留めず、美咲は首を縦に振り

「うむ、美味しい。良いお嫁さんになれるな。私の嫁になるか?」

と言う。


 笑顔の美咲に対して、晴奈は

「私にはそんな趣味はありません!!」

と激怒する。

 唐揚げを飲み込んだ哲平が笑顔を晴奈に向ける。


「でも、弁当を作るせいで下着を履き忘れるんだよね」

「哲平君。その話は……」


 晴奈は顔を真っ赤にしながら、片手で哲平の口を押える……だがもう遅い。

美咲は身を乗り出してくる。


「その話は初耳だな。しかし、弁当と下着の履き忘れにどういう関係が?」

「ぶぽぽぽ」※訳:それはね


 口が塞がれてもしゃべろうとする哲平に首を絞めて発言を止めようとする晴奈。

机を叩いて降伏の意を示す哲平。しかし、晴奈は力を緩めない。

 美咲が晴奈の肩に手を掛ける。


「言わなければ、露出狂の変態ってコトになっちゃうから、ゲロっちまった方が良いと思うよ」

「そんなぁ」


 観念したように哲平に首から手を離す晴奈。それを確認した美咲も晴奈の肩から手を離す。

 解放された哲平は自身の首を擦って無事を確認する。


「変態と思われるよりはいいだろ?」


 晴奈は

「はぁ」

とため息を付き、観念して話し始める。

 

「私は下着の締め付けられるような感じが嫌で、家では下着を付けていないの。

外出する直前で身に着けるんだけど、弁当を学校に行く直前まで作っているせいで、極極稀に穿き忘れるのよ」


 晴奈の話に、美咲は珍しく真面目な顔をする。


「なるほど、只の変態でない事は理解したわ。

女の子の朝は時間がいくらあっても足らないから仕方ないね。

 ところで、哲平は雨がどうやって出来るか知ってる?」

「どうしたの唐突に?」

「ゲリラ豪雨がエロ神とするからには、メカニズムくらいは知っている必要があると思ってね」

「知らないよ。美咲さんは知ってるの?」

「知らないって……中学校の時に習っただろ。覚えてないのか?

まあいいわ。私が教えてあげる。

雨はね、

1、地上の水が蒸発して水蒸気になる。

2、水蒸気が上空で冷やされて氷になる。

3、小さい氷が集まって大きな氷になる。

4、大きな氷は重さで地上に落ちていく。

5、落ちていく際に氷が解けて雨になる。

って訳よ」

「なるほど。台風が北に行くにつれて弱くなるのは、地上の水蒸気が少なくなるからだね」

「本当に知らなかったのか?」


 哲平を見る美咲の目がジト目になっている。


「興味ないことは頭に入らないから仕方ないね。それより間違っていたかな?」

「いや、話が飛んでいるが理解出来ていそうな事は分かった。

 けど……」


 話を途中で切った美咲の目線が哲平から外れる。その目線の先にはショタ君がいた。

ショタ君の周りには班目や森迫以外にも女子が集まって、一緒に会話をしながら食事を摂っている。

 哲平も聞き耳を立てて、ショタ君たちの会話を盗み聞きをする。


「……で、エロ神様は二次元だと思うんだよ」

「ええ。そうだと思いますわ」


 ショタ君の主張に、掛けているメガネが飛んでいきそうなくらい、大きく首を縦に振って答えたのは班目だ。

 それを見ていた美咲は哲平に向き直る。


「どうやらショタ君は信者獲得の為に勧誘を始めた様ね。

哲平、私も信者獲得の為に勧誘してくる」

「あ、ちょっと……」


 哲平が手を伸ばして美咲を引き留めようとするが、間に合わず美咲はクラスを飛び出して行った。

 哲平は伸ばした手を下ろし、美咲の弁当を見る。それはまだ食べかけだ。


「まだ食べてる最中じゃないか。

美咲さんは僅かな煙から大火災を引き起こすトラブルメーカーと言われているだけに、嫌な予感がするなぁ。

 けど、エロ神なんて誰も信じないとは思うけどね」


 哲平は話ながら美咲の弁当に手を掛け様とする。しかし、その手は晴奈に叩き落される。


「常識で考えれば誰もエロ神なんて信じないと思うけど、もしなにかあっても、私は哲平君の味方だから」

「アニメで言うところの、謎の光やお邪魔キャラクターが出る様な事までした人が、エロ神様を信じないなんて考えられない」

「酷い。哲平君がやれと言うからやったのに……哲平君はエロ神様を信じているの?」

「いや。全然。

 むしろ今は、なかった事にして欲しいくらいだよ」

「だよね。

なんで美咲さんはエロ神を広めようとしてるんだろ。

私には哲平君を貶めようとしている様に見えるのだけど」

「いやいや。それは考え過ぎってモンでしょ。

エロ神だよ?  広まる方がどうかしてるって」

「私、知ってる。

そういうのをフラグっていうんだよね。

しかもバカの高校なら有り得ないとは言えないんじゃないかな。

ってなに美咲さんの弁当食べてんのよ」

「ごちそうさまでした」


 哲平は晴奈がしゃべっている間に、美咲の弁当を食べてしまった。


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