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派閥の誕生と信者の拡大 始まり


 哲平たちが莫迦野高等学校に入学して数日後の事。

幼稚園の頃からの幼馴染みと言う事もあって、同じクラスになった哲平と晴奈は二人で話をしていた。


「晴奈は友達とか作らないの?」

「うーん。作らない訳ではないよ。

 そのうち……でいいんじゃないかな。そういう哲平君は?」

「僕?  面倒だし、いいよ」


 馴染み過ぎて、それ以外の友達は中々出来なかった。二人だけの世界だった。

その世界に足を踏み入れたのは、ショタ君だった。


「僕、穴瀬翔太って言うんだ。ショタ君って呼んでよ」


 穴瀬翔太と名乗った学生服を着た人物は成長期がまだ来ていないのか、背が低く、声も高い。確かに見た目ではショタといっても差し支えない。

 ショタ君は持っていたノートを哲平に渡す。

哲平がノートを広げるとそこには、前の授業中に落書きでもしていたのかマンガが描いてあった。


「マンガとかが好きなんだ。よろしく」

「下田です。よろしく」


 晴奈はぎこちなく挨拶を返す。

 


「僕は西塔哲平」

「僕も下田さんと同じように哲平君って呼んでいいかな」

「うん。いいよ。ついでに下田さんじゃなくて名前の晴奈で呼んであげてよ」


 ショタ君は晴奈の目を見て

「いいの?」

と問うと、晴奈は目を逸らして

「……うん」

と返す。

 哲平は晴奈の返事が終わると同時に口を開く。


「ショタ君、僕もエロいマンガなら好きだな」

「え……っと、エロマンガじゃないよね。年齢的に買えないだろうし」

「あ……うん。少年マンガのエロい奴の事だよ。なんかエッチぃのあるよね」

「そうだよね。ところでエッチなマンガだけ?  流行ってるマンガとかは?」

「それ以外?  勧善懲悪的なものは好みじゃないから、ヒーローが出てきて解決ってのは見ないな。でも、自分でもドコが良いか分からないけど、コレ面白いって思うものはあるよね」

「絵がお気に入りとか、エッチな要素が入っているとかではなく?」

「なく」

「例えばどんなの?」

「マンガじゃないけどチャップリンの『一人殺せば殺人者、100万人殺せば英雄になる』なんて面白い」

「ああ、そういう系の話ね。じゃあ、哲平君は弱肉強食ってどう思う?」

「なんでそんな事を聞くの?」

「ヒーローは弱い者を助けるけど、弱肉強食が摂理ならヒーローは摂理に反する事をしている事になるのかなと思って」

「面白い話だな。ショタ君にとってのヒーローはどっちだと思う?」

「僕はそういう理屈は抜きで考えたいから、摂理に反していても弱い者を助けるヒーローがいいな。マンガやアニメに洗脳されているとしても、コレばかりは譲れないかな」


「面白そうな話をしてるね」

と哲平たちの話に割り込んできたのは美咲だ。

 美咲はバカの高校に入ってくる様な成績の人ではないと生徒たちの間で噂されていた。その美咲にショタ君が

「田頭さんはどう思う?」

と聞く。


「私? 必ずしも正義が勝つとは限らないからね。

弱い者を助けるヒーローが必ずしも正しくなくてもいいんじゃない?

摂理に背いてでも弱い者を助けるヒーロー。そこに愛を感じるとかどうよ?」

「愛の為に摂理に背く……か。流石頭がいいだけあって、考え方が僕たちとは違うな」


 ショタ君が目をキラキラさせて美咲を見る。それに引き換え、美咲は見た目こそは笑顔だったが、ショタ君を失望の目で見ていた。


「摂理に背くヒーローそれも悪くないね。でも摂理に従いつつ弱い者を助けるのが本当のヒーローなんだろうね」


 そう言った哲平に、美咲は

「ほほう。面白い。弱肉強食を否定出来るというのか」

と言い、獲物を狙う猛獣の目で哲平を見る。


「否定出来るかと言われると困るけど、バカの高校に通っている僕等は弱者って事になると思うんだ。だから弱肉強食は否定しなければならない。

 例えば、弱肉強食と言うならばなぜ鯨や海豚を捕って食べてはいけないんだろうか?」

「それは種を保存する為だろ?」

「そう。全滅されては困るんだよ。

そして人口に合わせて牛豚鶏などの家畜の数も決まってくる。全滅されては困るからね」

「その考えだとヒーローが生きていく上で、一定数の弱者が必要と言う事になるかな?」

「現実にはヒーロー気取りな奴がいるだけで、ヒーローなんていないよ」

「ふふふ。その考えだと人間を気取っている奴はいても、人間はいないって事にならないか?」

「いつから僕らが人間だと錯覚していた?」

「少なくとも私は人間のつもりだが、哲平は違うのか?」

「初めの人間をアダムとするなら、アダムのみが人間でそれ以外は亜人であると考える事も出来る。アダムの遺伝子と僕たちの遺伝子は完全に一致はしないだろうしね。

 まあ、人間かどうかの定義は曖昧って事だね」

「成程、面白い!

 だが自称人間は家畜の肉を食べている。つまり弱肉強食は否定出来ていないが、どう解釈する?」

「なにを言われますやら。

その分の飼料は人間が与えている物だ。

 肉になる前はまるで召使の様に家畜の世話をするのだから、弱者を装って育てその後肉を頂いているだけなんじゃないかな。弱者と強者が途中で入れ替わる事でバランスが取れている……とでも言えばいいかな」

「人と家畜の間に弱者と強者は存在しないという訳か。

人間にも弱者と強者は存在しないと言うなら、バカの高校に通っている私等はバカではないとでもいうのか?」

「馬鹿と鋏は使いようと言うから、バカかどうかより、バカにはバカの使い方があるだろうし、もしバカが使えないと言うのなら使う側もバカなんじゃないかな」

「成程、実に興味深い。

 それにしても哲平って面白い奴だな」


 美咲は熱い眼差しで哲平を見ているが、哲平の目線の先にあるのは美咲の大きい胸だ。

 美咲はため息を付き、視線を晴奈に移す。


「それにしてもハルハルは大人しいが人見知りか?」

「ハ、ハルハル?」


 驚くばかりの晴奈の横から哲平が

「人見知りというより話について行けてないだけだから、仲良くしてやってよ」

と助け船を出す。


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