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エロ神教の終焉 放送室占拠


「失礼します」


 そう言うと美咲は職員室に入る。

美咲は先生たちの視線を他所に職員室を進み、鏡山先生の前で止まる。


「なんですか?」


 鏡山先生は険しい顔で美咲に尋ねる。


「朝の話ですが、恐らく犯人が分かりました」

「そうですか。それで誰ですか?」

「その前に確認したいのですが、被害を訴えたのは誰でしょうか。

私の考えでは3組の内尾さんであって、ショタ君……失礼しました。穴瀬君や2組の豊瀬君ではないと考えますが……」

「確かに3組の内尾さんです。で、犯人は誰ですか?

それと、穴瀬君と2組の豊瀬君でしたか、その人たちはなにか関連があるのですか?」

「犯人の件に関しては、既に内尾さんとの間で弁償の話に入っていますので、その件は解決したと言っていいでしょう。

 穴瀬君たちは同じく被害者です」

「はぁぁ。一体何が起こっているのですか?」


「かくかくしかじか」

と美咲が鏡山先生に説明し、その後に

「放送室をお貸し頂きたいのですが」

と言って先生に紙を手渡す。

 受け取った紙に一通り目を通した鏡山先生は、怒りを抑えつつ美咲を見る。


「ここ最近生徒の様子がおかしいと思っていたが、貴女たちの仕業だったのか」

「はい。申し訳ありませんでした」

「でも西塔哲平が自ら謝罪に来るべきでしょう。なぜ貴女なんですか?」

「哲平は生徒全員に謝るのですから、せめて鏡山先生への謝罪は私がしたいと考えたのです」

「そうですか。で、放送室を貸して欲しいと?」

「はい」

「まあ貴女は成績も優秀だし、任せてもいいでしょう。

 書いてある事を信じるなら、豪雨から始まった話で神でもなんでもなさそうですから、宗教とは言えない。

ですが宗教として広がってしまった以上、生徒間に蔓延したおかしな宗教であっても宗教の自由がありますから、先生と言う立場上宗教弾圧をする訳にも行かないので、この文章を読み上げてどうしようもない宗教騒動を終わらせてもらった方がいいでしょう。

問題を有耶無耶にしても騒動が治まらなければ意味がないのだから、それが一番手っ取り早いはずですし」

「ありがとうございます」


 美咲は鏡山先生に一礼して職員室を出た後、

「哲平、舞台は整えたぞ。お前の実力を見せて見ろ」

と顔を悪魔の様に歪ませて呟いた。




「御影先生」


 鏡山先生は美咲から聞いた話を伝える為に、3組の担任である御影先生に話しかけた。


「どうされました鏡山先生」

「うちのクラスの生徒が、かくかくしかじかで……」

「そうですか、態々お伝えいただき有難う御座います。学校全体に広がっている様ですが、優秀な田頭美咲さんなら問題を治めてくれるとくれると思いますので、鏡山先生の判断を私は支持したい。

 はぁ。それに比べて、私のクラスの内尾美衣奈ときたら、報告もないとは……」


 御影先生は大げさに顔を両手で覆って、恥ずかしさを表す。


「田頭美咲がこの学校としては優秀すぎるだけです。御影先生の指導に問題はないと思います。顔を上げてください」


 鏡山先生は気遣いの言葉は掛けたが、御影先生に触れるまではしなかった。


「励まして頂いて有難う御座います。鏡山先生はお優しいです。

 鏡山先生の優しさに甘えてばかりもいられませんので、校長先生には私から話を通しておきますよ。今回の問題は、発生元が鏡山先生のところでも、私のクラスから発覚したものですからね。それに、一年目の鏡山先生がしっ責されるかもと考えますと忍びない」

「そんな、御影先生に罪を被せる様な事は出来ません」

「いえ。寧ろベテランである私たちが気が付かなかったのですから、私の落ち度です。

 鏡山先生は、いずれベテランになった時の為に、今は責任の取り方を学んで頂きたい。

 宜しいですね」

「は、はい……」


 鏡山先生の返事を聞いた、御影先生は笑顔を作ると、校長室へ行く為に歩き出す。


「残念ですねぇ。肩に手などを掛けて頂きたかたのですが、まだ私に触れる事には抵抗があるようですね。スキンシップは大事だと思うのですが……。

 仕方ありません。今は出来る限り、恩を売っておくとしましょう」




 翌日7月13日の昼休み。

 哲平たちは食事を摂る事なく、直ぐに職員室の隣にある放送室の前まで来た。

 晴奈は特に役割がある訳ではないが緊張の面持ちで

「放送室ってこんなところにあったんだ」

と緊張感のない話をするが、誰も答える人はいない。

 放送室に入りながら、不安な哲平は美咲に尋ねる。


「本当に読み上げるだけでいいの?」

「文章は先生にも確認をとったものだし、全ての漢字にルビも振っておいたから安心して読み上げてくれ」


 美咲は一人テキパキと放送の準備を進める。哲平が読み上げる紙の入った封筒をテーブルに置いて、スイッチを入れ、マイクに向かって

「あーあー。マイクのテスト中。マイクのテスト中」

と言うと哲平の方を向いて

「さ、哲平。準備は済んだよ」

と小声で言い、マイク前の場所を哲平に譲り、自身は放送室のドアの近くに移動し、鍵を掛ける。


 哲平は唾をのみ込み、テーブルの封筒から三つ折りになっている紙を取り出し、広げる。そこには『切腹』とだけ書かれている。

 哲平はパニックになるのをなんとか踏みとどまって美咲を見る。


「ちょっと、これどういうこと?」

「あれー。間違えて違う紙を持ってきてしまったみたい」


 明後日の方向を向いて、ワザとらしく頭を掻いて誤魔化そうとする美咲。

微かに笑い声が聞こえてくる。防音設備がある放送室だが、外からの音が全く聞こえない訳ではない。

 笑われている事に気が付いた晴奈は

「スイッチ入ったままで話声が放送されてるよ」

と言った時、外からドアが叩かれる。


「バカども開けろ」


 鏡山先生の声だ。

晴奈はドアに近づき鍵を開けようとするが、身を挺して美咲が阻止する。

にらみ合う晴奈と美咲。先に口を開いたのは晴奈だ。


「鏡山先生の言う通りにするべきよ」

「このチャンスを失うと、機会を永久に失い、重い処分が待っているだけだよ。

ここで何とかするしかないんだよ。

私がフォローするから、哲平の考えをぶつけるんだ」


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