エロ神様が生まれた日 休み時間に生まれし神
チャイムが鳴り授業が終わる。
鏡山先生が教室から出てきて
「お前ら、戻っていいぞ」
と哲平と美咲に声を掛け、職員室へ向かう。
この頃には空はまだどす黒い雨雲が掛かってはいるが、激しかった雨は小降りになっていた。
哲平と美咲は各々の席に戻る。その哲平の席に怒った顔をした晴奈がやってくる。
「哲平君。授業中になんて事を言い出すの!」
哲平は下向き加減で
「いや。つい興奮して……」
と言いながら頬を掻く。
「いつものことながら鏡山先生の説教は長いね。
勉強しなければいけないのなら、無視して授業をすればいいと思うのだが、どう思う?」
美咲が哲平たちに話しかけるが、晴奈はムッとした表情を返す。
哲平は授業を思い出し笑いしながら美咲の方を向く。
「説教は兎も角、今回の授業はとても価値があった。まさにパラダイスだったよ」
「パラダイスか。説教を除くなら確かにその通りだな。ハルハルはどう思う?」
話を振られた晴奈は戸惑いの表情を浮かべつつ唸った後、返事を返す。
「理解はしたいんだけど、なにがパラダイスなのか分からないよ」
「そうか。理解出来ないか。それは残念だ。私と哲平は理解出来るというのにな」
「っ!」
余裕の表情の美咲と、苦虫をかみ潰したような表情の晴奈の視線が衝突し火花を散らす。
その雰囲気を他所に哲平が顎に手を当てながら考え込みながら「ゲリラ豪雨は神の恵みだったのかな」と呟く。
「「ぇ!」」
美咲と晴奈が哲平の呟きに同時に驚く。その驚きに更に驚く哲平。
美咲と晴奈の視線に痛みを感じた哲平は頬を掻く。
「あ。いやなんていうか。
ここ最近雨が強く降る様になったよね。って言っても数年も前からだけどさ。確かそれってゲリラ豪雨とか言われていると思うんだけど……。
それで、ゲリラ豪雨のおかげで一時的とはいえ実に素晴らしい風景だった訳だし、ゲリラ豪雨は神の恵みと言っていいのではないだろうか……って考えただけだよ」
腕組みをしながら哲平の話を聞いていた美咲は、話が終わるや否やニヤッと笑う。
「なるほどね。
しかし、服を透けさせてブラジャーを見させるだけの神様か。
非常にしょぼい神様だけど雨が激しく降る様になった様な気はするし、どこぞの宗教で崇められているご利益があるかどうか分からない神なんかより遥かに存在しそうだな。
神の名は差し詰めエロ神と言ったところかな?」
「なんで、エロ神なんて品のない名前になるのよ」
哲平は二人のやり取りを他所に
「エロ神かぁ。将来は全裸が拝める様になってくれればいいな」
と、呟いた事も分からないくらい妄想の世界に入っている。
哲平の呟きに、体に、特に胸に自信のない晴奈が反応する。
「いい訳ないでしょ。
今回の豪雨はどうか知らないけど、過去には豪雨被害で死者も出てるのに不謹慎よ。
裸なんてもっとダメ。体にコンプレックスを持ってる人だっているのよ」
「ハルハルは分かってないな。そこがいいんじゃない。
ところで哲平、これをご神体として使ってみてはどうだろうか」
そう言いながら美咲は鞄からコケシを取り出して、それを自身の口の前に持ってくる。
そして、少し舌を出しコケシを嘗める様な感じで上下に移動させる。
「どうしてそんなものを持ち歩いているの?」
「たまたま持っていただけだよ。何時も持ち歩いている訳ではない。
それよりご神体の件いいよな」
「いいんじゃないか。ないよりもあった方が良いし」
「オーケー。それじゃ早速、ご神体にお祈りをすべきだと思うのだけどどうかな?」
「普通に手を合わせて祈ればいいんじゃないの?」
「エロ神だからね。ご神体に向かってスカートを捲って中を見せるってのはどうかな?」
「いいねぇ。でも僕はスカートじゃないんだけど、どうすればいい?」
「ズボンのチャックでも開ければ?
とは言え、教室の角で他の生徒に見られる様な事がないように配慮はしないとね」
美咲は立ち上がり、教室の後ろ側にあるロッカーの窓側にコケシを置いた。
そしてご神体に対してスカートを3秒くらい捲って見せる。
「さ、哲平も」
「でも罰当たりな気も……」
「私の言うとおりにすれば、きっといいことがあるから」
「う、うん。分かった」
哲平はご神体に対してズボンのチャックを3秒くらい下ろす。
美咲は哲平の行為を確認すると、晴奈を見る。
見られた晴奈は引きつった顔をしている。
「さあ。ハルハルもどうぞ」
「……」
「あらぁ。私と哲平はやったのに、ハルハルはやらないの?
それじゃ、ハルハルは今日から仲間外れね。
ブラジャー忘れてるみたいだし、ひょっとしたらパンツも穿き忘れてる……なんて事はないよね」
「っ! やるわよ。やればいいんでしょ」
勝ち誇った顔をする美咲を晴奈が睨みつけて、ご神体の前に立ちスカートに手を掛ける。
「本気の様ね。なら、私はあなたの勇気に免じて、あなたからは目を逸らしておくわ」
美咲は目を晴奈から未だ明るくならない空へと移す。
ご神体の前に立つ晴奈の後ろ姿からはパンツを穿き忘れているかどうかは分からないが、スカートが少しづつ捲り上げられていく。そしてスカートはその中身が見える高さにまでたくし上げられた。
美咲が
「やっぱり」
と呟く。
美咲の呟きの意味を理解した哲平は美咲の視線を辿る。
そこには窓があり、鏡程ハッキリとではないが晴奈の姿が映っていた。
晴美のスカートの中は、肌色をしており、パンツを見る事は出来なかった。
興奮した哲平が
「見えた!!」
と叫ぶ。
事態を把握した晴奈がスカートから手を離し、振り向きざまのラリアットをお見舞いし、哲平は吹っ飛ばされた。