事件発生 行方不明者
哲平たちが教室に戻ったと同時にチャイムが鳴ってしまった。
班目に聞きたい事があった哲平たちだったが、残念ながら話を聞くことは出来なかった。
授業が始まってしまったからではなく、当の班目がいないのだ。
そればかりかショタ君の姿も見当たらず、授業中に戻ってくる事もなかった。
鞄が置きっぱなしなので、ごく普通に考えれば帰ったという訳でもないはずだ。
その為、授業中であるにも関わらず教室内はざわついていた。その一人は森迫だがもう一人はモブ女子だ。
「ショタ君どうしたの?」
「班目さんも見当たらないよ」
「「まさか」」
「抜け駆けされた!?」「拾い食いでもしてお腹壊した。って意見が合わなかったね」
「そういう問題じゃなく、大問題よ。あの二人は最近仲良くしていたから、とても心配だわ」
「なにを心配しているの? 事件、事故に遭っていない事を心配するところじゃないの?」
授業が終わり休み時間になるやいなや、美咲が哲平に話しかける。
「ショタ君と班目さんを捜そう。
なにもないとは思うけど念のためにな」
「うーん。どうせ二次元貧乳派の作品でも作ってるんでしょ。
ショタ君だけなら授業中に作るだろうけど、班目さんと一緒だから授業をサボったんじゃないかな。
そんな羨ましい人を捜す気にはなれないよ」
「私もそうだとは思うけど、なんな引っ掛かるんだ。
この事件を片付けて私と一緒に夏休みを満喫しようよ」
「よし、捜そう」
「やる気になったところ済まないが、その前に私はトイレに行くから哲平とハルハルで先に行っててくれ。私は後から追いかける」
「分かった」
哲平と晴奈が教室を飛び出す。それを見送る美咲がニヤッとして呟く。
「ふふふ、哲平。考えが甘いよ。
いけないねぇ、私が一人になるタイミングを作らせるなんて」
教室を飛び出した哲平だったが、教室を一つ一つ見て回っている。
晴奈に至っては探す素振りもなく、哲平を見て話すだけだ。
「ショタ君と班目さんは、どこ行ったんだろうね」
「僕の方ばかり見てないで、ショタ君たちを捜してよ」
晴奈が
「だって哲平君、美咲さんばかりで私を見てないんだもん」
と小声で言うが、美咲の
「やっと追いついた」
に邪魔される。
晴奈が悔しそうに
「速すぎ」
と不満を言うが、美咲は
「そんな事はない。普通だ」
と軽くあしらう。
ショタ君と班目を捜す事が最優先である為、哲平は美咲に尋ねる。
「ところでどこを捜せばいいか見当もつかないんだけど」
「昼休みなら虱潰しに捜せばいいが、短い休み時間で捜すとすれば心当たりを捜すしかあるまい?」
「心当たりってドコ?」
「哲平も心当たりはなかったのか。それでは今は捜しようがないな」
立ち止まってしまう哲平たち。
チャイムがなり時間切れとなってしまった哲平たちは教室に戻る。
晴奈は教室に戻りながら
「美咲さんは何のために私たちに捜させたの? 私としては哲平君と二人っきりで散歩出来て良かったけど……」
と呟く。
急いで教室に戻ってきた哲平たちだったが、先生はまだ来ておらず授業は始まっていなかったので、ゆっくりと各自の席に着く。
美咲が席に着く哲平に小声で話しかける。
「ご神体のこけしがなくなってるんだが、哲平どこかやったか?」
「いや。っていうかみんなでショタ君と班目さんを捜していたじゃないか」
「それもそうだな……だが、こけしを捜そうとするなよ」
「なんで? 僕が責任を持って捜すよ」
「お前、なんて言って回るつもりだ?」
「美咲さんのこけし……じゃ分かる人にしか分からないから、『田頭さんのこけし』って言って聞いて回ればいいんじゃないか」
「それが困るんだ。いいか、捜さなくていいからな」
小声だが怒気を含んだ美咲の声に、哲平は
「う、うん。分かった」
と答える。
その後、哲平は授業中に
「どうして『田頭さんのこけし』って聞いちゃダメなんだ」
と一人で考え込んでいた。




