脱落派閥 試験後の他の派閥
「三次元派のみなさんじゃないですか」
声を掛けられた哲平たちが振り返る。そこには内尾がいた。
日頃、コスプレした姿しか見ていない為、制服姿の内尾が分からなかった晴奈が
「誰?」
と問う。
「酷いじゃないですか。内尾ですよ。内尾美衣奈」
それでも首を傾げる晴奈に、ほっぺたを膨らませる内尾。
内尾の膨れた顔を見てケラケラ笑う美咲が
「コスチューム派でいつもメイド服を着ている内尾さんだよ」
と言うと、晴奈が
「ああ」
とやっと気が付く。
哲平は女性三人に囲まれているのでとても幸せな顔をしている。そして出来ればその時間を伸ばすべく、内尾に話しかける。
「内尾さんはなにを買いに来たの?」
「私はなにも買わないよ。ただ見るだけ。
コスプレ衣装は見るだけでも楽しいんだよ。
これからバイトだから、そんなに時間はないんだけどね」
目論見が一瞬で崩れ去った哲平はどんよりとした顔を床に向けた。
しかし、内尾は哲平の様子に気付く事はなかった。美咲が
「この辺の安いコスプレ衣装なら少しバイトするだけで沢山買えるでしょう?」
と言った為だ。
内尾は美咲を一瞬睨むが、いつもの営業的なスマイルに戻す。
「確かに安いコスプレ衣装だし、バイトのお金がすべて使えれ確かにいくらでも買える。
けど使えないのよ。バカの学校って私立だからさ、学費高いでしょ。家計的にバイトの収入は自分の手元には殆ど残らないのよ」
内尾の笑顔は崩れない。美咲は不可解に思いながらも
「それは悪い事を聞いてしまった」
とすまなそうに言う。
「三次元派のみなさんには感謝しています。
私はアイドルになりたいんです。コスチューム派で少しでも人気を集めて、とりあえずは学園のアイドルを目指すつもりです。だから派閥を超えて応援よろしくお願いします」
「なんて健気なんだ。応援するから頑張って!」
「頑張ればきっといいことがあるよ」
と哲平と晴奈が、内尾にエールを送る。
その内尾は店内にある時計をチラチラ気にしている。
「ありがとう。暗い過去を乗り越えてこそのアイドルですわ。それではバイトの時間に間に合わなくなりますので、この辺で失礼します」
本当にバイトの時間に間に合わないのか、内尾は走り去った。
内尾の姿が見えなくなってから、晴奈は
「武冨君と関係がありそうな気がしてたんだけど気のせいだったのかな。アイドルになりたいのであれば恋愛は控えるだろうし」
と誰に話すでもなく言うと、美咲は
「大金が手に入れば、どちだっていいんだろうね」
と返し、それに対して哲平は
「女って怖い」
と呟いた。
哲平たちはショッピングモールでの買い物を終えて、帰ろうと駐輪場に来てみるとそこにはショタ君がいた。
今来たのばかりなのか自転車を停めているところだった。
「ショタ君!!」
哲平は大声でショタ君を呼ぶ。通行人A~Zまでが、哲平を一瞥する。
流石に学校外でしかも大声でのショタ呼ばわりは想定していなかったのか、ショタ君は慌てて哲平の元に走ってやってくる。
「ちょっとは場所を考えて!」
「あ、ゴメン。つい、いつもの癖で」
「まあ、ショタ君って呼んでと言ったのは僕だけどさ」
「ショタ君はなにか買うの?」
「画材を買いに来たんだよ。ここ最近は、試験勉強だったから、今日から思いっきりマンガを描くんだ」
「勉強してたんだ」
「哲平君は試験勉強しないの? 僕は赤点を回避するための勉強はするよ」
「僕もそのくらいしかしないよ」
「哲平君。ちょっと話変わるけど、エロ神教反対派って知ってる?」
「聞いた事はあるってレベルかな」
「そうなんだ。じゃあ、迷惑は掛けてないんだね」
「どういう事?」
「失礼ながら僕の二次元貧乳派が最大派閥で、今50人くらいの信者がいるんだ。
それで、エロ神教反対派が文句を言いに来るのは僕の派閥かなと思っていたんだけど全然来る気配がない。
そうすると本家の三次元派が文句を言われているのかなと思って心配していたんだ」
「文句なんて聞いた事がないな。美咲さんとハルハルは?」
美咲は
「全くない」
と言い、美咲の右にいる晴奈は
「左に同じ」
と言う。
美咲が珍しく難しい顔をする。
「うちの派閥は人気ないからかなっと思っていたけど、ショタ君のところも同じとなると不気味ね。文句言われないからいいけど……」
晴奈は
「ねぇ。今更かもしれないけど、熱いから話すなら日陰で話さない?」
と日陰を指差し、哲平は
「エロ神教の始まりは豪雨からだぞ。この暑さを何とかしてくれ」
と空に向かって不満を漏らす。
「ねえ、哲平。その豪雨についての意見が聞きたい。哲平はどう考える?」
「その……いや、でも……とりあえず、今日は帰らない? 暑くて頭が回らないよ」
晴奈が
「賛成! 賛成!」
と言い、哲平と晴奈は一緒に帰って行った。
ショタ君も
「じゃ僕もこれで」
と言い、美咲と別れた。
美咲は
「哲平はなにか、とんでもない事を思いついたのかも知れない」
と呟き、ニヤッと笑った。




