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脱落派閥 試験後の水着


 学期末試験が始まると流石にエロ神教の活動はなくなった。

休み時間は、一夜漬けで詰め込んだ知識を、教科書を見てメッキが剥がれ落ちない様にしなければ、赤点となり追試や補習が待っているからだ。

試験中は午前中で終わる為、昼休みはない。


 そして時は過ぎ、学期末試験が終わった7月4日。

その日も午前中までで、午後の授業はない。

 全ての試験を終え、帰ろうとする晴奈が鞄を持って哲平の席に行く。


「やっと試験が終わったよ~。哲平君、帰ろう」

「もう勉強なんてしたくな~い」


 哲平が机に突っ伏す。

 美咲があきれた顔付きで哲平を見る。


「哲平。お前、勉強なんてしたくないって言うが、勉強していたのか?」

「赤点だと追試とか補習とか、そんな面倒事はイヤだからね。赤点を回避するだけの勉強はするよ」

「威張って言う事じゃないと思うぞ」

「僕は、美咲さんの様に勉強が好きじゃないんだ。好んで勉強なんてしないよ」

「そうか……そんな事より試験が終わったんだ。今からどこか行かないか?」

「美咲さんからの初めてのお誘い!! 勿論行くよ」


 哲平がガバっと起きて、喜びに満ちた顔で美咲を見る。もし哲平に尻尾が生えていたら、今頃ブンブンと音を立てて振っている事だろう。哲平の笑顔に美咲も笑顔で応える。

 晴奈にとっては、面白くない為

「私も行く」

と邪魔に入る。

美咲を見る目も火花を散らしそうな勢いだが、美咲は晴奈に対しても笑顔で

「行こう行こう」

と快諾する。

 哲平がワンワン言いながら涎を垂らしそうな感じで美咲を見つめる。


「どこ行くの?」

「何か食べてから、その後、買い物に付き合ってよ」

「何を買うの?」

「水着。哲平に選んでもらおうかと思って……」


 水着。この言葉にいち早く反応したのは、意外にも哲平ではなく晴奈だった。


「私も買うから選んで」

「オーケー。一番布面積の少ない水着を選ぶよ」


 哲平は今にも飛び掛かって嘗めまくらんばかりの勢いで美咲を見つめる。だが、美咲は『待て』と言わんばかりに掌を哲平の前に突き付けて言う。


「私がどれがいいか悩んだ場合に、選んでもらうだけだから、布面積については問題なしだ……っていうかそれだと、悩んだら布面積の少ない方を選べばいいだけか」

「そうなるね」

「哲平、お前なぁ。それは、一緒に来る意味はありませんと言っている様なものだぞ」




 哲平たちが住む街で一番大きいショッピングモール。その中の一角にある店に入る。

 店内には多くの水着が置いてあった。

マネキンに着せられた女性用のビキニに目が行く哲平。その間に美咲が姿を晦ませてしまった為、焦りを表情に出しながら晴奈を見る。


「どうしよう。美咲さんを見失ってしまった」

「私は知らないよ。そのうちヒョッコリ現れるんじゃないかな。それまでゆっくり水着を選ぼうよ」


 晴奈が近くにあった、エロさのカケラもないワンピース型の水着を手に取る。


「これは幼過ぎるよね?」

「うん」


 晴奈は持っている水着を戻し、しばらく歩いた後、今度はビキニ型の水着を手にする。小さなスカートみたいなヒラヒラがついていて、エロさよりは可愛さを重視したモノの様だ。


「これはどうかな?」

「うーん。もう一声」


 晴奈が水着を見る目が険しくなる。暫くするとまた水着を手に取る。今度のはマネキンと全く同じ色形の水着だ。ショーツ側は左右が3センチ程しかなく、トップ側は普段のブラジャーより布面積が少ない。色は清楚な白だ。

「お待たせ」

と後ろから美咲の声がした。振り返る哲平と晴奈。

 美咲が持ってきた水着は、ショーツの左右は紐、トップは胸を包む箇所以外は紐で、恐らくこの店で一番布面積の少ないものだろう。色は小悪魔的な黒だ。

 晴奈は

「ぇ」

と声を出し、手に取った水着を戻して、別の水着を捜し始める。

 美咲は硬直して返事をしてくれない哲平との会話を進める。


「これはどうかな?」

「も、申し分ないよ」


 やっとの事で声を絞り出す哲平に、美咲は近づき人差し指を口に当てて小声で言う。


「冗談だ。本気にするな」

「冗談? そ、そうだよね。ははは」

「選んだのはこっちだ」


 美咲が指差したのはマネキンと全く同じ形の水着で色は黒だった。だが、すぐに指を引っ込める。

 そこに晴奈が美咲の持ってきた水着と同じ形の白色を持って来て、美咲に対抗心を表す。


「私、これにする」

「ほほぅ。対抗してきたな。

残念ながら今日は金の持ち合わせがないから後で買いに来るとして、もう一か所行きたいところがあるのだが……」


 少なくとも美咲は手にした水着を着ない事が分かっている哲平は

「えー。試着もしないの?」

と言って水着姿を拝もうと試みる。

 美咲が

「試着だけするのも悪いだろ?」

と店を気遣う様な言い方で回避し、晴奈は

「確かにそうね」

と言い、ない胸をなでおろす。

 哲平の目論見は美咲によって、あっさりと破れ終わった。こんな美味しいシチュエーションなのに、お預けをくらってしまうとは想像もしなかった哲平だった。




 美咲についていく哲平と晴奈。

美咲が足を止めた先には……浮き輪があった。

 晴奈がクスクスと美咲を笑う。


「美咲さんひょっとして泳げないの?」

「ふふ。人間一つくらい弱点があった方が可愛げがあると思うけどな。

ハルハルは浮き輪がなぜ浮くか知っているか?」


 美咲の反撃に対し、晴奈は無謀にも受けて立つ。


「バカにしないでよ、それくらい分かるわよ。空気が水より軽いからよ」

「じゃあ、風船が浮くのはなぜか分かる?

外も空気、風船の中も空気だけど」

「なんか軽い空気が入っているからよ」

「なんかって……まあ、間違いじゃないけど、正確には浮く風船の中にはヘリウムが入っているのよ。

ちなみに地球の大気は殆どが窒素だからそれより軽ければ気体はなんでもいいのだけど、一番軽い水素は危険な気体だから普通は使われてないのよ。

その回答だと、気球が飛ぶ理由は分かりそうにないわね」

「気球?」

「まさか気球を知らないの?

ふふ。まあ普段の生活では関わる事ないからね。哲平は知ってる?」


 不意に話を振られた哲平は、近くにあった水鉄砲を手に取って構えていて話を殆ど聞いていなかった。


「え、なに?」

「気球を知ってるかって聞いたの」

「気球くらい知ってるよ」

「飛ぶ理由は?」

「気球と言えば下の方で火を点けてるよね」

「そうそう」

「火が付けば煙が出るけど、煙は上がっていく」

「うん?」

「という事は煙は窒素より軽い?」

「残念。そもそも煙という元素はないから」

「じゃあどうして?」

「熱膨張って聞いた事ない?」

「ああ。なんか聞いた事がある。

同じ質量の物質でも、膨張している方が軽いってヤツか」

「正解。試験に出るから良く覚えてなさい」

「はい先生って言って話に乗ってあげたいところだけど、試験が終わった後だから勘弁して」

「ゴメンゴメン」


 話について行けていない晴奈は哲平に尋ねる。


「結局、煙はなんなの?

熱膨張ってなに?」

「さっきのエロい水着を着て見せてくれたら、僕の熱膨張を見せてあげられると思うよ」


 哲平は下半身を指差すと、美咲は

「ははは。確かに膨張するところが見れそうだな」

と笑い、晴奈は

「ハ、ハレンチな!!」

と初心な反応を返すと、哲平は

「ハレンチじゃなくて、ハレチンな」

と言い返すのだった。


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