脱落派閥 昼休み
次の日も相変わらず試験勉強とは無縁な学校だった。
言うまでもない事だが、日頃からしっかり勉強しているからではない。殆どの学生が学業そっちのけで全力で遊んでいるのだ。
廊下ではメイド服を着た内尾がモブ生徒に声を掛けている。
教室内ではショタ君がマンガをモブ生徒に見せている。
どちらのモブ生徒も関心を持っているらしく話を聞きマンガを読んでいる。
教室内では美咲と晴奈の二人が哲平の席の周りにいるが、その席の主である哲平はいない。
重苦しい雰囲気が続いていたが、先に口撃したのは美咲だ。
「哲平は私の事が好きだと思うけど、諦める気はないの?」
「私は負けない。
私と哲平君は幼いころからずっと一緒。
これまでも、これからも、変わらない」
まるで蛇と蛙がにらみ合っているかの様な空気が周囲に漂っていた。勿論、美咲が蛇で晴奈が蛙。
だが、哲平が教室に入ってくるなり、その空気は霧散する。
なにも知らない哲平は
「トイレに行っただけだというのにエロ神の勧誘が多くて困っちゃうよね。全部の話を聞いてると漏らしちゃうよ」
等と軽口を叩く。その言葉に美咲が素早く反応する。
「諸悪の根源として心が痛むか」
「酷いよ。騒ぎが大きくなったのは美咲さんのせいじゃないか」
「悪い悪い。泣きたいなら私の胸で泣くと良い」
美咲は立ち上がり、哲平に向かって両手を広げる。それに引き寄せられて哲平が美咲の胸に顔を埋める。
美咲は哲平の頭を両手で優しく包む。
哲平は
「柔らかい。初めて女性の胸に触れたけどこんなに柔らかいとは思わなかった」
と頭を左右に動かしながら言っているのだが、口も美咲の体にくっつけていて、モゴモゴとしか聞こえない。
「ああ、なんか良い香りだ。これが女の子の香りなのか。ブラジャーの形も触感で分かるよ」
と言っているのだが……以下同文。
美咲が抱いていた手を解き、哲平の肩を押して引き剥がす。
「泣かないなら終わりだ」
「泣いてたよ。だから濡れてるだろ」
哲平の指差した先は確かに濡れていた。
美咲は
「確かに濡れているな。だが問題は場所だ」
と言って、胸の上側を指す。
「ここに目があって、なぜそこが濡れる?」
哲平が指差した場所は先は美咲の鳩尾の辺り。それに左右に2か所ではなく、中央に一か所なので涙でない事は明らかだった。
「これ涙じゃなくて、涎だろ」
「えへ。バレてしまったか」
「全く」
美咲はポケットからハンカチを取り出して自分の服と哲平の口を拭く。
「あ、ありがとう」
「ふふっ。気にするな」
そんなやり取りをしているが哲平は美咲の胸に未練があり、じっと見つめている。
そんな哲平の姿を見てピコーンとなにかを思いついた晴奈が
「哲平君、私の胸ならいつでも良いのよ」
と囁く。
哲平が晴奈の方を向くと、両手を広げて哲平が来るのを待っていた。哲平は唸った後、晴奈の胸に顔を付ける。
哲平は
「硬いし平たい。まるで壁だ」
とモゴモゴせずに言う。
晴奈が腕でしっかりと哲平を抑え込み、離れるのを阻止する。
「どうしたの。まだ胸に顔を埋めておいてもいいのよ」
「埋めておいても……って言うけど埋まらないよ」
美咲はクククと笑い、晴奈は敗北感から脱力し手が解かれ、哲平は晴奈の絶壁からの脱出に成功する。
晴奈は
「なんで哲平君は酷い事をいう美咲さんの事が好きなの? なんで?」と呟き、美咲の胸を見る。そこにはしっかりとした二つのふくらみがある。その後自身の胸を見ようとするが、その視線の先には視界を遮るふくらみはなく、つま先が見える。
「胸か。胸なのか。でも、負けられない。
美咲さんはきっと哲平君を弄んでいるに違いないんだから」




