派閥の分裂 エロ神教反対派
今は体育の授業中だ。
莫迦野高等学校では、未だに女子の体操服はブルマーなのだ。ブルマーなんて絶滅していると言われようが、そこはどうしても譲れないのだ。
女子は体育館でバスケットボールの最中だ。
晴奈がボールを受け取り、ドリブルして前進する。
晴奈の目の前にはセンターライン上で立ちはだかる美咲。
晴奈は美咲の右側から抜けようとするが、美咲は抜かれない様に体を移動させる。
晴奈はボールを上方向に投げる。ボールは美咲の頭上を通過し、晴奈は左側に方向転換して美咲を抜きさる。
その後、ボールが二度ほどバウンドすると、そこはゴールポストの手前で、晴奈がボールをキャッチしてシュート。ボールは宙を舞ってバスケットゴールを揺らす。
美咲は胸が邪魔で晴奈に追いつく事すら出来なかった。
ピーっと笛が鳴った直後にチャイムも鳴る。
体を屈めて早い呼吸をする美咲と、呼吸一つ乱れずボールを回収して片づけようとする晴奈。
「や、やっぱハルハルって脳筋よね」
「晴奈さんって、ずっと走りっぱなしだったじゃないですか。何者ですか」
美咲が声のした方を向くと、ショタと一緒にいる事が多い班目がいた。
「な、何者って? 私が聞きたいよ」
「美咲さんと晴奈さんっていつも一緒じゃないですか」
「私は哲平と一緒にいるだけだよ」
「そうなんですか? 私にはそうは見えないのですけど。
むしろ、哲平君のどこがいいんですか。ただの変態じゃないですか」
「分からないなら、今は分からないでいいさ。
いずれ分かる時が来る。いや、多分……、もしかしたら……かな?」
「美咲さん、なんか弱気になってません?」
「うーん。宝くじみたいなモノだからね、あいつは。ところでアンタ誰だったっけ?」
「同じクラスの班目です。班目彩乃です」
「へー同じクラスの子だったんだ。知らなかった」
「ショック! 確かに、よく地味な子と言われるけど」
「まあ普通に考えると哲平よりショタ君を選ぶ人は良い選択だと思うよ。
競争率を無視すれば……の話だけど」
「はぅ!!」
痛いところを突かれ、赤面しつつも硬直する班目。
教室では哲平が机につっぶして誰ともなく喋っている。
「なんで男子はマラソンでグラウンド10周なんだよ。
豪雨後は涼しいから良いけどさ。もう6月14日だよ。
そろそろ熱中症とかに気を付けてマラソンとかはやめて欲しいよね」
誰もがぐったりとして、返事をする男子はいない。そして今のところ女子はまだ一人も戻ってきていない。
そこに晴奈が教室にやってきて、哲平に駆け寄る。
「ねえねえ。哲平君聞いて。
女子更衣室の一角に変な布で仕切られた場所があってね……」
ぐったりしていたはずの哲平のシャキッと背筋を伸ばす。
「女子更衣室という秘密の花園の話が聞けるなんて思わなかったよ!」
早く話を聞かせろとばかりに、晴奈に詰め寄る哲平。
勿体ぶる晴奈が口を開く前に、声は晴奈の後ろから発せられた。
「エロ神教反対派の事を話していたのか?」
晴奈が振り返ると、息を切らした美咲がそこにはいた。
「私がしゃべってたのに」
「ごめん。話が長くなりそうだったから」
ムッとした表情だった晴奈だが、美咲が真剣な表情だったため
「きちんと説明してよね」
と囁き、頭が良く効率よく説明できるであろう美咲に役目を譲る。
哲平は美咲に
「うん。エロ神なんて広がるはずがないんだ。まともな人もいるんだね」
と返すと、晴奈に
「ところで女子更衣室の話はエロくないの?」
と聞く。
「エロくないよ。
エロ神教反対派ってのが女子更衣室の一角に出来てるんだよ。
エロ神教は女子の一部には嫌われているよ」
がっくりと肩を落としながら
「エロくないのか」
と呟く哲平。
その哲平の両肩を手を叩く美咲。
「女子更衣室の一角にエロ神教反対派の拠点と思われる場所が設けられてあった。
中には誰もいなかったが、ノートが置いてあってな。
そこにエロ神教に対する不満が色々と書かれていたよ。
専門家じゃないから断定はしないけど、筆跡からすると同じ人が何回も書いていると思う。とは言えだ。男子の中にも格好つけて無関心なふりしてる人を見かけるけど、それと同じ。
女子とて本心ではエロいコトに興味津々なものさ。
ああ、でもそのうち文句言われるかもしれないから覚悟はしておけよ」
「僕は面倒事は嫌だな」
「こらこら。教祖なら責任を取らないと」
「なにかあると責任責任って嫌な世の中だよね。
もしゲリラ豪雨が誰かの責任ならどうやって責任取るのさ。
取り様がないよね。世の中間違ってると思うのは僕だけかな」




