表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/121

空中大決戦④

 ヒューゴは4体の魔神兵装(モーターヘッド)に向って飛翔しながら、ザムジードに率いられた渡鴉(レイヴン)が、一瞬にして魔神兵装(ソドム)とその搭乗者であるゴブリン型(デュナミス)を葬り去るのを観察していた。

 ヒューゴはまず、自分の持つオリハルコンの剣、永劫回帰(メタリカ)以外の武器が魔神兵装(ソドム)防護幕(ヴェール)を無効化していることに驚いた。

 しかし、それは心地よい驚きであった。

 そして、ザムジードが持つその剣に興味がわいた。

 その見た目は、何の変哲もないただの長剣である。

 だとすれば、秘密は剣自体にあるのではなく、ザムジードの能力(スキル)にあるのかもしれない。

 そんなことを考えながらヒューゴが飛翔を続けていると、とは言えそれは、ほんの数秒間のことであったが、魔神兵装(アザゼル)の右腕が自分たちに向けられていることに気づいた。

 その腕の先端の拳部分はすでに手首に沿って折りたたまれており、魔神光線砲アザゼル・レーザー・キャノンを発射する準備が整っている。

 ヒューゴの背後にはレーナとスオウが続いているが、英雄波動共振ウィ・ウィル・ロック・ユーによって共有された集合意識によって、ヒューゴたちは、戦場の状況を9人のパーティー全員の視点から完全に把握していたために、わざわざ注意を促す必要はなかった。

 魔神兵装(アザゼル)の右腕から光線(レーザー)が発射され、それをヒューゴたち三人組は、僅かに陣形を拡散して躱す。

 その間に残る2体、魔神兵装(ゴモラ)魔神兵装(マハザエル)渡鴉(レイヴン)に攻撃を開始していた。

 魔神兵装(ゴモラ)は巨大な連接棍棒(フレイル)の先端を高速回転させ、蓄えられた遠心力が頂点に達した瞬間、その先端をザムジードに向かって放った。

 同時に魔神兵装(マハザエル)は両手で構えた超振動剣ソード・チャントで、自分を取り囲みつつあった渡鴉(レイヴン)たちを薙ぎ払った。

 ザムジードは神速で連接棍棒(フレイル)の先端を躱し、魔神兵装(ゴモラ)の頭部に迫る。

 渡鴉(レイヴン)たちは皆、紙一重で超振動剣ソード・チャントの斬撃を躱した。

 しかし、悲劇が起こった。

 確かに躱したはずの超振動剣ソード・チャントの斬撃によって、3人の渡鴉(レイヴン)が斬り裂かれ、鮮血を迸らせながら落下していったのである。

 その様子を、一行はスローモーションのように眺めていた。

 一瞬の沈黙の後、レーナが悲鳴を上げた。

 ヒューゴたちと旅を始めてから、数々の修羅場を潜って来たレーナであったが、仲間が致命傷を負うのを初めて目撃したのである。

 そしてそれは、ヒューゴも同じであった。

 つまりヒューゴたち一行は、それほどまでに卓越した冒険者であり、そのためにヒューゴとレーナは、冒険者の日常である戦闘行為が、どれほど危険なものであるのかということを、これまで知らずに来たのである。

 そして二人はこの日、そのことを思い知った。

 死は、いつも自分のすぐ近くにあるのである。

 その他の者たちは、そのことを良く知っていた。

 しかし、それにしても3人の渡鴉(レイヴン)たちがどうして致命傷を受けたのか、バキエルを除く一行には理解できなかった。

 3人は確かに魔神兵装(マハザエル)の斬撃を躱していたのである。

 「あれは超振動剣ソード・チャント、鋼の刃で斬るのではなく、そこから発せられる振動の刃で斬る。そういうコンセプトの剣です」

 バキエルは、それをカルラにも伝えるために、敢えて声に出して言った。

 パーティー内では、英雄波動共振ウィ・ウィル・ロック・ユーによる以心伝心で伝わるのである。

 それからバキエルはザムジードを見た。

 ザムジードは何事もなかったかのように魔神兵装(ゴモラ)の頭部の水晶体を破壊した。

 そして残る9人の渡鴉(レイヴン)魔神兵装(ソドム)の場合と同様に魔神兵装(ゴモラ)を取り囲み、一斉攻撃を仕掛ける。

 魔神兵装(ゴモラ)の装甲が破壊され顕わになったのは、やはりオークの王(マゴグ)ではなく、オーク(タイプ)可能態(デュナミス)であった。

 渡鴉(レイヴン)たちが先ほどと同様、ザムジードに向って両手を翳す。

 渡鴉(レイヴン)たちの両手からザムジードの構える長剣に向って黒紫の光が流れ込み、球体となって膨れ上がる。

 「破壊波動弾エクスターミネーション!!」

 ザムジードの長剣がオーク型(デュナミス)に振り下ろされる。

 黒紫の光球がオーク型(デュナミス)の身体に吸い込まれるように重なり、音もなく膨れ上がり、その全身を覆うと急速に収縮し、やがて消失した。

 それは戦闘というよりは一種の儀式のように、淡々と進められていった。

 

 その時、レーナの頭にアーシェラの声が響いた。

 それはパーティー全体に共有される声ではなく、レーナ個人に向けられたものであった。

 「レーナ、落ち着きなさい。あなたは祭司系の固有職(ユニークジョブ)神仙(アヴァターラ)の所有者よ。あなたならあの3人を救えるわ」

 そう言われて、レーナははっとした。

 同時にレーナの頭には、瀕死者さえ完全回復させることのできる上位の神聖魔法(ホーリーマジック)が複数浮かんだ。

 そして一瞬のうちに最適解を導き出す。

 レーナは急降下を開始する。

 そこには、先ほど落下した3人の渡鴉(レイヴン)が死体のように横たわっていた。

 「聖霊よ。我らを憐れみ、死を退けたまえ!天命再起(ヘブン・ヘルプ)!」

 詠唱を終えたレーナの身体から翼を広げた天使の幻影(ヴィジョン)が現れ、その幻影(ヴィジョン)が3人の渡鴉(レイヴン)ひとり一人に近づき、次々にそっと手を置いた。

 レーナは幻影(ヴィジョン)が消える直前、自分を振り返って微笑んだような気がした。

 そしてレーナは、3人が完全に蘇生したことを確信した。

 だが3人は動かない。

 今や神仙(アヴァターラ)としての能力を完全に発揮して3人の状況を解析しているレーナには、それが一種の精神的なショックによる放心状態であることが解った。

 レーナは上空での戦闘には戻らず、ここで3人の回復を待つことにした。


 ヒューゴとスオウは魔神兵装(アザゼル)と対峙していた。

 そしてそこへ、今やその他の魔物たちの掃討を完了した仲間たちが集結しつつあった。

 これまでの流れから、魔神兵装(アザゼル)に搭乗しているのが偉大なる(G K R=)ネズミの王(リロイ・ブラウン)ではないであろうということは予想がついた。

 じつのところ、空中戦が可能になったことで魔神兵装(モーターヘッド)との戦闘はやりやすくなったとヒューゴは感じていた。

 なぜならば、これまでは魔神兵装(モーターヘッド)の頭部にある防護幕(ヴェール)を発生させている水晶体を破壊するために、仲間の援護を必要としたのであるが、今は鳳翼飛翔陣スプレッド・ユア・ウィングスによって得た飛翔能力と神速によって、ヒューゴ単独で、しかも容易に、それが可能になったからである。

 だから今や一行にとって、魔神兵装(モーターヘッド)は難敵とはならないことを、一行は皆理解していた。

 魔神兵装(アザゼル)が左手で魔神の鉄拳アザゼル・アイアン・フィストを放った。

 ヒューゴはそれを神速で躱す。

 スオウは躱さなかった。

 魔神兵装(アザゼル)の巨大な拳に対して、スオウは鬼人(オウガ)化もしていない生身の拳で、正面から受けて立った。

 魔神兵装(アザゼル)の拳とスオウの拳が、正面からまともにぶつかった。

 その瞬間、雷が落ちたかのような轟音が響いた。

 それは外面上、到底拮抗するとは思えない衝突であった。

 しかし、スオウの拳はまっすぐに伸び、魔神兵装(アザゼル)の拳こそ、僅かに弾かれたように、一行には見えた。

 もちろん、魔神兵装(アザゼル)の拳は防護幕(ヴェール)に護られているため、ダメージは受けていない。

 スオウもそれを承知で受けて立ったのだ。

 そして驚くべきことに、体格としては何十倍も大きい魔神兵装(アザゼル)よりも、スオウの膂力が勝っていることを証明して見せたのである。

 それはスオウにとっては、遊びのようなものであった。

 その時、ヒューゴが魔神兵装(アザゼル)の頭部に近づき、オリハルコンの剣、永劫回帰(メタリカ)を振り下ろした。

 水晶体が砕け散り、魔神兵装(アザゼル)防護幕(ヴェール)が解除される。

 そしてヒューゴとスオウの猛攻が始まった。 

 「王殺しの(バルムンク・)速弾きの(シュレッド・)追奏曲(カノン)!!」

 「鬼功法(きこうほう)百鬼繚乱(ひゃっきりょうらん)!!」

 巨大化したヒューゴの愛剣、永劫回帰(メタリカ)と、打撃、刺突、斬撃という三種の物理攻撃属性を備えたスオウ専用の籠手(ナックル)憤怒の聖者(セイント・アンガー)魔神兵装(アザゼル)の装甲を破壊し尽くす。

 搭乗者はやはり、偉大なる(G K R=)ネズミの王(リロイ・ブラウン)ではなく、オートヴィル城の中庭で遭遇した可能態人鼠兵デュナミス・ウェアラットであった。

 ヒューゴと目が遭った瞬間、可能態人鼠兵デュナミス・ウェアラットは狼狽えたような顔をした。

 「悪いけど、見逃してやる気はない」

 ヒューゴの剣が可能態人鼠兵デュナミス・ウェアラットを木っ端みじんに斬り刻んだ。

 残る敵は魔神兵装(マハザエル)のみ。

 ヒューゴがそちらを見ると、ザムジード率いる渡鴉(レイヴン)が、超振動剣(ソード・チャント)を警戒するように魔神兵装(マハザエル)を遠巻きに取り囲んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ