幕間の物語 ~魔王戦役~
今からおよそ四百年前、突如として復活した魔王は夥しい魔物の軍勢を率いて、人類に宣戦布告した。
その日人々は、暗雲に閉ざされた天に、その闇よりも黒い巨大な影が現れ、こう宣言するのを聞いた。
「我が名は魔王、原初にして唯一のこの世界の統治者である。生きとし生けるものは総て、我が前にひれ伏せ、然もなくば、死あるのみ!」
そうして人々は、それまで伝説や物語の中の存在だと思っていた魔王が、実在することを知った。
魔物の軍勢は、まず旧アルヴァニア王国の王都オブシディアンを包囲し、わずか三日のうちに陥落させた。
以来、オブシディアン城塞は魔王の居城となり、その支配は七年間続いた。
辛くも落ち延びたアルヴァニアの王子アルバートは十七歳になった時、エルフ、ドワーフ、ハーフリングらといった亜人種の王国との大同盟を立ち上げ、十二万の軍勢を率いて蜂起し、ついに魔王を討ち破った。
その時、魔王と直接に剣を交え、見事に勝利した勇者たちを、人々は六英雄と呼ぶようになった。伝説は六英雄の名を次のように伝えている。
曰く、英雄王アルバート、妖精の女王ティターニア、侏儒の王ドヴェルグル、小人の王ワーウィック、大賢者メルキオル、義賊王ディミトリアス。
魔王は滅びる直前、六英雄に対して呪いの言葉とともに四百年後の復活を予告したが、民の平安が脅かされることを危惧した英雄たちによって、そのことは伏せられた。
ただ英雄たちは、将来の魔王復活に備えて、冒険者ギルドと賢者の学院を創設した。
魔王居城であったオブシディアン城塞は焼き捨てられ、英雄王アルバートは大陸南部の中核都市アラヴァスタを新たな王都として定め、南アルヴァニア王国を建国した。
王国歴四一二年、現在、冒険者ギルドの本部と賢者の学院は王都アラヴァスタに置かれている。