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幕間の物語 ~魔族大公ガムビエル~

幕間なので短めです。次回予告的な感じでお楽しみください。今後とも宜しくお願いします。

 その部屋は万魔殿(パンデモニウム)の中の一室であった。

 部屋の中央最奥には大型の魔物も見上げるほどの階段(きざはし)があり、その上に玉座が置かれている。

 玉座には20歳そこそこに見える美しい容姿の青年が腰を下ろしている。

 その青年は容姿は美しいのだが、どこか浅ましく品のない印象を与えた。

 良家でなに不自由なく育てられ、甘やかされ続けて来たような、そんな雰囲気を持つ青年であった。

 「なあ、リロイ、ゴーモト。だからおまえたちは、マザコンのバキエルなんかのところに行かないで、最初から俺のところに来ていれば良かったんだよ」

 玉座に座す青年が、階段の下にひざまずく2体の巨大な魔物に向かって言った。

 巨体の一方は歪な影を持つ獣であり、他方は醜い人型の魔物であった。

 偉大なる(G K R=)ネズミの王(リロイ・ブラウン)コボルトの王(ゴーモト)であった。

 「まったく私どもの浅慮でございました。まさかバキエル様が、あの冒険者どもと行動を共にすることになるとは」

 偉大なる(G K R=)ネズミの王(リロイ・ブラウン)精神感応(テレパシー)ではなく、空気を振動させる言葉で、しかも人間の言葉で答えた。

 それは今、自分が相対する相手が自分よりも上位の存在であり、しかも人間の言葉を常用の言語として用いる者であったからである。

 「また私どもは、もとはバキエル様の家に仕えるものでしたので、バキエル様を差し置いてガムビエル様を拝することは、礼に反することでございまして」

 コボルトの王(ゴーモト)が言葉を継いだ。

 「おまえたちの言い分などどうでもいい。ともかく、バキエルは我ら魔族の敵となった。それは事実だ」

 玉座に座す青年、魔族大公アスモディアン・プリンスガムビエルがいい放った。

 「こうなったからには、おまえたちは今後、俺の配下として、ますます魔王(親父)のために尽くすのだ!」

 「「御意!」」

 偉大なる(G K R=)ネズミの王(リロイ・ブラウン)コボルトの王(ゴーモト)は異口同音に答え、深々と頭を垂れた。

 「ところでリロイ、おまえはとうとう魂の生成と合成に成功したようだな?」

 ガムビエルが邪悪さに顔を歪めながら尋ねた。

 「御意にございます」

 偉大なる(G K R=)ネズミの王(リロイ・ブラウン)が恭しく答える。

 「ではおまえに、まずは我が手勢を100体ほど預ける。それを使って最強の部隊を仕立てて見せよ!」

 「御意!」

 偉大なる(G K R=)ネズミの王(リロイ・ブラウン)は再び深々と頭を垂れた。

 「ゴーモト、おまえはオリハルコン製の妖精の指輪(フェアリーリング)の量産に成功したのだったなぁ?」

 「御意にございます」

 「ではひとまず、おまえの手元にある指輪(リング)はすべて俺に差し出すのだ。もし隠し立てなどすれば、その時には解っているな?」

 ガムビエルは厭らしく笑いながら、コボルトの王(ゴーモト)に告げた。

 「今は私の研究室にあります故、後ほど必ず」

 コボルトの王(ゴーモト)もまた、深々と頭を垂れる。

 「ふん、良いだろう。遅れるなよ」

 ガムビエルが、やや不満そうに答える。

 堪え性のない、わがままな御曹司を絵に描いたような態度であった。

 しばらくの沈黙の後、ガムビエルはしっしっと獣を追い払うような仕草をして、偉大なる(G K R=)ネズミの王(リロイ・ブラウン)コボルトの王(ゴーモト)を下がらせた。

 退出した2体の魔物は気づいていないようであったが、その部屋には最初から、ガムビエルの他にもうひとりの人物が居合わせていた。

 その人物が玉座の背後の暗闇から、静かに姿を現わした。

 それはまるで、それまで身を隠していた暗闇を切り取ったかのように、全身を黒い鎧で覆った騎士であった。

 「ザムジードよ。いよいよおまえの出番が来たようだ」

 「御意」

 ザムジードと呼ばれた黒衣の騎士が、陰鬱な声で応じた。

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