デス・オン・トゥー・レッグス
どうしても使いたかったサブタイトルを、またまた使うことができました。お楽しみ頂けましたら幸いです。
4人の分身がコボルト型可能態を取り囲む。
「「「「剣舞、四神相応!!」」」」
コボルト型は大剣を振り回し、分身たちを凪ぎ払おうと試みる。
しかし、4人の分身は華麗な剣舞、花鳥風月でコボルト型を翻弄し、追い詰める。
4組の双刀、戦火と火焔が8本の太刀筋を描いてコボルト型の四肢を斬り刻む。
コボルト型の身体の傷は次々に塞がるが、分身たちが新たに生み出す傷の数が僅かに上回っている。
やがて4人の分身の動きが苛烈さを増した。
剣舞の型が花鳥風月から迅雷風烈に変化したのだ。
まずコボルト型の両腕が斬り落とされた。
続いて両足の膝から下が、同時に斬り刻まれる。
コボルト型の身体が沈むが、なお驚異的な速度で再生を始める。
「「「「終わりだ!!」」」」
4人の分身の8本の三日月刀がコボルト型の胴体を斬り刻む。
支えを失い、コボルト型の頭部が床に転がった。
その時、床に転がる頭部をディオゲネスの隔離室が覆った。
ディオゲネスはそこへ、詠唱破棄による爆裂を5発撃ち込む。
コボルト型の頭部が完全に粉砕され、再生しつつあった身体全体も瘴気を残して消滅した。
アーシェラは3対の風精霊と共にゴブリン型を牽制しながら、風精火炎放射を巧みに操り、一行が敵に囲まれないように戦場を分断していた。
人狼がオーク型と対峙している。
オーク型の武器は巨大な鉄鎚であった。
オーク型が鉄鎚を力任せに振り下ろす。
人狼は飛び退くのではなく、むしろ前進して、相手の懐に飛び込むことで回避した。
そしてそのまま攻撃に転じる。
「餓狼爪襲乱舞!!」
人狼の音速の連撃がオーク型の右半身に向けて放たれる。
オーク型の鉄鎚を持つ右腕が切断され、さらに落ちる腕が木端微塵に斬り刻まれる。
苦痛の呻きを上げながらもオーク型は左手の大盾で人狼の身体を凪ぎ払う。
人狼はそれを飛び退いて躱した。
着地と同時に走り、オーク型の左手に回り込む。
「餓狼剣疾風乱舞!!!」
人狼の最高速の剣は、今や音速を遥かに上回っていた。
オーク型は自分が斬られていることにも気が付かず、大盾を振り上げた。
その手を振り下ろそうとした瞬間、身体中に走る無数の切り口が開き、身体が崩れ落ちる。
準備万端に待ち構えていたディオゲネスとアーシェラの視線が交わり、互いに静かに頷く。
「「風精炎獄陣!!」」
オーク型であった肉片の山が結界に覆われて焼き尽くされる。
鬼人はコボルト型と格闘を繰り広げていた。
籠手、憤怒の聖者は無数の鋭い鱗状の金属片によって構成されており、それは手の甲だけでなく内側にも敷き詰められている。
つまり憤怒の聖者は拳を握れば籠手にもなり、開けば手袋のようにものを掴むこともできる、言わば格闘用手袋であった。
そして今、スオウは頭上から振り下ろされた大剣を、いとも容易く左手で掴んで止めてしまった。
コボルト型は一瞬唖然として、すぐにそれを引き戻そうとしたが、鬼人は離さない。
鬼人はそのまま、大剣の剣身に右の拳を打ち込んだ。
大剣の剣身が粉々に粉砕される。
呆然と立ち尽くすコボルト型の顔面を、鬼人が力任せに殴り付けた。
憤怒の聖者の鱗は、鮫の歯のように接触面に喰らいつくため、拳はそのまま肉に食い込み、骨までも削り取ってしまう。
また、鬼人は憤怒の聖者の性能を最大限に活かすのが、虎爪と呼ばれる、文字通り獣の鉤爪のように指を曲げた掌低と貫手の中間のような手型であることに気付いていた。
鬼人が虎爪をコボルト型の喉に向けて放つ。
コボルト型の頸部の肉が半分近く抉り取られる。
驚くべきことに、コボルト型はそれでも怯まず、大盾で鬼人を殴り付ける。
鬼人はそれを左腕でガードし、コボルト型の左胸目掛けて右の虎爪を放った。
鬼人の右腕がコボルト型の左胸にずぶりと突き刺さる。
貫通した鬼人の右手にはコボルト型の心臓が握られていた。
鬼人は迷わずその腕を引き抜き、どす黒い血を拭き出す心臓を握り潰した。
コボルト型はなお、驚異的な速度で自己再生を開始する。
しかし鬼人もまた、怯まずに攻撃を繰り返す。
嵐のような暴力がコボルト型の肉体を破壊し尽くす。
「スオウ!止めは私たちが!」
ディオゲネスが叫ぶと同時に、鬼人が飛び退く。
「「風精炎獄陣!!」」
コボルト型の身体が結界内で地獄の業火に包まれる。
ヒューゴとレーナは可能態たちに取って、二本足で歩き回る死そのものに感じられたに違いない。
二人は戦場を縦横無尽に駆け巡り、王殺しの速弾きの追奏曲と駆逐者の速弾きの追奏曲を繰り出し続ける。
闘気によって巨大化し王殺しと化したヒューゴの愛剣、永劫回帰と刃を持つレーナの籠手、駆逐者の爪が一瞬にしてオーク型の身体を肉塊に変えてしまう。
英雄波動共振の効力によって、パーティー全体が互いの行動を、言わば以心伝心的に把握しつつあることに、ヒューゴは気付いていた。
ヒューゴとレーナがその場を離れると、バキエルが酸化還元反応弾発射器、化学的修道士で肉塊と化したオーク型を焼き尽くした。
続けて、ヒューゴとレーナはゴブリン型を強襲する。
ゴブリン型に反撃の余地はなかった。
ヒューゴとレーナの二人が舞うように自分の傍らを通り過ぎたと思った瞬間には、自分の身体が木端微塵に斬り刻まれているのである。
ゴブリン型もまた、酸化還元反応弾の火柱に焼き尽くされる。
続いて二人の犠牲になったのはコボルト型であった。
躊躇うことなく敵の肉体を破壊し尽くすことに特化されたヒューゴとレーナの連携攻撃は、この日以来、双子の死神と呼ばれることになった。




