アナザー・ワン・バイツ・ザ・ダスト
ウィ・ウィル・ロック・ユーに続いて、予てより使いたかった趣味丸出しのサブタイトルをやっと使うことができました。宜しければお楽しみください。
ダダダダダ、ダダダダダダダダダ……
バキエルが抱えた機関銃、塵から塵へから毎秒約15発もの魔弾が掃射され、冒険者たちによく似た魔物たちに死を撒き散らす。
後に一行は、その新種の魔物たちを冒険者もどきと呼ぶことにした。
ダダダダダダダダダ……
オーク騎士の頭が半分、連射される魔弾に削り取られらように消失する。
続けて、その横に立ち長剣を振り上げていたゴブリン剣士の右腕が、やはり魔弾に削り取られて消失する。
バキエルに向かって、複数のコボルト魔術師が同時に火球を放つ。
「チグリス!ユーフラテス!」
バキエルが叫ぶと、これまで空気に溶け込んでいたかのように、忽然と双魚宮のチグリスとユーフラテスがバキエルの両脇に姿を現した。
二人はそれぞれ左手を突き出して結界を展開する。
その結界がすべての火球を防いだ次の瞬間、二人は右手を魔術師たちに向かって伸ばす。
その手には小型拳銃、優しい悪魔が握られていた。
二丁の優しい悪魔から、立て続けに魔弾が発射されて、それぞれ魔術師たちの頭や心臓を撃ち抜く。
ヴォン!ヴォン!ヴォン!ヴォン!ヴォン!
双魚宮のチグリスとユーフラテスはウァサゴやグレモリーと違い、積極的に戦闘に参加するのであった。
もちろん、精霊としての能力は極限まで抑えて、バキエルの能力によって野蛮の園から召喚された、超古代文明の火器を用いて戦っているのではあるが。
それにしても、双魚宮のチグリスとユーフラテスの戦いには、まったく無駄がなかった。
必要最小限の動きで、最も効率よく魔物たちを滅ぼしていった。
グィードは2本の黒い虹を巧みに操りながら1体のゴブリン剣士を追い詰める。
剣士の右腕と首が同時に切断される。
その時、グィードの背後から2体のコボルト剣士が同時に斬り掛かった。
「「五月雨斬り!!」」
それは中級以上の剣士が操る片手剣による剣術系闘技であった。
グィードは咄嗟に振り返り、双剣でそれぞれの連続する斬撃を受け流した。
そしてグィードは、斬撃が止んだ一瞬の隙を見逃さなかった。
「死神の速弾き!!」
グィードは自身の剣速が明らかに向上していることを自覚していた。
亜音速の死神の大鎌が2体の剣士を斬り裂く。
人狼を4体のオーク騎士が取り囲んでいた。
4枚の大盾で巧みに人狼の動きを封じつつ、騎士たちは槍を振るう。
その時、人狼の真後ろに立つ騎士の手の中で槍が霞んだ。
「五月雨突き!!」
それは中級以上の騎士が操る槍術系闘技であった。
人狼は咄嗟に振り返り対応するが、背後から襲い来る高速の刺突に、無傷ではいられなかった。
高速の刺突を捌きながらも、人狼の全身から血が吹き出す。
「餓狼爪襲乱舞!!」
人狼は力業で包囲を突破しようと試みる。
闘技使用後の一瞬の隙に陥った騎士に音速の剛剣を叩き込んだのだ。
騎士の大盾を持つ腕が痺れ、堪らず打ち上げられる。
そのがら空きになった胴体が人狼の大剣、偉大なる破壊者に真一文字に切断される。
人狼の全身の傷はすでに塞がっている。
人狼は振り返って残された3体の騎士に斬り掛かる。
「餓狼剣疾風乱舞!!!」
偉大なる破壊者が3体の騎士を斬り刻んだ。
グィードによって四神相応と名付けられた4人の分身による華麗な連携攻撃がオーク騎士とゴブリン剣士からなる十数体の群れを追い詰めていた。
しかしその中にも、中級以上の闘技を操る冒険者もどきが含まれていた。
「五月雨斬り!!」
長剣による高速の斬撃が、
「五月雨突き!!」
槍による高速の刺突が、
「骨砕き!!」
連接棍棒による強烈な打撃が、
「十文字斬り!!」
大剣による変則的二段斬りが、4人それぞれの分身に向かって放たれた。
しかし4人の分身は、皆それを予測して、一瞬早く明鏡止水の構えを取っていた。
鮮やかな反撃によって、冒険者もどきたちの腕や首が、ほぼ同時に切断されて宙を舞った。
恐るべき剣舞、四神相応の冴えであった。
鬼人は颶風の如く戦場を駆けていた。
籠手、憤怒の聖者を装備したことで、鬼人の拳と手刀、貫手と掌低の威力は格段に上がっていた。
それらの攻撃全体に刺突と斬撃的な傾向が増大していると言える。
つまりこれまでの打撃と衝撃による破壊傾向が、貫通と切断による破壊傾向により傾いたのだ。
それはすなわち、敵の身体を欠損させる攻撃傾向が増大したことを意味している。
鬼人が通った後には魔物の腕や首が宙に舞い、床に落ちた。
とは言え、それらのほとんどは一瞬後には本体の消滅に合わせて雲散霧消してしまうのであるが。
また鬼人には、さらに大きな変化が起こっていた。
それは鬼人の行使する神通力が、火球のみに留まらず鎌鼬と岩石の槍も加わっていたことであった。
ヒューゴから金色の光とともに特別な力が流れ込んできた時、鬼人にはある予感があった。
それは自分自身の中の鬼人が大きく成長したという予感である。
鬼人自身にはわからないことであるが、鬼人化した現在のスオウの外見は、以前のものとは微妙に変化していた。
容貌の凶暴さが抑えられ、穏やかさと利知性が備わっていた。
また肉体は以前よりもさらに巨大になっていた。
全体として鬼人に似てきているとも言える。
鬼人の拳から立て続けに火球が放たれ、コボルト魔術師の一群を壊滅させた。
鬼人は止まらずオーク騎士とゴブリン剣士の一群に突進する。
群れの直前で鬼人が床に拳を叩きつけると、そこを起点に岩石の槍が発生して、騎士と剣士を次々に串刺しにする。
さらに鬼人が蹴りを放つと、鎌鼬が発生して生き残っていたものたちを切り裂いた。
アーシェラと3体の風精霊は四身一体となって、冒険者もどきたちを追い散らしていた。
アーシェラは同時にミスリルの精霊を召喚し、脆刃の剣の操作を委ねていた。
脆刃の剣は連接剣としての本領を発揮して、生きた蛇のようにアーシェラを取り囲み、攻めと守りを自在に繰り返していた。
すると見よ、なんと風精霊たちの細身の剣までもが連接剣として鞭のような形状を取っていた。
精霊の形態は召喚者のイメージを具現化したものとなるのだと、アーシェラは以前、レーナに語ったことがあった。
もはやアーシェラの風精霊は、身体が透き通って見えることを除けば、アーシェラの分身そのものであった。
ヒューゴとレーナもまた、今や二身一体となって戦場を駆け巡っていた。
ヒューゴの身体からはレーナに向かって金色の光が流れ込み続けていた。
「王殺しの速弾きの追奏曲!!!」
ヒューゴの亜音速の連撃が、次々に冒険者もどきたちを斬り裂く。
「駆逐者の速弾きの追奏曲!!!」
レーナの連撃もまた、ヒューゴに引き寄せられるように亜音速に達する。
「「恋人たちの二重奏!!!」」
もはや冒険者もどきたちに、この二人を止めることはできなかった。
ディオゲネスは十の戒めと三位一体を駆使して、自身に殺到する冒険者もどきたちを完全に制圧していた。
オートヴィル城地下における魔神兵装との戦闘においてすでに証明された通り、隔離室は攻撃魔法を使う敵に対して絶大な威力を発揮する。
すなわち、敵の魔法を蓄積して、それをそのまま敵への攻撃に転用可能な攻防一体の闘技なのであった。
バキエルは一行の戦う姿を、感動を持って眺めていた。
この冒険者たちは驚くほど強い。
そして、一行と共に戦っている自分自身の内側からも、かつてない喜びと力が沸き上がってくる。
バキエルに取っては、この程度の戦闘は遊技に過ぎない。
いつかこの一行のために全力を発揮して戦ってみたいものだと、バキエルは夢想していた。
ダダダダダ、ダダダダダダダダダ……
バキエルの塵から塵へから魔弾が掃射される。
ダダダダダダダダダ……
バキエルの身体全体に心地好い振動が伝わる。
塵から塵へ。
冒険者もどきたちは、次々に雲散霧消していった。




