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オートヴィル城の戦い

久しぶりの対集団戦です。できればパーティーメンバー全体を大活躍させたいのですが、なかなか難しいです。今回大人しめだったキャラは、またいつか活躍させたいと思います。

 グィードが可能態人鼠兵デュナミス・ウェアラットと呼ばれた魔物の群れを見回す。

 その身体はやはり竜のような鱗に覆われ、ほとんどの個体は長剣(ブロードソード)大盾(ラージシールド)を装備していたが、一部には(スピアー)を武器としているものもいた。

 グィードは各自の構えが訓練を受けた兵士のそれであることを見て取った。

 「こいつらは強い!全力で行くぞ!」

 グィードが叫んだ。

 ディオゲネスは夢見る兵士(アーミードリーマーズ)をパーティーに付与する。

 その直後、グィードも詠唱を開始している。

 「大いなる教導者よ(ラー・シード・)忘却の(ウルム・)彼方より来たりて(ハーディーン・)汝の剣を我に示せ(スィ・ナーン)!」

 グィードの愛剣、黒い虹(ブラックレインボー)が二つに分かれる。

 「死神の大鎌(デスサイズ)狂詩曲(ラプソディー)!!!」

 グィードの双剣の剣身が巨大化して、周囲に殺到する人鼠兵(ウェアラット)に襲い掛かる。

 だが、人鼠兵(ウェアラット)の反応は素早かった。

 あるものは跳躍して斬撃を躱した。

 またあるものは大盾(ラージシールド)を構えて防いだ。

 盾で防いだものたちは弾き飛ばされはしたが、当然、致命傷は受けていない。

 跳躍したものはそのまま攻撃に転じる。

 グィードの頭上から、三本の長剣(ブロードソード)と二本の(スピアー)が同時に襲い掛かる。

 グィードの身体が急旋回を開始する。

 「死神の大鎌(デスサイズ)輪舞(ロンド)!!!」

 グィードの身体が二本の刃を持つ黒い竜巻と化す。

 空中からグィードに襲い掛かった五体の人鼠兵(ウェアラット)が弾き飛ばされる。

 黒い竜巻は止まらず、そのまま人鼠兵(ウェアラット)の群れに突入する。


 アルフォンスが獣人化(メタモルフォーゼ)を開始する。

 人狼(アルフォンス)は走りながら、アダマンチウム製の大剣(クレイモア)偉大なる破壊者ザ・グレート・デストロイヤーを水平に構え、身体を回転させながら薙ぎ払った。

 「餓狼大車輪(がろうだいしゃりん)!!」

 その破壊力は凄まじく、何体かの人鼠兵(ウェアラット)大盾(ラージシールド)ごと胴体を斬り裂かれていた。

 だが消滅はせず、再生を始めている。

 人狼(アルフォンス)の身体が回転を止めると、人鼠兵(ウェアラット)の群れが殺到した。

 人狼(アルフォンス)は正面に走る。

 正面には(スピアー)を手に突進してくる人鼠兵(ウェアラット)がいたが、人狼(アルフォンス)はその(スピアー)大剣(クレイモア)で払い除け、走り抜けざまにその胴体を真一文字に斬る。

 そして人狼(アルフォンス)は振り返り、直前に自分を取り囲もうとしていた人鼠兵(ウェアラット)の群れに向けて偉大なる破壊者ザ・グレート・デストロイヤーを振るった。

 これまでの大剣(クレイモア)であれば間合いが遠すぎる。

 人狼(アルフォンス)は柄の仕掛けを操作した。

 その時、偉大なる破壊者ザ・グレート・デストロイヤーの剣身が鞭のようにしなりながら伸びた。

 ドワーフの名匠ヴォルカスの手による連接剣の本領が発揮されたのだ。

 その剣身はあたかも生き物のように、言うなれば巨大なムカデのように、一体の人鼠兵(ウェアラット)に襲い掛かった。

 剣身を伸ばした偉大なる破壊者ザ・グレート・デストロイヤーの初撃は、その先端部分による刺突であり、一体の人鼠兵(ウェアラット)の額を貫いた。

 額を貫かれた人鼠兵(ウェアラット)が雲散霧消した。

 どうやら人鼠兵(ウェアラット)の自己再生能力は邪妖精(ウィキッドフェアリー)型の可能態(デュナミス)ほどは強力ではないようだった。

 剣身の動きは止まらず、そのすぐ横に立つ人鼠兵(ウェアラット)の首に巻き付き、人狼(アルフォンス)が柄の仕掛けを再び操作すると、伸びた剣身が巻き戻され、その首を切断して大剣(クレイモア)の形に戻った。

 首を切断された人鼠兵(ウェアラット)もまた消滅した。

 「みんな、頭を狙うんだ!」

 人狼(アルフォンス)が叫んだ。

 連接剣を扱うのは初めてのことであったが、アルフォンスは白兵戦を専門とする冒険者の嗜みとして、鞭を含めた大抵の接近戦用の武器を、人並み以上に扱うことができるように、かつて王都(アラヴァスタ)の修練場で訓練を受けていたのだ。

 さらにこの時、人狼(アルフォンス)には偉大なる破壊者ザ・グレート・デストロイヤーが本当の鞭のように軽く感じられていた。

 じつはこの時、ウァサゴがかつてアルフォンスの装備全体に施し、また剣が変わる度に再度施し続けて来た重量操作を解いていたのだ。

 しかもウァサゴは持ち前のサービス精神を発揮して、当初は二倍の重さであった負荷を最終的には五倍の重さにまで勝手に増大していたのだ。

 そのことに、アルフォンスはまったく気づいていなかったが、先ほど獣人化(メタモルフォーゼ)した瞬間から、自分の身体が驚くほど身軽になったことを感じていた。

 そして偉大なる破壊者ザ・グレート・デストロイヤーもまた、棒切れのように軽く振るうことができた。

 この時、人狼(アルフォンス)の通常の斬撃が、軽く音速を超えていた。


 この時、ウアサゴの重量操作の解除はヒューゴにも変化をもたらしていた。

 ヒューゴは自分の身体が羽のように軽く、また翼を持ったように自由自在に動くことを、感動を持って味わっていた。

 ヒューゴのオリハルコン製の愛剣、願望(ウィッシュ)が虹色の光を反射させながら、人鼠兵(ウェアラット)たちの大盾(ラージシールド)さえ、紙切れのように斬り裂いていた。

 それは単なる願望(ウィッシュ)の切れ味の鋭さというだけではなく、ヒューゴの剣技が、その特性を存分に引き出していたのである。

 この時ヒューゴの剣速は、グィードのそれを超えていた。

 「王殺しの(バルムンク・)速弾きの(シュレッド・)追奏曲(カノン)!!!」

 ヒューゴの亜音速の連撃が、次々に人鼠兵(ウェアラット)たちを斬り裂いていた。

 そしてその傍らにはレーナの姿がある。

 レーナは数秒、ヒューゴの急激な成長に呆然としていた。

 最近では、やっと着いて行くことができるようになったと自分の成長に自信を持ち始めていたのだ。

 だが今また、大きく置いてけぼりを食ってしまった。

 レーナはそう考えながらも、必死にヒューゴに着いて行こうと努力する。

 「駆逐者の(ルイナー・)速弾きの(シュレッド・)追奏曲(カノン)!!!」

 そうしてヒューゴの傍らで戦っていると、不思議な現象が起こった。

 ヒューゴの身体からレーナの身体に、光のようなものが流れ込むのがレーナの目には、はっきりと見えていた。

 するとレーナの身体の中から不思議な力が溢れ出て、身体が加速していることを感じた。

 二人の連携攻撃、恋人たちの二重奏(ブライトン・ロック)能力強化(バフ)効果が均等にではなく、レーナに対してより強く働いているのであった。

 その二人の姿を見て、スオウは胸を躍らせていた。

 もはや二人は自分の援護を必要とはしていない。

 だが、だからこそ全力で二人に寄り添って戦うことができる。

 「ヒューゴ、レーナ、俺の鬼人の宴(オウガバトル)を見てくれ!」

 そう叫んで、スオウは内なる鬼の力を解放した。

 スオウの肉体が、大きく膨らんだ。

 額の角が伸び、犬歯が剥き出し、スオウの顔が醜く歪む。

 だがその顔は笑っている。

 グゥアオォォォォォォォォ!!

 鬼人(スオウ)が、歓喜の咆哮を放った。 


 ムスターファの有り余る戯言モア・オブ・ザット・ジャズは対集団戦においてこそ、その真価を発揮する。

 かつてグィードがフダラクに伝わる4柱の軍神に例えた、まったく特性の異なる戦闘法で戦う四人の卓越した戦士が、完全に同調(シンクロ)して四方から魔物の群れを追い詰める。

 その闘法をグィードは後に四神相応(しじんそうおう)と名付けた。

 

 ディオゲネスもまた、混戦をこそ自分のフィールドであると感じていた。

 今、ディオゲネスの周囲には十の戒め(テンコマンドメンツ)で敵から奪った十枚の大盾(ラージシールド)が展開していた。

 ディオゲネスはその一枚一枚を自由自在に操ることができた。

 四枚の大盾(ラージシールド)はディオゲネスを取り囲むように高速回転を続けていた。

 残りの六枚をディオゲネスは攻撃に用いていた。

 攻撃とは言っても、盾で殴り付けるような打撃であるから致命傷を与えることはできない。

 ただ、一気に複数の相手を転倒させたり、戦闘能力を奪うことができた。

 そしてディオゲネスの本当の攻撃は三位一体(トリニティ)による爆裂(エクスプロージョン)真空の刃(エアカッター)氷の槍(アイスランス)という三種の強力な重複魔法であった。


 アーシェラは風精火炎放射(シルフィーフレイム)を使って敵を誘導して、見事に一行に有利な状況を作り出していた。

 そしてアーシェラ自身は、いつものように三体の風精霊(シルフ)と共にヴォルカス特製の細身の剣(レイピア)脆刃の剣(ザ・フラジャイル)を振るっていた。


 アルフォンスの叫びで敵の弱点が頭だとわかると、一行は次々に敵の数を減らして行った。

 グィードはヒューゴや仲間たちの戦いを見て、もはや彼らが自分と同等かそれ以上の力を持っていることに気づいていた。

 「このままじゃ年長者としての立つ瀬がないな」

 そうつぶやきながらもグィードは、嬉しそうに美髯を撫でていた。

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