再戦ゴグとマゴグ
作者は楽しんで書いた戦闘シーンです。宜しければご一緒にお楽しみください。
邪妖精の群れは、もはや当初の半数も残っていなかった。
また、多くの将軍クラスを失い、軍隊としては瓦解寸前のような状態であることをグィードは悟っていた。
グィードが一同にそのことを伝えようとしたその時、ゴブリンの王とオークの王が戦場に姿を現した。
「ちっ、やはり出て来たか」
グィードはつぶやいた。
「さすがにグィードでも、独りでは倒しきれませんでしたか?」
傍らに立つアルフォンスがグィードに尋ねた。
アルフォンスは、一端獣人化を解いていた。
「ああ、彼奴らは驚異的な自己再生能力を持っていやがる」
グィードが答える。
「そうですか。ディオゲネスがいないのが痛いですね」
そうアルフォンスが口にした時、背後から育ちの良さそうな、おっとりとした声がした。
「お待たせしました。なんとか私の出番には間に合ったようですね」
それはディオゲネスであった。
解放されたオーデンセの人々を人鬼の里まで送り届け、再び転移結界、時空の扉を使って帰ってきたのだ。
「話は聞いていたな?」
グィードがディオゲネスに尋ねる。
「ええ、自己再生能力を持っているということでしたね」
「ああ、確実に葬るにはウァサゴの時に使ったアーシェラとの合成魔法が手っ取り早い」
「風精炎獄陣ね」
いつの間にか歩み寄っていたアーシェラが言った。
「その名前、覚えていてくれたんですね?」
ディオゲネスがアーシェラをからかうように言った。
「私の技能でもあるからよ」
「はい。私たちの技能です」
「まずは俺とアルフォンスが彼奴らを戦闘不能になるまで斬り刻む。そうしたら炎獄陣で焼き尽くしてくれ。できれば両方とも逃がさずに今仕留めたい。二つ同時に発動できるか?」
「無論です」
「私も問題ないわ」
「では決まりだな。ムスターファ!スオウ!ヒューゴ!レーナ!デカイの二体は俺たちに任せろ!雑魚どもの掃討は、おまえたちに任せたぞ!」
グィードが一同に聞こえるように大声で叫んだ。
「了解した!」
分身の一人が兵士ゴブリン一体を斬り伏せながら答えた。
「おう、任せろ!」
スオウもまた、群がる兵士コボルトの攻撃を捌きながら答える。
ヒューゴとレーナは連携しつつ、次々に兵士クラスを葬りながら黙って頷いた。
その二人の姿を見て、まったく逞しくなったものだとグィードは感心する。
「では行くぞ!アルフォンス!」
グィードがアルフォンスに呼び掛ける。
「おう!」
アルフォンスが威勢良く応じる。
ディオゲネスが夢見る兵士を一行に付与する。
一行の全身は青白い光に包まれる。
アルフォンスはゴブリンの王に向かって走りながら、再び獣人化を開始する。
ゴブリンの王は自分に向かって突進してくる人狼に向かって斬馬刀を振り降ろす。
人狼がそれを大剣で受ける。
ガシン!
ゴブリンの王の膂力は人狼とほぼ同等であった。
人狼が少し腰を落とした。
「ウオォォォォリャァァァォア!!」
人狼が渾身の力を込めて斬馬刀を打ち上げる。
そしてそのまま身体を旋回させた。
「餓狼大車輪!!」
人狼の大剣がゴブリンの王の腹部を斬り裂く。
しかし、その傷口はすぐに塞がってしまう。
ゴブリンの王の顔が醜く歪み、斬馬刀の石突きをアルフォンスの顔面目掛けて走らせる。
アルフォンスは一端飛び退いて、それを躱す。
「なかなか手強い」
人狼は素直に認める。
「だが、これで終わらせる」
そう言って人狼は 大剣を振り上げつつゴブリンの王に突進する。
「餓狼剣疾風乱舞!!!」
ゴブリンの王は人狼の剣を防ごうと斬馬刀を構えるが、それは無駄であった。
人狼の音速の剣は一撃で斬馬刀を打ち上げ、そのまま胴体に向かう。
キィィィィィィィン!!
という甲高い音と共に、焦げ臭さが周囲の空間に満ちる。
グァァァァァァァァァァ!!
グィードはオークの王に向かって走る。
「大いなる教導者よ、忘却の彼方より来たりて、汝の剣を我に示せ!」
走るグィードの手の中で愛剣が二つに分かれる!
「死神の大鎌・狂詩曲!!!」
グィードの両手から二振りの死神の大鎌が延びる。
オークの王は頭上で連接棍棒の先端を回転させている。
遠心力を溜め込んだ連接棍棒の一撃がグィードに襲い掛かる。
グィードは跳躍してそれを躱す。
グィードが一瞬前まで立っていた大地に、連接棍棒の尖端が深くめり込む。
オークの王はそれをすぐに振り上げ、空中で身動きの取れないグィードに向けて、第二撃を放つ。
グィードはそれを双剣をクロスして防ぐ。
ガキィィィィン!
金属と金属のぶつかるけたたましい音が辺りに響きわたる。
グィードは反動で後方に飛ばされ、そのまま着地する。
「やるなぁ、だがこれならどうだ?」
グィードはそう言って一瞬目を閉じて意識を集中する。
オークの王は次撃に備えて、再び頭上で連接棍棒の先端を回転させている。
「死神の大鎌・交響曲!!!」
双剣を構えたグィードの身体が四人に分かれる。
実際には、超高速移動と静止を繰り返すことによって生まれる残像であるが、それを目撃している者には、実際に四人のグィードが存在しているようにしか見えない。
四人のグィードがオークの王を四方から取り囲む。
オークの王が右正面に立つ分身に連接棍棒の攻撃を放つ。
しかし、その尖端は、静かに分身の身体に吸い込まれる。
それは残像であるのだから当然なのだが、オークの王にはそれが理解できない。
オークの王は次々に分身に攻撃を放つが、そのすべてが虚しく分身の身体に吸い込まれる。
やがてオークの王は恐慌状態に陥ったように連接棍棒を出鱈目に振り回し始める。
「「「「終わりだな」」」」
四人の分身が同時に口にする。
「「「「死神による速弾きの追奏曲!!!」」」」
四人の分身がオークの王に殺到し、八本の死神の大鎌が全身を斬り刻む。
グァァァァァァァァァァ!!!
ゴブリンの王が人狼の音速剣に斬り刻まれ、オークの王が四人の分身に斬り刻まれて戦闘不能に陥ったことを確認すると、ディオゲネスはそれぞれの王をすっぽりと覆うように巨大な結界を展開した。
人狼と分身は一斉に飛び退く。
アーシェラはすでに目を閉じて意識を集中している。
そして目開けて、両手をそれぞれの王に向かって翳すと口を開いた。
「風精炎獄陣!!!」
二つの結界の中に地獄の業火が満ちた。
それは、ウァサゴを倒したときよりも明らかに威力を増していた。
結界の中で、二人の王の肉体は再生を繰り返すが、細胞が燃える速度にまったく追い付かず、最終的には消し炭となり雲散霧消した。
グィードが辺りを眺めると周囲の戦闘も完全に掃討戦に移行していた。
アルフォンスもすでに獣人化を解いている。
「これでゴブリンの王とオークの王は倒したが、コボルトの王は取り逃がした。偉大ならネズミの王も行方知れずのまま。前途多難だな」
グィードがアルフォンスに声を掛けた。
「ええ、ですが今回も俺たちは生き残りました」
アルフォンスがそう答えた。
「そうだな。さて、俺たちも掃討戦を手伝うとするか?」
言い終えると同時に、グィードはすでに走り出していた。
アルフォンスもグィードに続いて走り出した。




