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深淵の決戦

作中の連携攻撃はRPGなどでいうところのパーティー効果に似た効力も持ちますが、ただ一緒にいれば自動的に発生するのではなく、戦闘中に同調率が上がったときに発動するものだとご理解ください。

 救出されたオーデンセの人々とディオゲネスを人鬼の里に送り出したアルフォンスたちは、今や完全に戦闘態勢を整えて、決戦の時を待っていた。

 するとアルフォンスの目に、グィードとスオウとムスターファの三人が走って城門を飛び出してくるのが目に入った。

 「グィード、お帰り!」

 ヒューゴはそう言って、手にした愛剣(ウィッシュ)を高らかに上げた。

 「ヒューゴ!どうしておまえ、それを?」

 さすがのグィードも驚いた様子であった。

 「うん、ウァサゴが城の中で拾ったんだって!」

 それを聞いてグィードは、またあいつがなにかをしやがったのかと一瞬怒りが湧いたが、まあ、結果として悪いことではないので怒りを一端収めることにした。

 「ふうっ。そうか、それは良かったなぁ!ところで解放されたオーデンセの住民はどうなった?」

 「それはもう大丈夫です!ディオゲネスが人鬼の里に転移させましたから!」

 アルフォンスが答えた。 

 「そうか、その手があったか!でもクレナイたちはなんて言うだろうな?」

 「ええ、そこはディオゲネスに任せました」

 アルフォンスは苦笑いをしながら答えた。

 「まあ、なにも取って食べたりはしないだろうから大丈夫か?」

 そう言ってグィードも苦笑いを浮かべた。

 「それよりも、追手がもう追いついて来たようですよ!」

 「よし、それじゃあいよいよ大決戦と行くか!」

 グィードはそう言って、城門を振り返った。

 城門から夥しい数の邪妖精(ウィキッドフェアリー)の群れが溢れ出してくる。

 ムスターファもスオウも、再び臨戦態勢をとっている。

 先制攻撃を仕掛けたのはアーシェラであった。

 ディオゲネスのいない今、パーティーで唯一の魔法職である自分の役割を、アーシェラははっきりと自覚していた。

 「風精火炎放射(シルフィーフレイム)!!」

 瞬間的に魔物の群れの頭上に三組の風精霊(シルフ)火蜥蜴(サラマンダー)のペアが召喚され、押し寄せる魔物の群れの先頭集団に暴風によって強化された業火を放射する。

 百体近い魔物たちが一斉に火だるまになって地面をのたうち回る。

 やがて炎の猛攻を潜りぬけて来た魔物の群れが、アルフォンスたち前衛のもとまで押し寄せて来た。

 アルフォンスは大剣(クレイモア)を振るいながら、獣人化(メタモルフォーゼ)を始めている。

 アルフォンスは、以前よりも獣人化(メタモルフォーゼ)が速やかに行われ、正気で戦える時間も飛躍的に長くなってきていることに気付いた。

 そしてそれは、人間の状態における彼自身の能力が大きく成長していることと関わっていることを、はっきりと感じていた。

 「餓狼剣疾風乱舞がろうけんしっぷうらんぶ!!!」

 人狼(アルフォンス)の音速剣が群がる兵士(ソルジャー)ゴブリンたちを斬り裂いた。

 音速剣を振るう人狼(アルフォンス)の前に、将軍(ジェネラル)オークが立ちはだかり、戦斧を振り下ろした。

 人狼(アルフォンス)はそれを大剣(クレイモア)で弾く。

 ガキィィィィィィン!

 人狼(アルフォンス)の腕がしびれる。

 しかし人狼(アルフォンス)は止まらない。

 もし止まれば、兵士(ソルジャー)ゴブリンたちが一斉に攻撃を仕掛けてくることがわかっているからだ。

 人狼(アルフォンス)大剣(クレイモア)を地面と水平にして構えて身体を回転させる。

 グィードの輪舞(ロンド)を応用したのだ。

 グイードほどの爆発的な回転力はないが将軍(ジェネラル)オークの胴体を輪切りにするには充分であった。

 「餓狼大車輪(がろうだいしゃりん)だ!」

 人狼(アルフォンス)がそう名付けた瞬間から、聖霊の加護がその新技能(スキル)に働く。

 人狼(アルフォンス)の回転速度が上がり、群がる兵士(ソルジャー)ゴブリンたちの胴体や首をも水平に斬り裂いていく。

 人狼(アルフォンス)から少し離れて、グィードが戦っていた。

 「死神による(デスサイズ・)速弾きの(シュレッド・)追奏曲(カノン)!!!」

 グィードが押し寄せる兵士(ソルジャー)コボルトたちを、次々に斬り捨てて行った。

 グィードは、ヒューゴから学んだその新技能(スキル)をかなり気に入っていた。

 理由は、その他の技能(スキル)と比較して体力の消耗が圧倒的に少ない上に、攻撃力が意外に高いからであった。

 つまり、使い勝手がいいのである。

 その上、愛息子のヒューゴが自分で編み出した技能(スキル)であったから、愛着もひとしおであった。

 ヒューゴは、グィードが自分と同じ技を使っているのを見て喜んだ。

 「よし、俺も行くぞ!王殺しの(バルムンク・)速弾きの(シュレッド・)追奏曲(カノン)!!!」

 ヒューゴのもとには兵士(ソルジャー)オークたちが群がっていた。

 そして、ヒューゴの傍らにはレーナがいた。

 「心臓を(シアー・ハート)一突き(・アタック)!!」

 レーナの修験者(モンク)としての実力もまた、明らかに急成長していた。

 (ナイン・インチ)(・ネイルズ)(ネイル)は強化されたコボルダイトの鎧をも軽々と貫通する。

 ヒューゴとレーナが共闘しているだけで恋人たちの二重奏(ブライトン・ロック)は自動的に発動する。

 二人の身体能力(フィジカル)が飛躍的に上昇して行く。

 またレーナが回復系の神聖魔法(ホーリーマジック)を習得したことに伴い、恋人たちの二重奏(ブライトン・ロック)には自然治癒(ヒーリング)の特殊効果が付与されていた。

 二人はもう、大人たちに守られるような頼りない存在ではなくなっていた。

 スオウもまた、ヒューゴとレーナの傍らで戦っていた。

 鬼功法(きこうほう)によるスオウの戦闘スタイルが、ヒューゴとレーナの二人と相性が良いことに気付いていたからである。

 二人がいかに急激に成長したとは言っても純粋な戦闘者としての実力では、まだスオウに分があった。

 そこでスオウは、無意識のうちに二人の隙をフォローするような戦い方を身につけていた。

 そしてこの戦闘において、この三人の連携攻撃が完成された。

 グィードはそれを善良なる隣人(グッドカンパニー)と名付けた。

 善良なる隣人(グッドカンパニー)には恋人たちの二重奏(ブライトン・ロック)と同等の能力強化(バフ)自然治癒(ヒーリング)に加えて、スオウの鬼功による敵への弱体化(デバフ)と弱点探査能力が共有されることとなった。

 つまり、善良なる隣人(グッドカンパニー)発動中には、ヒューゴとレーナの通常攻撃にも鬼功による弱体化(デバフ)効果が付与され、またスオウが鬼功によって得た敵の弱点情報などが瞬時に三人に共有されるのである。

 そして早くもヒューゴは善良なる隣人(グッドカンパニー)の効果を実感しつつあった。

 敵の弱点や傷を負っている部位に黒い影のようなものが見えるようになったのである。

 当然、レーナにも同じものが見えるようになり心臓を(シアー・ハート)一突き(・アタック)の使い勝手も向上した。

 つまり心臓以外の敵の弱点が可視化されたことによって、その弱点部位への攻撃によっても致命的なダメージを与えやすくなったのである。

 アーシェラは、今は風精火炎放射(シルフィーフレイム)を魔物の群れの側面に向けて発動しながら、自らいつも通り三体の風精霊(シルフ)を召喚して、白兵戦にも加わっていた。

 アーシェラの風精霊(シルフ)たちは、ますますアーシェラに似てきているとヒューゴは感じていた。

 ムスターファはすでに有り余る戯言モア・オブ・ザット・ジャズを発動して、その圧倒的な戦闘能力で戦場を席巻していた。

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