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邪妖精の森

血湧き肉踊る戦闘シーンをお送りします。果たして成功しているでしょうか?宜しくお願いします。

 鳥女(ハルピュイア)の群れを撃破した一行は、あの城のある森を目指した。

 あれから魔物とは遭遇していなかった。

 魔物たちの本拠地だからと言って、際限なく魔物が襲い掛かって来る訳ではないことがわかり、一行はひと安心した。

 グィードの予想通り地下世界には昼も夜もないらしく、一行の時間の感覚は早くも乱れ始めていた。

 森まであと一息というところまで来た時、レーナの顔に疲労と眠気を感じ取ったアーシェラが、一行に提案した。

 「多分もう真夜中を過ぎているはずよ。そろそろ野営をしましょう」

 「そうだね。俺ももうヘトヘトだよ」

 ヒューゴもそれに同意した。

 一行はすぐに野営の準備に取り掛かった。

 レーナとヒューゴを先に休ませ、大人たちは現在の状況を整理するために話し合う。

 スオウは見張りを自ら買って出た。

 グレモリーはムスターファの三日月刀(シャムシール)の中に戻り、ウァサゴもまた、いつの間にか姿を消していた。

 「果たしてオーデンセから攫われた人々は、この地下世界まで連れて来られているのでしょうか?」

 ディオゲネスが、そう疑問を口にした。

 「それはどうだろうな。だが、これまでは街の外でコソコソとしてやがったのに、突然ギルドの支部もあるオーデンセに堂々とやって来たってのが少し気になる。俺たちを誘っているような気がしてならない」

 グィードが答える。

 「じつは私もそれを考えていました。街から逃げ出す時にも、空間転移を用いるのであれば、別に南門から出る必要もなかったはずです。あれは私たちをコーサラ砂漠へ誘導するために、敢えてそうしたのではないでしょうか?」

 「だとすると、すでにコボルトの廃坑を封印している俺たちが地下世界の存在に気付いていて、今回はここまでやって来ることを奴らが予想していたとしても不思議じゃないな」

 「ところで、俺たちが動き出す前にも奴らが人間を攫っていた目的はなんだと思う?」

 「それが私にもさっぱり、なにかの儀式を行っていたらしいという話でしたが」

 「魔王(アルヴァーン)復活の儀式とかじゃないんだろうな?」

 「私も最初はそう思ったのですが、そんなことなら世界は、もっと大変なことになっていると思います。助け出された人々の話では、すでに何度か儀式は行われていたと言っていました」

 「その儀式に使われた人間たちはどうなったんだ、皆殺しか?」

 グィードが深刻な表情を浮かべて尋ねた。

 「それもなんとも言えません。ただ、あの洞窟の中で、それほどの血生臭さは感じませんでした」

 「あの洞窟は、ただ人間を収容しておくことが目的で、儀式自体は別の施設で行っていたのかも知れない」

 アルフォンスが、そう自分の考えを口にした。

 「その可能性も、充分にあります」

 「結局、わからないことばかりのようだな」

 ムスターファが静かに笑いながら言った。

 「いずれにせよ、今の俺たちにできることは、あの森の中の城を探索することくらいだ。汝の最も手近にある義務を果たせってやつだ」

 グィードがそうまとめた。

 「それは、()の大賢者メルキオルの言葉ですね」

 ディオゲネスが、すかさず指摘した。

 「そうだったか?そいつは知らなかったが、良い言葉だよな。それを続けている限り、人間は決して行き詰まることがない。そう思わないか?」

 その言葉を聞いて、一同はグィードという人間の本質に触れたような気がした。

 「本当にその通りですね」

 ディオゲネスが心から納得するように答えた。

 それから一行は、見張りを交代しながら仮眠を取った。


 翌朝、と言っても昼も夜もない世界なのだが、一同が目覚めるとウァサゴがすでに朝食の準備を万端に整えていた。

 「いつもありがとう、助かるよ」

 ヒューゴがウァサゴに感謝を述べる。

 ウァサゴは美しく微笑みながら、恭しく答える。

 「礼など不要です。ほんの趣味でしていることですから」

 食事が済むと、一行は早速森の中に入った。

 森の中には様々な生き物の気配があった。

 地下世界には、魔物以外にも野生の動物がいるようであった。

 「まったくこの地下世界は、いったい、いつからこうして存在していたのでしょうか?」

 ディオゲネスが独り言のように言った。

 「創世神話の時代から、この世界は存在しています」

 ウァサゴが当たり前のことのように答えた。

 「ウァサゴはこの地下世界にも来たことがあるんだ?」

 ヒューゴが驚いたように尋ねた。

 「遥か昔のことです。それがいったいどれほど昔のことなのか、私にも思い出せないほど昔の」

 それだけ言うと、ウァサゴは黙り込んだ。

 その時、一行の先頭からアルフォンスが叫んだ。

 「どうやら、ゆっくりと話をしている暇はなさそうだ!」

 「邪妖精(ウィキッドフェアリー)の群れだ!トロールも混ざっているぞ!」

 ムスターファも双刀を構えながら叫んだ。

 「こいつはなかなかの大群だ!全力で行くぞ!」

 その数およそ千体、皆コボルダイト製の装備を身に着けていた。

 ディオゲネスが夢見る兵士(アーミードリーマーズ)をパーティー全体に施す。

 一同の全身と武器が、青白い光に包まれた。

 アルフォンスの獣人化(メタモルフォーゼ)が始まる。

 「餓狼剣疾風乱舞がろうけんしっぷうらんぶ!!!」

 人狼(アルフォンス)の音速の剣が、魔物の群れを紙切れのように斬り刻む。

 ムスターファはそれを見て、さすがに驚くが、動揺までは見せなかった。そして笑いながら叫んだ。

 「ようし、俺のとっておきも見せてやろう!有り余る戯言モア・オブ・ザット・ジャズだ!」

 そう叫んだムスターファのシルエットが、一瞬揺らいだかと思うと、まず二つに分かれ、次いでその二つがさらに二つに分かれた。

 四人のムスターファが、それぞれ二本の三日月刀(シャムシール)を変幻自在に操りながら、次々に魔物たちを滅ぼして行く。

 それが幻影などではなく、正真正銘の分身であることにグィードは気付いた。

 そしてそれこそが、ムスターファがグレモリーの加護によって得た、特別な能力であることは疑いようがなかった。

 なぜならばそれは人間の努力や工夫によって、なんとかなる種類のものではなかったからである。

 グィードは、ムスターファのそれとは根本的に異なるものであることを認めながらも、同じコンセプトの戦闘技能(スキル)を用いることにした。

 「大いなる教導者よ(ラー・シード・)忘却の(ウルム・)彼方より来たりて(ハーディーン・)汝の剣を我に示せ(スィ・ナーン)!」

 グィードの手の中で、愛剣黒い虹(ブラックレインボー)が二つに別れる。

 「死神の大鎌(デスサイズ)狂詩曲(ラプソディー)、からの交響曲(シンフォニー)!!!」

 その瞬間、双剣を持ったグィードの身体が四体に分かれる。

 こちらは高速移動と静止の連続による残像であったが、それを目撃する者にとっては分身していることに変わりはない。

 その瞬間、八人の卓越した剣士が、十六本の武器を手に死を振り撒いていたのである。

 後にこの二人の連携技は、放浪者のための狂詩曲ボヘミアン・ラプソディーと名付けられた。

 この二人の剣士の圧倒的な力量と迫力に目を奪われながらも、一行は戦い続ける。

 「王殺し(バルムンク)の速弾き(・シュレッド)!!」

 「心臓を(シアー・ハート)一突き(・アタック)!!」

 「「恋人たちの二重奏(ブライトン・ロック)!!!!」」

 ヒューゴとレーナの息は完全に一致している。

 その二人をフォローするように、スオウは体術を駆使している。

 スオウはいつの間にか、仲間をサポートする戦い方を身に着けていた。

 ディオゲネスは、十の戒め(テンコマンドメンツ)によって魔物たちを翻弄しつつ、三位一体(トリニティ)に、爆裂(エクスプロージョン)真空の刃(エアカッター)氷の槍(アイスランス)という三種の重複魔法を閉じ込め、一気に解放することで膨大な量の死を産み出していた。

 アーシェラは、風精火炎放射(シルフィーフレイム)を展開しつつ、同時に三体の風精霊(シルフ)を召喚して、自らは細身の剣(レイピア)を振るっていた。

 驚くべきことに、その瞬間アーシェラは、六体の風精霊(シルフ)と三体の火蜥蜴(サラマンダー)を同時に召喚し、使役していたのである。

 そして、いつものようにアーシェラに付き従う三体の風精霊(シルフ)たちもまた、今やアーシェラの分身かのように良く似た姿で、細身の剣(レイピア)を振るって魔物たちを斬り裂いていた。

 もはやこのパーティーには、千の敵も驚異とはならないようであった。

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