オウガバトル
待ちに待った(作者が)、オウガバトルをお届けします。ご一緒にお楽しみ頂ければ幸いです。
宣言とともに、クレナイの鬼人化が始まった。
クレナイの肉体が、一回り大きく膨らむ。
全身の筋肉が異状に発達し、額の角が突き出し、手足の爪も伸びる。
犬歯が剥き出し、顔が醜く歪む。
しかしその顔には、恍惚の表情が浮かんでいる。
グゥアオォォォォォォォォ!!
クレナイであったものが、獣の如き咆哮を放った。
その咆哮に呼応するかのように、他の人鬼たちの変化も始まった。
その変身が終わるまで、グィードたち一行のうち、誰一人動こうとはしなかった。
ネズミたちさえも動けなかった。
その凄まじい光景に気圧されていたのである。
変身が完了した直後、鬼人は跳んだ。
その跳躍は、鬼人の巨体を、軽々と母屋の屋根の上にまで導いた。
怪鳥が地に降り立ったかのような、静かな着地であった。
やっと正気を取り戻した屋根の上の巨大ネズミたちが、鬼人に殺到する。
鬼人が軽く腕を振るい、蹴りをはなつと、数十体にも及ぶ巨大ネズミの群れが吹き飛ばされ、落下し、多くのものはそのまま雲散霧消した。
鬼人は、巨大ネズミの群れに突っ込んだ。
鬼人の異状に長く伸びた爪に、巨大ネズミたちは紙切れのように引き裂かれて行った。
鬼人と鬼人もまた、それぞれ別々の方向に走り、巨大ネズミたちを次々に打ち倒した。
彼らが拳を突き出し、蹴りを放つ度に、複数の巨大ネズミたちが吹き飛び、あるものは樹木に激突し、絶命した。
巨大ネズミたちは、鬼人と鬼人であれば、組みし易いと誤解したのであろうか。
多くの巨大ネズミたちが、二人に殺到した。
その愚か者どもは、まもなく己れの愚かさを、死をもって償うことになった。
鬼人の手刀は、軽々と愚か者どもの首を飛ばした。
鬼人の抜き手は、愚か者の心臓を貫いた。
鬼人たちの手足は、文字通り凶器であり、軽く触れるだけで、巨大ネズミたちの肉体を破壊し、消滅させて行った。
鬼人は、まもなく屋根上の襲撃者たちを、殲滅しようとしていた。
グィードたち一行も、数秒遅れて戦線に加わる。
「死神の大鎌・輪舞!!!」
黒い竜巻と化したグィードが、巨大ネズミの群れを削り取る。
アルフォンスもまた、すでに獣人化していた。
「餓狼爪襲乱舞!!!」
人狼は大剣を右手で振るい、同時に左手の鋭い爪でも、敵を引き裂いている。
ヒューゴもまた、長剣の一薙ぎで、複数の敵の胴体を両断していた。
長剣の切れ味も然ることながら、ヒューゴの膂力も増しているのである。
ディオゲネスはいつの間にか、十を越える監禁者を、同時に扱えるようにまでなっていた。
ディオゲネスに殺到する襲撃者たちは、一様に動きを封じられ、詠唱破棄によるエアカッターによって切り裂かれた。
アーシェラは、風精火炎放射を連続して発動していた。
レーナもまた、心臓を一突きによって、次々に襲い掛かる敵に、安らかなる死をもたらし続けていた。
しかし巨大ネズミたちは、限りなく、潮のごとくに押し寄せていた。
このままではジリ貧だと、グィードが考えを巡らせ始めた時、鬼人たちの戦い方に変化が現れた。
まず動いたのは、鬼人であった。
屋根上の襲撃者たちを殲滅した鬼人が、屋根から飛び降り、地上に降り立つと同時に、拳で大地を思い切り突いた。
すると大地がひび割れ、そこから巨大な岩石の槍がいくつも盛り上がり、その延長線上にいる巨大ネズミたちを串刺しにした。
「神通力か!」
グィードが思い出したように叫んだ。
鬼人が、右手を巨大ネズミの群れに向け、何かを念じるように目を閉じると、巨大な火球が出現した。
鬼人が右手を天に掲げると、火球はそれに従って頭上に移動した。
鬼人がそのまま、まるで岩でも投げるように腕を振り降ろすと、火球は真っ直ぐに進み、延長線上にいる巨大ネズミの群れを焼き払った。
鬼人化した人鬼は神通力と呼ばれる、超自然的な力を行使する。
グィードはそれを、やっと思い出したのであった。
鬼人も、鬼人には及ばないながら、同様に大地の槍を呼び出し、敵を滅ぼしていた。
鬼人は、拳大の火球を連発していた。
鬼人と鬼人は、蹴り足から、それぞれ大小の鎌鼬を放っていた。
グィードが続けて観察していると、鬼人と鬼人は三種全ての神通力を、自由自在に駆使していた。
その他の者たちには、得手と不得手が有るのだということが解った。
それにしても、鬼人と鬼人の強さはずば抜けていた。
この二人に任せておけば、まもなく敵を掃討してしまうに違いないと、グィードには思われた。
鬼人の蹴りが、巨大な鎌鼬を生み出し、数十体の巨大ネズミが切り裂かれ、消滅する。
鬼人もまた、大地を打ち、巨大な岩石の槍を呼び出して、群がる巨大ネズミを次々に串刺しにする。
そして、二人が同時に放った巨大な火球が延長線上で交わり、より巨大な火球となって爆発する。
そんなことが、数回に渡って繰り返された頃、戦闘はやっと終局に向かいつつあった。
グィードたち一行も、疲弊しつつあった。
アルフォンスも獣人化を、すでに解除している。
長い一日が終わろうとしていた。
グィードたち一行は、鬼人の宴の凄まじさを心と目に、しっかりと刻み付けていた。




