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冒険者登録

やっとヒューゴとレーナが正式に冒険者になることができました。これからの2人の成長に期待します。特にレーナの成長に、ご期待ください。よろしくお願いします。

 野営地を襲った魔物を退けると、アーシェラの風精霊(シルフ)を見張りに立てて、一行は速やかに床についた。

 翌朝一行は、ウァサゴの用意した焼き立てのパンと、カリカリに焼いたベーコンと目玉焼きの朝食を済ませ、何処からか取り出した粉砕機(ミル)を使い、ウァサゴが目の前で挽いたコーヒーを堪能してから、オーデンセに向けて出発した。

 ご丁寧なことにヒューゴとレーナのコーヒーには、ミルクと砂糖がたっぷり入っていた。

 またアーシェラのためには、フェイジョアの他、数種のフルーツも用意されていた。

 かつては世界中を旅して回り、その後には長年酒場の主人をしていたグィードは、それらの食材がすべて一流の品であることに気づいていた。

 その日の午前は何事もなく、旅は順調に進み、やがてオーデンセの街の入口が、一行の目に見えて来た。 

 太陽は中天近くまで来ていた。

 「さあ、まずは宿屋へ行って昼食(めし)にしよう。ギルドはその後だ」

 グィードが一行に告げた。

 街の入口の左右には、槍を持った警備の兵士が二人立っていた。

 オーデンセは、大陸(アルヴァニア)北東辺境のこの地域では最大の街であり、冒険者ギルドの支部も置かれる中核都市である。

 ヒューゴとレーナにとっては、初めての都会であった。

 とは言え、王都やその他の大都市を知るグィードやアルフォンスたちにとっては、どうしても、いわゆる田舎の街という印象が(ぬぐ)えない。

 いずれにしても、ヒューゴとレーナの目には、見るものすべてが新しかった。

 冒険者ギルドが置かれる街らしく、街の往来には、多くの冒険者たちの姿もあった。

 また、ノエルやグレンナでは、店舗と言えば鍛冶屋や雑貨屋などが、それぞれ一件ずつあっただけであったが、オーデンセには武器や防具の専門店や、一般の雑貨屋の他に、冒険者向けの道具や、魔法の品を取り扱っている店までもが、複数存在していた。

 看板や建物の色も様々で、これまで大自然に囲まれて生活をしてきたヒューゴやレーナにとっては、まるで別世界に来たかのような感動を与えた。

 ヒューゴとレーナがワクワクとしながら、店の看板や陳列にキョロキョロとしていると、アルフォンスが声を掛けた。

 「あの角にある宿屋炎の蛙(ファイヤーフロッグス)で、ハインツたちが待っているはずだ。買い物は後にして、今はそちらへ急ごう」

 昨日、廃坑に入る前に別れたハインツたちと、情報共有のために、念のため待ち合わせをしておいたのだ。

 待ち合わせと言っても、それほど堅苦しいものではなく、折角知り合いになれたのだから、同じ街にいる間に一度くらいは一緒に食事をしようという程度の軽い約束であった。

 かくして、グィードたち一行が店に入ると、すでに昨夜のうちに到着していたハインツたちが、声を掛けて来た。

 「皆さん、ご無事で何よりです」

 ハインツが言った。

 グィードたちの実力は知っていたが、一端迷宮(ダンジョン)に入れば、何が起こるかわからない、というのが冒険者たちの共通認識であった。

 「ああ、ハインツたちも、無事に街までたどり着いていたようで何よりだ」

 アルフォンスが答える。

 アルフォンスとハインツは、ちょうど兄弟のような年齢差であり、ほんのわずかなやり取りであったが、ハインツはアルフォンスを慕っていた。

 ここのところ、大先輩であり、個性の強いグィードの陰に隠れがちであるが、アルフォンスには、確かにパーティーのリーダーに相応しい、求心力と鷹揚さが備わっていた。

 一行は共に席に着き、食事を注文する。

 「それで、ギルドは廃坑について、なにか言っていたか?」

 グィードがハインツに尋ねる。

 「ええ、近日中に調査隊を組織して調査を開始すると言っていました」

 その必要はなくなったことを、後でギルドに伝えなければと、アルフォンスは頭の隅に記憶した。

 「誘拐事件については、なにか?」

 その被害者でもあるレーナが、深刻な顔で尋ねる。

 「はい、その件についてはギルドもすでに把握していて、調査隊を募集している最中のようです」

 レーナと共に魔物に捕らわれていた助祭(クレリック)のフェルナンドが、レーナを安心させようと答えた。

 「そうですか。よかった」

 レーナは答えたが、実際に偉大なるネズミの王(グレイトキングラット)を目撃しているその他の者たちは、それが一筋縄では行かない事案であることを認識していた。

 一通り情報交換が済むと、一行は雑談を交えながら食事を楽しみ、互いの無事を願いながら別れた。

 「ではいよいよ、冒険者ギルドへ行くとするか」

 アルフォンスが、ヒューゴとレーナの方を見ながら言った。

 すると二人の目が、期待に輝いた。

 いよいよ冒険者として職業(ジョブ)を持ち、聖霊の加護を受けた英雄への第一歩を、歩み出すことができるのだ。

 冒険者ギルドの建物は、街の中心部にあり、その一階には、新人の登録や転職を申請する窓口の他に、一般的な依頼や報酬授受のための窓口が置かれていた。

 そこで一行は二手に分かれる。

 アルフォンスたち三人はギルド本部への報告のために、三階にある支部長(ギルドマスター)の執務室を訪問する。

 その間に、グィードが付き添いとしてヒューゴとレーナの登録手続きを行うことにした。

 ウァサゴは当然、ヒューゴに付き添っていたが、ギルドに出入りする冒険者たちの中に、僅かながら、ウァサゴの容姿と異様な雰囲気に反応する者があり、グィードは気まずさを感じた。

 「ウァサゴ、おまえは街では目立ちすぎる。ちょっと町の外で待ってろ」

 グィードにそう言われて、一瞬ウァサゴは不本意そうな顔をしたが、ヒューゴにもそうした方がいいと言われて、渋々承知した。

 「仕方ありません。承知しました」

 そう言って、ギルドを出ていった。

 すると一分も経たずに、黒い美しい毛並みの猫が、堂々とギルドの入口を通ってやって来て、受付の列に並ぶヒューゴの足元に()り寄った。

 グィードたち三人には、それが明らかにウァサゴであることが解った。

 グィードとヒューゴは顔を見合わせて苦笑いをしたが、レーナはすぐに、黒猫(ウァサゴ)を抱き上げて言った。

 「かわいい。あなたはずっと、この姿でいるべきだわ」

 黒猫(ウァサゴ)は甘えるように、ミャーと一声鳴いた。

 受付はそれほど込んではおらず、すぐにヒューゴたちの番がやって来た。

 黒猫(ウァサゴ)は図々しくも、カウンターに上って、喉を鳴らした。

 受付の若い娘が、黒猫(ウァサゴ)を見て笑顔を見せる。

 「この二人の登録をしたいのだが」

 グィードが受付の娘に言った。

 「かしこまりました。冒険者の方の付き添いがある場合には、そちらの方のお名前も伺うことになっておりますので、皆さんのお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

 「ああ、俺はグィード。それでこっちがヒューゴで、こっちはレーナだ」

 「ありがとうございます。それではグィード様の手を、こちらの冒険者台帳(マグナ・カルタ)の上に(かざ)して頂いてもよろしいでしょうか」

 グィードは言われた通りにする。

 冒険者台帳(マグナ・カルタ)とは、冒険者ギルドという組織の根幹をなすもので、その原本(オリジナル)は、王都(アラヴァスタ)の冒険者ギルド本部の地下に、厳重に保管されている。

 各支部には、その複製(レプリカ)が置かれ、支部の建物自体に施された特殊な魔法と連動されることで初めて、その効果を発動する。

 つまり、たとえ複製(レプリカ)だけが何者かに奪われても、基本的には、それを悪用することができないように設計されているのである。

 なぜそこまで厳重に管理されているのかと言えば、冒険者台帳(マグナ・カルタ)は、四百年前の魔王戦役終結後に、あの伝説の六英雄たちによって開発された神秘の遺物(アーティファクト)であり、これによって、この世界(ザラトゥストラ)に存在するすべての冒険者の名前や能力が、管理されているからである。

 つまり、もしこれが悪用されれば、世界の力の均衡が崩れ、大きな戦乱につながる可能性さえあるのだ。

 そこで、すべての複製(レプリカ)には、建物との連動以外にも、何重もの魔法による封印が施されているのであった。

 グィードが冒険者台帳(マグナ・カルタ)から手を挙げると、これまで白紙であったページに、グィードの名前と職業、そして大雑把な区分による冒険者としてのランクが表示される。


 名前:グィード

 職業(ジョブ)暗殺者(アサシン)

 ランク:SS


 受付の娘は、まずは自分の目を疑い、続いて冒険者台帳(マグナ・カルタ)とグィードの顔を、何度も見比べた。

 グィードは自慢の美髯を撫でながら、ニヤニヤとしている。

 「大丈夫だ、その情報で間違いない」

 娘がオーデンセの冒険者ギルドで働き始めて、今年で三年目であったが、Aランク以上の冒険者を見るのは初めてのことであった。

 「あ、ありがとうございます」

 娘は急に緊張して、声が震え出した。

 「リラックスしてくれ、俺はただの気のいいオヤジに過ぎない」

 「はい。かしこまりました。そ、それでは、まずはヒューゴ様のお名前をこちらにご記入ください」

 娘は緊張に震える手で、冒険者台帳(マグナ・カルタ)と専用の魔法ペンを、ヒューゴに差し出す。

 ヒューゴもまた、緊張した面持ちで、自分の名前を書き込む。

 「続いて、こちらに希望の職業(ジョブ)をご記入ください」

 通常、新人が冒険者として登録する際には、まず仮登録をし、初心者用の依頼を一件(こな)した上で本登録となるのだが、Aランク以上の冒険者が立会人となる場合、直ちに本登録をすることが可能となる。

 ヒューゴは職業(ジョブ)の欄に、盗賊(スカウト)と書き込む。

 すると数秒遅れて、ランクの欄に文字が浮かび上がった。

 B

 「ほう」

 グィードが感心した声を上げた。

 それを見て、受付の娘は再び自分の目を疑った。

 通常、新人の冒険者のランクはEランクから始まる。

 時々、才能に恵まれた者や街の兵士や狩人などとして経験を積んだ者が、最初からDランクやCランクで登録されることもある。

 しかしBランクと言えば、通常10年近い経験を積んだ熟練者となって初めて到達するランクであり、大多数の冒険者たちはBランク止まりで、その上に行ける者は一部の選ばれた者たちだけなのだ。

 この一行は特別なのだと娘は判断し、自分を納得させる。

 「あ、ありがとうございます。それではレーナ様もこちらにお願いします」

 娘はレーナにも、記入を促した。


 名前:レーナ

 職業(ジョブ)修験者(モンク)

 ランク:E


 娘はそれを見て、ほっとした。

 「ありがとうございました。これで手続きは終わりです。どうか人々のために尽くす、良い冒険者になってください。創造主(ル・カイン)と聖霊の祝福が、豊かにありますように」

 娘は定例の文言として、なんとかそれだけを告げて深く頭を下げた。

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