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技能命名

スキル名をつけるのも難しいですね。とにかく頑張りました。お楽しみください。

 修練場での戦闘が終結すると、一行は間もなく鍛冶場を目指すことにした。

 鍛冶場へ向かって歩きながら、グィードが先程までの戦闘を振り返って話し始めた。

 「アーシェラもディオゲネスも、なかなか面白い戦い方をしていたなぁ」

 「グィードのアイデアを転用させて貰ったのよ」

 アーシェラが冷静に答えた。

 「私もです。防御用のものとばかり思っていた結界魔法に、まさかあんな使い方があったとは、目から鱗が落ちたようでした」

 ディオゲネスは少し興奮ぎみに答える。

 「そうか、それはよかった。二人の成長のお役に立てたようで光栄だな。あれは昔の仲間が使っていた連携魔法を、俺なりにアレンジしてみただけなんだが。それをさらに自分なりにアレンジできるというのは、やはりおまえたちの実力だ。流石(さすが)最上級職(マスタークラス)というところだな」

 「いえいえ、それほどでも」

 ディオゲネスが、満更(まんざら)でもないという面持ちで答える。

 「ところで、二人はまだあの技能(スキル)に、名前を着けていないんじゃないか?」

 「そうか、忘れていました!」

 ディオゲネスが、うっかりしていたという様子で答える。

 「技能(スキル)に名前を付ける必要があるの?」

 アーシェラは、不思議そうに尋ねる。

 「そうですか、アーシェラは知らなかったのですね。私たちのような最上級職(マスタークラス)の冒険者は、オリジナルの技能(スキル)を開発して命名することで、その技能(スキル)自体に聖霊の加護を受けることができるんですよ」

 そもそもエルフの冒険者の能力は、創造主(ル・カイン)によって種族や個人ごとに生来(せいらい)与えられている特性=賜物(ギフト)によるところが大きいため、聖霊の加護を軽視する傾向がある。特にアーシェラは賜物(ギフト)に恵まれているために、その傾向は更に強かったのだ。

 「それで、技能(スキル)に加護を受けるとどうなるの?」

 「加護の内容は様々ですが、基本的には技能(スキル)発動までの行程(プロセス)が簡略化、あるいは短縮されることや、技能(スキル)効果が強化されることが多いですね」

 「勉強になったわ。ありがとうディオゲネス」

 アーシェラは、あまり関心もなさそうに答えた。

 しかしディオゲネスは、それを気にした様子もなく続ける。

 「そうですねぇ、アーシェラの新技能(スキル)の名前は、風精火炎放射(シルフィーフレイム)というのはどうでしょう?」

 アーシェスが、きょとんとした顔でディオゲネスを見つめる。

 「ああ、私はそういうのは必要ないわ」

 一瞬の沈黙の後、アーシェラが答える。

 「対ウァサゴ戦の時に二人で発動した技能(スキル)は、風精炎獄陣(シルフィーバースト)にしましょう」

 ディオゲネスは、勝手に話を進めている。

 「ディオゲネス、私の話を聞いているかしら?」

 「私の捕縛用の結界は、監禁者(クローサー)と名付けることにします」

 アーシェラは、ディオゲネスが自分の話をまったく聞かないので諦めることにした。

 「もう勝手にして」

 二人の会話に興味津々で耳を傾けていたヒューゴが、目を輝かせながらグィードの顔を見つめて言った。

 「ねえグィード。俺にもそういうやつ、なにか欲しいんだけど」

 「うーん、そうだなぁ。おまえの連撃の速さは、確かに大したものだからなぁ」

 グィードは一瞬考えてから、思いついたように口を開いた。

 「速弾き(シュレッド)、なんてのはどうだ」

 グィードが髯を撫でながら答える。

 「速弾き(シュレッド)かぁ。いいね、カッコいいよ。これから俺の連撃は速弾き(シュレッド)と呼ぶことにしよう!」

 ヒューゴが意気揚々と答える。

 ヒューゴはまだ、正式な冒険者としての登録さえしていなかったので、速弾き(シュレッド)に聖霊の加護が与えられることはなかった。

 しかしこの瞬間から、ヒューゴの高速の連撃、速弾き(シュレッド)の上に、ウァサゴの加護が加わることになったのを気付いた者は誰もいなかった。

 そうこうしているうちに、一行は最初に二手に別れた、横穴の並ぶ部屋までたどり着いていた。

 その部屋に着くと、グィードがおもむろに話し始めた。

 「いくら魔物と言っても、鍛冶場で作業をしている奴らに突然襲い掛かるというは、あまり気持ちがいいもんではないよなぁ」

 皆の視線が、グィードに集まる。

 グイード以外の者も、皆同じ気持ちであったのだ。

 「そこでだ、ヒューゴ。ここはおまえの出番だ。おまえはこれから一人で鍛冶場まで行って、コボルトたちを挑発して、ここまで誘導してこい」

 「ええ、なんで俺がぁ?」

 「おまえがその役割に一番適しているからだよ」

 確かに、グィードやアルフォンスが行っては、相手を怯えさせて、逆に閉じ籠られてしまう可能性があった。

 また、他の者の中では、逃げ足が一番早いのは、間違いなくヒューゴであった。

 「うーん、わかったよ。あまり気は進まないけど、やってみるよ」

 そう言うと、ヒューゴは覚悟を決めたように頷き、一人で鍛冶場に続く横穴へと入って行った。

 

 間もなくヒューゴは鍛冶場の入り口前に到着した。

 辺りを見回して、手ごろな石を三つばかり拾い上げる。

 深呼吸をして、ヒューゴは拾い上げた石を、次々と鍛冶場で働くコボルトに向って投げる。

 ゴツンッ!ゴツンッ!ゴツンッ!

 投げた石の三つすべてが、それぞれ三体のコボルトの頭に、見事に命中した。

 「やーい!悔しかったらここまでおいでー!」

 ヒューゴは、絵に描いたような(おとり)役のセリフを叫んで、尻を三回叩いて見せた。

 果たして上手く行くだろうかと、ヒューゴが心配する間もなく、コボルトたちは怒りの声を上げ、ハンマーや打ち掛けの剣など、それぞれ手元にある武器になるものを掴んで、ヒューゴに向って猛進してきた。

 「やばいっ」

 そうつぶやくが早いか、ヒューゴは全速力で来た道を引き返した。

 一瞬立ち止まり、振り返ってコボルトたちが凄まじい形相で追って来るのを確認する。

 確かに、ヒューゴの逃げ足は天下一品であり、追いつかれる心配はなさそうであった。

 ヒューゴは再び走り出し、すぐにグィードたちの待ち受ける部屋までたどり着いた。

 「どうだ、うまく行ったか?」

 グィードが訪ねる。

 「ばっちり!」

 ヒューゴは右手の親指を立てて、作戦成功のサインを送る。

 「よし、おまえも戦闘の準備だ!」

 そう言ってグィードは愛剣(ブラックファントム)を構える。

 アルフォンスもすでに、大剣(クレイモア)を抜いて構えていた。

 ヒューゴも息を整え、長剣(ブロードソード)を抜く。

 非戦闘員のコボルトがおよそ三十体、対するは、かつて死の天使(アズラーイール)と恐れられた暗殺者(アサシン)剣豪(ソードマスター)、そして、(たぐ)(まれ)なる才能に恵まれた少年剣士、勝負は一瞬で着いた。

 今回は、アーシェラとディオゲネスの出番はない。

 レーナはウァサゴとともに、部屋の隅で戦いを見守っていた。

 果たして、私は今、夢を見ているのだろうか。

 レーナはそんなことを考えていた。

 昨日の夜までは、まさか自分がヒューゴと共に、そしてグィードやその他の卓越した冒険者たちと共に、このように危険な迷宮(ダンジョン)を探索することになるとは、想像もしていなかった。

 しかし、これは夢ではなかった。

 偉大なる創造主(ル・カイン)と聖霊は、長年のレーナの祈りを聞き届けて、幼馴染みのヒューゴと共に、司祭(プリースト)になるための旅をすることを許してくださったのだ。

 今はまだ、なにもできない自分であるが、いつかはヒューゴの横に、胸を張って立つことができる立派な司祭(プリースト)になりたい。

 レーナはこの時、改めて、そう決心したのであった。

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