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オーデンセへの道での寄り道

今回はウァサゴでやや遊びすぎた感もありますが、とにかくウァサゴはちょっとずれていてなんでもありな感じにしたかったので、まあ良かったかなぁとも思っています。

ご意見をお待ちしています。

 グレンナからオーデンセまでは、一人乗りの乗馬であれば一日で十分移動可能な距離であったが、今回は皆二人乗りであり、乗馬に慣れていないヒューゴとレーナが一緒であったから途中で野営をする予定であった。

 グレンナを出発してから数時間は何事もなく時間が過ぎた。

 ヒューゴとレーナの負担にならないようにと、また何よりも馬が疲れ果ててしまわないように適宜休憩を取りながら旅を続け太陽が中天に差し掛かった頃、一行の先頭を走っていたアルフォンスが叫んだ。

 「前方で冒険者が魔物と戦っているようだ」

 「どうやら俺たちがまったく知らない連中というわけでは無いようだ」

 グィードが言った。

 この時アルフォンスはグィードの視力が常人を遥かに凌いでいることに気づいた。

 「確かハインツと言ったか、グレンナでレーナたちの護衛を引き受けていた連中みたいだ」

 そう会話しながらも一行は、その戦闘地域に近づきつつあった。

 だがアルフォンスには、まだ冒険者たちの顔までは判別できなかった。

 恐らくグィードはアルフォンスよりも早く、その戦闘に気づいていたはずであるが、敢えて口にする必要はないと判断していたのであろう。

 もっと言えば、ウァサゴはグィードよりも早く気づいていたはずであったが、やはり必要以上に干渉することを避けているようだ。

 グィードが敢えてその戦闘をパーティーに報せなかった理由はアルフォンスにも解った。

 一行が現場に到着する頃には戦闘は終結していたのだ。

 「よう、ハインツだったか?おまえらもオーデンセに向かっていたのか?」

 グィードが気安く声を掛けた。

 「ああ、だれかと思えばグィードさんたちでしたか。ええ、我々はもともとオーデンセのギルドを中心に活動しているので」

 ハインツは馬上から答えた。

 ちょうど剣を鞘に収めたところだった。

 「そうだったのか、それにしてもこんな街道のど真ん中でコボルトなんぞに襲われるとは災難だったなぁ?」

 「はい、以前はこんなところにまで魔物が現れることは無かったんですが」

 冒険者たちは一様に不吉なものを感じていた。

 特に洞窟で偉大なるネズミの王(グレイトキングラット)に遭遇した者たちはいっそう深刻な表情になった。

 「まあ、それはさておき、コボルトたちはここで待ち伏せをしていたのか?」

 「ええ、じつはそうなんですが、どうしてそれを?」

 「ああ、おまえたちは馬に乗ったまま戦っていただろ、そうでもなければ徒歩のコボルトどもとおまえたちが戦闘になるはずがないからな」

 確かにその通りであったが、それをほんの数十秒、それも遠くから戦闘を目撃しただけで推測してしまうグィードは、やはり並外れた冒険者であるとアルフォンスは改めて実感した。

 「ということは、この近くにコボルトどもの住処か活動拠点があると見て間違いないな。このままじゃ、他の冒険者や旅人たちにも被害が出る。そうなる前に、俺たちが一肌脱ぐとするか?」

 グィードが髯を撫でながらアルフォンスに言った。

 ああ、これがグィードの魅力なのだとアルフォンスは思わずにいられない。

 冒険を好み、困っている人間を放っておけない。

 そして自分は、彼の望みを叶えずにはいられない。

 恐らく、パーティーの他のメンバーたちも同じ気持ちだろう。

 「そうね。ぜひそうしましょう」

 アーシェラがいち早く同意を表明した。

 「私も賛成です。人助けが冒険者の仕事みたいなものですからね」

 ディオゲネスもそれに同意する。

 「そうだな、そうするとしよう」

 アルフォンスも言う。

 「ところで、おまえたちがこの辺りを中心に活動していると言うのなら、コボルトどもの住処に心当たりはないか?」

 グィードがハインツたちの方を見ながら訪ねる。

 すると、確かレーナと一緒に魔物にとらわれていた盗賊(スカウト)のアロンゾが口を開いた。

 「ここから少し北にある廃坑がそうなんじゃないか?」

 「多分そうね、間違いないと思うわ」

 そう言って肯定したのは魔術師(ソーサラー)のアメリアだった。

 「よし、それじゃあ早速、俺たちをそこまで案内してくれ」

 グィードが言った。

 グィードは迷わない。

 「ねえグィード。その前にお昼にしないかい?俺はもう腹ペコだよ」

 ヒューゴが言った。

 「おおそうか、もうそんな時間だったか」

 ヒューゴの一言で、一行はまず昼食を取ることにした。

 一同が街道の外れで車座になり荷物の中から携帯食糧を取り出すと、ウァサゴが突然、どこから取り出したのか巨大な風呂敷包みを円の中心に置いた。

 「幸運な皆さんには、私から特別な贈り物があります。そうりゃあ!」

 ウァサゴが意味不明な掛け声とともに風呂敷包みを開けると、なんとそこには湯気を上げるシチューがたっぷり入った大鍋と人数分の食器類、更には色とりどりの果物を詰め込んだ大きな籠が現れた。

 一同は驚きで声も出ない。

 「どうぞ遠慮なく、好きなだけ召し上がって下さい」

 ウァサゴが事も無げに言った。

 「じゃあ、遠慮なく頂こうかなぁ」

 そう言って、早速シチューの盛り付けを始めたのはレーナであった。

 ヒューゴは声も出せず、ただその様子をしばらく眺めていた。

 「うわぁ、これとっても美味しい!ヒューゴも食べてみてよ!」

 「え、ああ、そうだな」

 ヒューゴは、あっけにとられながらもなんとか返事をした。

 こうしてレーナの驚くばかりの適応力が判明したのであった。

 その後は皆ウァサゴのシチューに手をつけ、果物もたっぷりと頂いた。

 皆の食事が済むとウァサゴは風呂敷を閉じ、気づくと風呂敷自体もどこかへ消えていた。

 「そう言えば」とディオゲネスが語り出した。

 「あるおとぎ話の中に、砂漠で旅人に四十日に渡って豪華な食事を与え続ける精霊(ジン)の話がありますね。あれはまさかウァサゴのことだったのでしょうか?」

 「はて、何千年か前にそんなこともあったような気もしますが、ハッキリとは記憶にありません」

 ウァサゴはそう答えた。

 ハインツたち一行は、もう考えるのはやめにしていた。

 世の中には人間の理解の及ばない不思議なことがあるのだと、自分たちの心を無理矢理納得させることに成功したのだった。


 およそ二時間後、一行はハインツたちの案内によって街道北の廃坑に到着していた。

 「確かに魔物たちの気配があるな」

 グィードが一同を振り返りながら言った。

 「よし、行こう!コボルトどもをやっつけるんだ!」

 ヒューゴが張り切って言った。

 こうして、レーナにとっては初めての迷宮(ダンジョン)の攻略が始まろうとしていた。

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