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第七話 人魚姫③

 昨日見た絵画には、何も身につけて無い人魚が多かったんだけどな。

 ユラリの胸を押さえる布を見る。

 人魚には胸を見られると恥ずかしい、と言う気持ちはあるのだろうか。


 すぐ脇にエラがあるし、人間の胸とは色々と違うのかもしれない。

 そもそも母乳は出るのかな。

 私が胸だと思ってるだけで別の器官なのかも。


 胸だとしても人間のそれとは違うかもしれない。

 例えば乳首が無かったり、逆にたくさん付いてたり。


「ももかさん、今なにか失礼な事を考えてませんか?」


「そんなことないです」


 胸から目線を外しつつ答える。

 ならいいんですけど、ともの言いたげな目をしたユラリが言う。


「リトルマーメイドは貝殻をつけてた」


「ディズニー映画の?」


「はい。海の外に来るのが好きって、ユラリさんはアリエルみたいです」


「私は誰かに恋をした訳じゃないですけどね」


 笑いながら言う。ディズニーの映画も知ってるんだ。

 前に人間に会ったのは100年前って言ってたけど、どうやって見たんだろう。


「世界中を回遊してる行商団が居るんです。たまにそこと娯楽品を交換してます」


「回遊する行商団……この田舎の海でそんなことが起きてたとは」


「ふふ、田舎なので、滅多に来ませんよ。数年に一回です」


「そこでリトルマーメイドも買ったんですか?」


「はい、人魚あるあるを見つけながら見るのは面白かったです」


 人魚姫の映画を人魚が見て人魚あるあるを見つける……楽しそうだ。


「元のお話の人魚姫と違って、王子さまと結ばれるハッピーエンドですよね」


「結末が違いますよね」


 ユラリはアンデルセンの人魚姫のお話も知ってるらしい。

 人魚界ではどっちが人気なのかな。


「泡になって消えちゃうし、最後まで王子は命の恩人を勘違いしてるし。原作はひどいバッドエンドだと思います」


「そうですね……私はハッピーエンドだと思います。王子さまとは結ばれませんけど、誰も不幸になってません」


 ユラリにはハッピーエンドの物語に感じたらしい。

 メリーバッドエンド。


 読み手によってハッピーエンドかバッドエンドか変わるお話。

 昨日知ったばかりの単語が頭に浮かぶ。


「仲間にナイフを渡された人魚姫は、王子を殺すこともできました。殺せば人魚に戻れたのにそうはしませんでした」


 ユラリが言う。


「王子の流した血で元に戻る魔法なんて、いかにも悪い魔女って感じです」


「確かに舌や髪を引き換えに魔法を使うのは少し気持ちが悪いと思います」


「人魚姫が可哀想です」


「人魚姫が選んだんですよ。自分の命よりも好きな人が出来て、幸せだと思います」


「そんなに好きな人が他の人と幸せに暮らすのを眺めるなんて、私なら耐えられません」


「ももかさんが人魚姫の立場なら、王子を殺しますか?」


 そう聞かれ、返答に詰まる。

 私が人魚姫なら、どうしただろうか。


 想像してみる。

 魔女に人間の足を貰い、王子に会いに行く。


 王子は他の女の人を命の恩人だと勘違いしている。

 王子とその人が結婚したら自分は死ぬ。


 王子と女性の婚姻が決まり、諦めかけた時に、お姉ちゃんにナイフを渡される。 


『これで王子を殺しなさい。その血を浴びれば、人魚に戻れるわ』

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