第四十話 おもちゃ①
「ただいまー」
自転車から降り、家に入った。
ゆうちゃんの持つ水色のクレヨンがふよふよと後を着いてくる。
「ゆうちゃん、ここが私が住んでるおうちです。私の部屋に案内するね」
履いていたビーチサンダルを脱ぎ、タオルで足を拭いた。
階段を登り、部屋に直行する。
「この部屋にあるものは好きに使っていいよ。私はちょっとお風呂に入ってくるね」
ゆうちゃんに伝えた。
水色のクレヨンが揺れる。
OKだな。
素直で手の掛からない子だ。
箪笥から着替えを取り出して、お風呂場に向かった。
「海水は乾くと気持ち悪いな」
Tシャツも短パンもその下の水着も全部脱いだ。
水着は一回濯がないといけないから浴室に投げ入れる。
他は洗濯籠に入れて、自分も浴室に入った。
暑いから水がいいな。
シャワーから水を出してかぶる。
「髪がキッシキシだ」
指が髪を通らない。
シャンプーもしないと元通りになりそうにないや。
洗面器に水を溜めて、先に水着を洗った。
細かい砂が出てくる。
「海の中だとこの砂も気にならないのにな」
水着の後は、頭と体も洗って、ようやく人心地が付いた。
水を浴びるだけにするつもりだったのに、結局普通に入っちゃった。
洗面台でドライヤーも当てて、スッキリした体で部屋に戻った。
◇
コンコンとノックする。
自分の部屋のドアを叩くのは変な感じだ。
「開けるよ?」
返答は聞こえないから、確認のために声をかけて扉を開けた。
誰も居ない部屋に見える。
ゆうちゃんがどこに居るのか分からない。
「ゆうちゃん、どこ?」
聞くと、学習机からトントンと音がした。
部屋を出るときには仕舞われてた椅子が、人が座って居る時と同じように机と距離を取っていた。
ゆうちゃんは机に座ってるみたい。
「見つけた!」
ゆうちゃんは机に座って、また絵を描いていた。
お絵かきが好きなんだな。
せっかく家に来てもらったし、おもちゃを色々見せてみよう。
ベッドの下のプラスチックの収納ケースを引っ張り出した。
この中には、今はもう使わない昔のおもちゃや、道具や、置き場に困ったお土産等が入ってる。
何でも収納箱。
私も何が入ってるか全部把握出来てない。
彫刻刀、家庭科で作ったナップザック、積み木、ブロック、ジェンガ、謎のパズル……色々あるな。
(私は5歳の頃、何をして遊んでたっけ)
ゆうちゃんが何を喜ぶのか分からないから自分の記憶を探るけど、何も思い出せない。
5歳の頃どうやって遊んでたかなんて、覚えてないな。
お姉ちゃんに聞いたら教えてくれるだろうけど、今は家に居ないみたいだ。




