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第四話 出会い④

 早朝に歌を歌って居たのは涼しいかららしい。

 海底の様子を話すユラリは楽しそうだ。

 お昼は暑くてかないません、と人間の様な事を言っている。


 確かに昼間に外を走る休日の練習はしんどい。

 水泳部が羨ましくなるし、服のままプールに飛び込みたくなる。


「そろそろ太陽が昇りますし、海に戻ろうと思います」 


 しばらく話した後、ユラリが言う。

 ユラリは海に向かって身を乗りだし、そのままドボン、と飛び込む。


 水を得た人魚が髪をなびかせる。

 気持ちいいー!と言いながら泳ぐ姿は100年以上生きてるとは思えない。


「もうそんな時間ですか…って、時間!?」


 腕時計を見ると時計はホームルームが始まる時間を指している。

 完全に遅刻だ。

 朝練もすっぽかしてしまった。


「ももかさんも泳ぎませんか?」


 ユラリが機嫌良く言う。

 魅力的な誘いだが今はとにかく早く学校に行かないと。


「ユラリさん、すみません、私もう学校に行かないと」


「そうですか~」


「明日も朝来るんで、良かったらまた会ってください!」


「ふふ、いいですよ」


 また明日!といいながら走り出す。

 堤防に止めた自転車に飛び乗り立ち漕ぎしながら学校に向かう。





「ももかー、ごはん食べよ」


 お昼休み、なっちゃんとりんごと机をくっつけてお弁当を広げる。

 卵焼きが入ってる、嬉しい。


「朝はどうしたの?遅刻なんて珍しいね」


 りんごが言う。

 高校に入ってから知り合った友達だ。


 頭がいい。

 よく勉強を教えてもらってる。


 遠くから電車を乗り継いで来てるらしい。

 髪を弄るのが趣味でよく変えてる。

 今日はおさげだ。


「朝から汗びっしょりでビックリしたよ。雨が降ってるんじゃないかって確認しちゃった」


 こっちはなっちゃん。

 中学から一緒。

 幼なじみ……とまではいかないのかな。

 なっちゃんは徒歩通学だから一緒に帰る日は二人乗りで帰ってる。


「あー、寝坊しちゃったんだよね」


 何となく朝の出来事を話さずごまかす。

 人魚なんて信じてもらえないだろうし。

 自分でもまだ朝にあった事が夢じゃないかと疑っている。


「ドンマイ」


「なっちゃんの言い方が冷たい」


「病気とかじゃなくて良かったよー」


 二人は幽霊や妖怪を信じる派かな?

 ちなみに私は居るかもしれないけど怖いから私の前には出てこないで派だ。

 ビビりなのである。


「ねえ、あのさ、妖怪とか、幽霊って見たことある?」


「幽霊?見たことないなー」

 と、りんご。


「私も。ホラー映画は好きだけど」

 と、なっちゃんが言う。


 二人とも見たこと無いんだ。

 そりゃそうだよね。


 私もユラリ以外に不思議現象にあったことは無いし。

 ちなみに、私がホラーが苦手になったのはなっちゃんのせい。

 頻繁にホラー鑑賞会をやるのだ。


 見てたら慣れるから、と言われたが一向に慣れなかった。

 挙げ句自分よりビビってる人が居ると安心するのよねと言っちゃうこの人は性格が悪いと思う。


「でもこの辺りって怪談は多いわよね」

 と、なっちゃん。


「なんか浜辺に出るって噂はあるらしいねー」

 りんごが相づちを打つ。


 実際に見たことは無いけど、確かに怪談は多い。

 山に落武者が出るらしい、とか、夜に神社への階段を昇りきると勝手に灯籠に灯がつくらしい、とか。


 ユラリと会った岬では車ごと乗っていた人が沈んで、全員死ぬ事件が起きている。

 ニュースでは一家心中と報じていた。


 ユラリと会ったのが夜だったら、怖くて逃げ出してたかもしれない。

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