第三十九話 ゆうちゃん⑩
ゆうちゃんと一緒に自転車まで行って、ゆうちゃんに荷台に乗ってもらった。
かばんからタオルを取り出し、軽く拭く。
拭かなくてももうほとんど乾いてるな。
夏休みでも、たまに人が来る位の砂浜には、更衣室やシャワーなんて気の利いたものはついてない。
家に帰ったら水浴びしなきゃ。
海水の塩で髪がガサガサだ。
そのあと、ユラリとみかこさんの所へ向かった。
「そうですね、それがいいと思います」
ゆうちゃんを家に連れていくつもりだ、と伝えるとユラリはそう言った。
「みかこさんの様子はどうですか?」
「泣いてます。みかこさんの中では、事故が起きてからほとんど時間が経ってないみたいです」
みかこさんの足元から水は湧き続けている。
1日で収まるんだろうか。
「一人にして大丈夫ですかね」
幽霊の単位って、人で良いのかな。
神様なら柱、死体なら体。
他に言い方を知らないや。
「太陽の光を浴びてますし、悪霊にはならないと思います」
「良かった」
「私もそろそろ海に戻らないといけませんし」
「そうですよね」
ここは砂浜で、何も日を遮る物がない。
日陰なら少しはましだろうけど、海の中で暮らす人魚にこの日差しはきついはずだ。
人間の私も眩しいもの。
砂浜に置きっぱなしにしていたTシャツと短パンを身につける。
「また明日来ます」
「はい、また明日」
「えっと、みかこさんもまた明日」
見えないみかこさんに向かって言った。
返事が戻ってきたのかはわからない。
「あんまり、気を落とさないでくださいね」
ユラリがみかこさんに言った。
ユラリとみかこさんに手を振って、私は砂浜を後にした。
◇
「ゆうちゃん、しっかり掴まっててね」
自転車の荷台にゆうちゃんを乗せ、2人乗りで家まで帰る。
みかこさんは海の上を浮いて移動してたらしいし、幽霊なら乗ってられるよね。
実際の5歳児を荷台に乗せたら落ちるだろうな。
水色のクレヨンを握ってもらって、ちゃんとそこに居るか分かる様にした。
曲がり角や横断歩道がある度に、振り返ってゆうちゃんの持つクレヨンがあるか確認する。
「もう少しで着くよ!」
ゆうちゃんを後ろに乗せてる緊張感で、運転が慎重になる。
ゆうちゃんを確認しつつ進んだ事もあって、いつもは20分位の道のりが、40分位かかった。




