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第三十二話 ゆうちゃん③

「良いですよ、探しに行きましょう」


 ユラリが笑ったまま言った。

 良かった、一緒に探してくれるみたい。


 私一人で行ってもゆうちゃんのお母さんに気づけないもんな。


「私、今日服の下に水着を着て来たんです」


 そう言って、その場でTシャツと短パンを脱いで、水着姿になった。

 青と緑のボーダーの水着だ。


 去年のだけど、まだなんとか着れた。

 あんまり身長は伸びてないからかな。

 あともう少し背はほしいんだけど。


「ももかさん、可愛いですね」


「えへへ、ありがとうございます」


 ユラリに褒められると嬉しい。

 軽く伸びをして、海に入る準備をした。


「ユラリさん、この軽自動車を撮った場所ってどこだか分かりますか?」


 スマホの写真をユラリに見せて尋ねる。

 私には海の中は全部同じ場所に見えた。


「何となくは。近くに行けば分かると思います」


「そこまで案内してください」


「ええ、分かりました」


 首にかけていたゴーグルを着ける。

 海はプールよりも目が痛くなりやすい。


 息継ぎするときしょっぱくて、水の中にいるのに喉が乾く。


「じゃあ行きましょうか」


 ユラリに言った。


 砂浜から海に向かって歩いていく。

 段々と水の抵抗が強くなってきた。

 腰まで水に浸かったら、もう泳いだ方が早そうだ。

 持っていた浮き輪を水面に浮かべて、ばた足で進む。


「ももかさんは泳ぐの好きですか?」


 ユラリが仰向けに泳ぎながら言った。

 しっぽは水しぶきを立てずゆっくりと水を押している。


 長い髪が水中をたゆたっている。

 どこで見てもユラリはキレイだけど、やっぱり海の中の方が似合う。



「好きですよ。最近暑いですし、水の中は気持ちいいです」


 8月に入ってから暑くなった。

 朝なのに日差しはわりと強い。


 泳ぐのは好きだけど、得意って程ではない。

 多分人並みには泳げる、と思う。

 学校のプール以外で誰かと比べたことはないから、自信はない。


「ふふふ、泳ぐのは気持ちいいですよね」

 

 そう言って、ユラリが姿勢を変えた。

 立ち泳ぎになったユラリがぱしゃぱしゃと顔に水をかけてきた。


「うわっ、ユラリさんいきなりなんですか」


 私の両手は浮き輪を持ってるから反撃出来ない。

 もう足がつかない位深い所に来ていた。


 浮き輪を手放すのは少し怖い。


「ももかさんの顔が暑そうだったんです」


 ユラリはニコニコと笑っている。

 確かにずっと海面から出している頭は体より熱がこもっているけれど。


「ユラリさん、陸に上がったら仕返ししますからね」


「望むところです」


 ユラリは悪びれずに笑った。

 笑顔を見て許しそうになる。

 美人は得だなあ。

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