第二十九話 おばけ⑥
私がハートマークを増やすのを見て、ユラリも真似してハートマークを描き始めた。
「ふふふ、ハートがいっぱいですね」
ゆうちゃんもハートマークを描いてる。
「可愛い、ゆうちゃん可愛い!」
いとおしさが溢れて来るけれど、触れないから言葉で表現するしかない。
端から見たら不審者かも。
棒が空中で揺れている。
「お姉ちゃんも可愛いね、ですって」
ユラリが通訳してくれた。
ゆうちゃん可愛い。
お世辞だとしても嬉しい。
そんなことを言ってくれるのは君だけだ。
「ゆうちゃん、ありがとうね!」
やっぱりこの子の為に何かしたい。
自己満足でもいいや。
「そろそろ日が上りますね」
ユラリが言う通り、大分太陽は上に来ていた。
いつもより長い時間海に居た気がする。
「もうそんな時間ですか」
名残惜しい。
あんなに幽霊にびびっていたのに現金だと自分でも思うけど。
「ゆうちゃん、また明日ね」
「またね、だそうですよ」
ユラリが言った。
「ユラリさんも、また明日」
「ええ、また明日」
ユラリとゆうちゃんに手を振って、砂浜を後にした。
◇
一旦家に戻ってシャワーを浴びた後、私は自転車で図書館に来ていた。
調べものをするなら図書館が良いだろうと思ったからだ。
「事件って、どう調べればいいんだろう」
新聞を見る?
でもいつの新聞なのか分からない。
まずはスマホで検索をかけてみる。
「◯◯県、5歳、ゆう、っと」
ゆうちゃんが名乗った名前をそのまま入力した。
名前の漢字は分からないからひらがなだ。
検索結果には、幼児向けのおでかけスポットが表示された。
「うーん、◯◯県、5歳、死亡事件」
無意識に避けていた直接的なワードを入れる。
さっきとは打って変わって物騒な検索結果が出た。
「交通事故では無いのかな?」
検索結果をざっと見てみるがそれらしい物は見つからない。
ゆうちゃんが死んじゃった理由、本人には聞けないし。
「◯◯県、子供、海、死亡……あ、これかな」
三回目の入力で出た事件は、三年近く前のものだった。
「母娘が乗っていた乗用車ごと海に転落。アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故だと思われる、か」
この先は有料です、と書かれたネットの記事だった。
事件の日付を確認して、その周辺の新聞を借りた。
「あった。△月▽日の記事。二年前の冬だ」
そこに書かれていたのは、ネット記事とさほど変わらない内容だった。
違うのは、母娘の名前が出ている位だ。




