第二十六話 おばけ③
「えーっと、じゃあ、自己紹介?とか?」
おばけ相手に何を話せばよいか分からなくて、しどろもどろになりながら切り出した。
ユラリとユラリが抱えているぽっかりと空いた空間を交互に見る。
空いた空間には写真に映っていた子供がいるはずだ。
「そうですね、名前が分からないとお話しづらいですし」
私はユラリです、と抱えたおばけに向かってユラリがいう。
意思の疎通は出来てるみたいだ。
端から見ると完璧に一人で話してる危ない人だけど、人魚と話してる私も同じように見えてるのかな。
「私はももかです」
ユラリに促されて名前をいう。
手に持ったカメラを操作して、この子の写真を表示する。
ほとんど透明だけど、女の子かな?
かろうじて顔が見える。
今私はこの子に話かけている。
そうイメージトレーニングをした。
「あなたのお名前も、聞かせてもらえませんか?」
ユラリが言った。
うんうん、と頷いている。
「この子はゆうちゃんだそうです」
女の子の名前はゆうちゃん。
「お年はいくつ?」
子供に尋ねる定番の質問をする。
「5歳だそうです」
ユラリが答えた。
5歳かあ。
5歳で死んじゃうなんて、悲しいよね。
他の人とも遊んだり話したり出来ないし。
せめて今は楽しんでもらおう。
「ゆうちゃん、私見えなくてごめんね」
楽しんでもらいたいけど、私には幽霊は見えない。
声も聞こえない。
申し訳なく思って言った。
向こうはこちらの事が見えて聞けるのに、私には出来ない。
ユラリだけの方がいいかもしれない。
「お姉ちゃん、お絵かきがしたい、だそうです」
ユラリが言った。
お絵かき…今日は筆箱もノートも持ってない。
家まで取りに帰るのは時間がかかるし。
そこまで考えて、いいことを思い付いた。
「じゃあ砂浜でお絵かきしない?」
砂に絵を書くのはすぐに出来るだろう。
「いいですね。ゆうちゃん、砂浜の方へ行きましょう」
ユラリも賛成してくれた。
岬から砂浜まで、ユラリは歩いてはいけない。
ゆうちゃんには私に着いてくる様に言って、ユラリは一度海に飛び込んだ。
「ちょうどいい木の棒があるといいんだけど」
ゆうちゃんの返事は私には聞こえない。
ちゃんと着いてきてくれてるかな?
砂浜まで歩きながら、木の棒を探した。
ユラリが砂浜につき、こちらに手を振っている。
私はそこに向けて、一人分の足跡をつけながら歩いた。




