第二十四話 おばけ①
だが写真に撮れないとその姿も残せない。
目に焼き付けると言っても限度がある。
そんなに記憶力もよくない一般人の私は、どれだけ感動しても脳みそに永久に保存はできないのだから。
「ユラリさん、この前撮った写真なんですけどね」
「はい、改まって、どうかしましたか?」
首にかけていたカメラを持ち、画面がユラリにも見えるように更にくっつく。
ユラリの服についたリボンの飾りが、風に揺れて腕にあたって少しこそばゆい。
カメラの再生ボタンを押して、一週間前にこの岬で撮った写真を再生する。
「最後にツーショットを撮ったじゃないですか。私が持ってもユラリさんは映ってないんですけど」
「撮りましたね」
「それに、私とユラリさん以外が映ってるんですよ」
そう言って、ほとんど透明な幽霊が映った心霊写真を見せる。ユラリが撮ったものだ。
「あら、本当ですね」
反応から見るに、ユラリはこの子供の幽霊のことを知らなかったらしい。
「あのう、この子ってまだいますか?」
ユラリを訪ねるのに少し間を空けたのは、この子が成仏するのを待つためだった。
ユラリは死んでしばらくしたら人間は無になると言っていたし、時間が経てばいなくなるんじゃないかと思ったのだ。
消えていてくれ、と淡い期待を込めながらユラリに聞く。
「ちょっと待ってくださいね」
そう言って、ユラリは写真に映ろうとしたときと同じように真剣な顔をする。
眉間に少しシワを寄せたまま、辺りをキョロキョロと見回している。
そして海面を指差して言った。
「いました」
居るのか、と落胆する。
朝なのに。
写真を撮ってから一週間も経っているのに。
ユラリが指差している方に視線をやっても、私には何も見えない。
ほかの場所と同じく、風にそよがれかすかに波立つ穏やかな海面が広がっているだけだ。
朝の光に照らされている海は、幽霊がいるなんて信じられない。
夜になると私にも見えるくらいはっきりと姿を現すのだろうか。
「いるんですか」
「怖がらなくても、見えないならいないのと一緒ですよ」
ユラリはそう言うが、怖いものは怖い。
なっちゃんといっしょに見たホラー映画を思い出した。
映画に出てきた幽霊も、水の上に浮いていた。
「水場は幽霊が集まりやすいと聞きました」
「そうですね。陸よりは多いと思います」
人間がだれも来ないような、陸からすごく離れた海だと、陸より少ないですけどね、とユラリは言った。
地球の陸と海の割合は、およそ3対7らしい。
人類未踏の地よりも、人類未泳の海のほうがきっと多いのだろう。




