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第二十三話 ホラー映画④

「撮りたかったのはお化けの写真じゃないよ」


「心霊写真なんだからお化けが映るのは当たり前でしょ」


「そうなんだけど……」


 ユラリが撮ったから映ったのだろうか。

 ユラリは映ってないのにひどい。

 ホラー映画だとこれから私は幽霊に狙われて成仏させない限り死んでしまう。


「水場は幽霊が集まりやすいって言うわよね」


「そうなの? この子以外にもいるのかな」


「分からないわ。あんまり怖そうな幽霊じゃないし、そんなに怯えなくてもいいんじゃない」


 なっちゃんの言うとおり、写真に映った子供の表情は、その辺にいる幼稚園児と変わらない。

 透けていなければ普通の子供だ。


「幽霊とツーショットが撮れてるんだから、十分だと思うわ」


「ツーショットはこの子と撮りたかったんじゃないよ……」


(ユラリさんはこの子がいることを分かってて撮ったのかな)


 聞いてみよう。

 ユラリの姿を撮るために今度は夜の海に行こうかと考えていたが思い直した。


 お化けに会いたいわけではないのだ。

 次も朝に行こう。



 夏休みが始まった。

 始まってから三日目の今日、私はユラリに会いに岬に来ている。


 期末テストや大会があって一週間くらい来れなかった。

 ユラリに会うのがすごく久しぶりな気がしている。


「ユラリさん、おはようございます」


「おはようございます、ももかさん」


 朝の挨拶を交わしたあとユラリの隣に座った。

 今日もカメラを持ってきている。

 ユラリに写真に映った子供について聞くためだ。


「なんだか久しぶりですね」


 ユラリが言った。

 心霊写真が衝撃的すぎて岬に来るのを躊躇ってしまったのだ。

 しかしもう落ち着いた。


 大丈夫。

 怖くなんかない。


「はい。夏休みが始まったんでこれからはもっと来れると思います。」


 三日前から夏休みが始まった。

 部活の練習は長期休みのほうが長くなるから、あまり手放しでは喜べないけど、ユラリに会う時間が増えるのは嬉しい。


「今日、服を変えて来たんですよ」


 そう言ってユラリは胸元の布をひっぱった。

 本当だ。


 この前までは白い服だったけど、今日は水色の服になっている。

 布はレースや刺繍で飾られていた。


「かわいい」


「ファッションセンスがいい人魚がいるんです。その子にこの服に変えてもらいました」


「私、次はもうちょっとおしゃれしてきます」


 そう言って自分の服装を見た。

 今日は上は無地のTシャツに下が部活用の運動ズボンだった。

 ちょっとダサすぎるかも。


「ももかさんは何を着ても似合いますよ」


 ユラリはそう言って笑う。


 何を着ても似合うのはユラリの方だと思う。

 足がついてたらワンピースやスカートを着て欲しいな、と思った。

 水色も似合うし黒も案外似合いそう。


 真っ黒なマーメイドドレスなんて着てもらえたら、私は一ヶ月はその姿を思い出して元気になれるだろう。


「ユラリさんの方が何を着ても似合うと思います」


「ふふ、ありがとうございます」


 ユラリは服についたレースを揺らしながら笑った。

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