第二十話 ホラー映画①
写真があればユラリに会えなくなっても姿が見られるし、この私にしか見えないらしい人魚が現実にいることを実感できる。
ユラリの存在を誰かに知ってほしいわけではないけれど、やっぱりこの岬でしか会えないって言うのは心もとない。
「そういうものですか」
ユラリは首を傾げてカメラと私を不思議そうに交互にみた。
そんなやり取りをしていると段々と日が昇ってきた。
今日はこれまでだろう。
ユラリが海に入り、手を振る。
手を振り返して、砂浜に足跡をつけながら堤防に向かう。
海水で濡れたカメラをタオルで拭いて、一旦着替えるために家に戻る。
午後からなっちゃんの家に行く予定だけど、流石に潮風と砂粒にまみれた服ではまずいだろう。
部屋で着替えたあとはカメラをパソコンにつなぎ、今日ユラリが撮った写真を整理する。
(良さそうなの、待受にしようかな)
写真をスマホにも保存し、一番気に入った写真を待受画面に設定する。
海中から海面に向けて撮ったものだ。
朝の淡い太陽の光を反射した水面は明るいところと暗いところでグラデーションになっている。
光の粒が夜空を埋め尽くす星のように散らばっている。
早起きな魚が光を背に泳いでいる。
きっと、ユラリが普段見ている景色。
ユラリが撮れたらその写真を待受にしようと思っていたが当てが外れた。
でもこれはこれで悪くない。
◇
自転車でなっちゃんの家まで走り、近くのコンビニに自転車を止める。
そのコンビニでお土産にサクレを買った。
私は桃味でなっちゃんはレモン味。
ももかだから桃が好きなの?って何回も言われてきた。
狙っているつもりはなく、単純に酸っぱいのより甘い方が好きなのだ。
果物の中で一番酸味がなくてひたすらに甘い桃味は割と好き。
バナナ味も好きだけどバナナはあんまりアイスやジュースとして売ってない。
アイスを片手になっちゃんの家まで歩き、ピンポーンとインターホンを鳴らした。
「はーい、ももかね」
こちらの顔が家主から見えるインターホンから、機械を通して電子音に近くなったなっちゃんの声がする。
うちのインターホンは声が聞こえるだけだから、カメラが付いてるとは分からなかった。
最初にこの家に来た時は油断してアホっぽい顔を晒していたことだろう。
いや、今もたいして変わってないかもしれない。
ガチャリと玄関の扉が開かれる。
なっちゃんは薄いサマーニットにデニムのショートパンツを着ていた。




