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第十九話 カメラ⑧

「ももかさん、二人で写真を撮りませんか。私が撮ったら、映るかもしれませんよ」


 ユラリそういい肩に下げていたカメラを持ち上げた。

 両手でカメラを持ち、こちらをみてニコニコと微笑んでいる。


 そうだ、ユラリが撮ればいいんだ。

 ユラリ自身が撮れば映るだろう。


 お化け自身が撮った心霊写真などないかもしれないが、私が撮るよりはいいはずだ。

 頭になかった考えを言われて「あ」と口に出してから固まってしまった私の肩を、ユラリが抱き寄せる。


「うーん、これだと、二人ともが画面に入ってるか、わかりませんね」


 ユラリがほっぺたをくっつけてくる。

 二の腕も密着している。


 ユラリがいっぱいいっぱいに腕を伸ばして、二人の顔にカメラのレンズを向ける。

 自撮りがしたいようだ。 


「ユラリさん、自撮りモードはこうじゃないです」


 ユラリからカメラを受け取って、自撮りモードに設定する。

 デジカメの画面側のレンズで写真を撮る方法だ。


 これで画面に映った通りに写真を撮れるようになる。

 設定が終わったあとユラリにカメラを渡す。


「これでボタンを押せばいいんですか?」


「はい。この画面がそのまま写真になります」


「わかりました」


 画面には自分の顔とユラリの顔が映っている。


 緊張で心臓の音が大きい。

 画面の中のユラリの顔もこの世のものとは思えないくらい整っていて、その隣に自分が映っているのが恥ずかしくなる。


「ももかさん、ちゃんとレンズの方を見てください」


 知らない間に俯いてたようで、ユラリに指摘される。

 ユラリの写真の為だ。

 頑張ろう、とレンズを見て笑顔を作る。


 癖で無意識にピースサインを作っていた。

 パシャリ、と音がしてフラッシュが焚かれた。

 画面にいるユラリは、消えずにカメラに収まっているだろうか。


「うまく撮れましたよ」


 そう言ってユラリが見せた写真には、ユラリと私、二人が映っている。


「わ、撮れたんですね!」


 ユラリの写真が撮れたことに喜び、声をあげる。


 ユラリからカメラを受け取り確認すると、画面の中のユラリが段々と薄くなり、消えた。


「えー……消えました」


「あら、残念ですね」


 ユラリがカメラを持っている間は消えないようだ。

 つまりユラリがカメラを手に持ったまま現像すればあるいは……いや、おそらくユラリの手から離れた瞬間、写真からユラリの姿は消えるのだろう。


「もう、ユラリさんダメじゃないですか」


 ユラリのせいではないとわかっているが、八つ当たりする。


「すみません」


 ユラリはカメラを持ち、おどけた様に言う。

 ユラリが持ったカメラの画面にはユラリの姿が映っている。


 人魚がもてば人魚の姿が見えるらしい。


「なっちゃんに心霊写真の撮り方、聞いてこようかな」


「なっちゃんって誰ですか?」


「友達です。本人は幽霊が見えたりはしないんですけど、ホラー映画が好きで、幽霊関係の知識もあると思います」


「ももかさん、そんなに私の写真が撮りたいんですか?」


「撮りたいですよ」


「本物の私がいるじゃないですか」


「それとこれとは別です」


 それとこれとは別なのだ。

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