第十八話 カメラ⑦
「いいですけど、多分、私よりもももかさんの方が先に死んじゃいますよ」
それもそうだ。
ユラリは若く見えるが現在100歳を超えていて、私はあと100年もしないうちに死んでしまう。
ユラリに指摘されて気がついた。
今の見た目は私のほうが若いけど、いつかユラリのほうが若く見える時も来るのだろう。
そうしてユラリは若いまま、私はヨボヨボのお婆ちゃんになって、ユラリよりも早く死ぬ。
ヨボヨボのお婆ちゃんになるまで生きていたいものだ。
「じゃあ、死んでお化けになったらユラリさんに会いに来ます。それから消えます」
「わかりました。期待せずに待っておきます」
「指切りしてもいいです」
「人間はすぐ忘れますし。それに遠い場所で死んだら、ここまで来るのも大変だと思いますよ」
死んだあとここに来るまでどれだけ大変かなんてわからない。
多分、外国で死ぬことはないだろうから国内で、例えば北海道や沖縄で死んだらユラリのところまで飛行機で3、4時間くらいの距離だ。
お化けが歩けるのかどうかは別にして、徒歩は無理だろう。飛行機には乗れるのかな。
運賃を請求されることはないだろうが、席には座れなさそうだ。
「お化けって意外と不便ですね」
「人間には見えないから皆怖がりますが、普通に生きてる人間の方がこの世界でできることは多いと思いますよ」
お化けが何十人も祟殺したらそれだけでホラー映画が5本は作れるだろう。
でも非力で何の技術をもっていない子供の私でさえ、やろうと思えば百人くらいは殺せるんじゃなかろうか。
例えば人が集まる場所、病院に放火したり、例えば飲食店に潜り込んで毒を入れてみたり。
人が死ぬときは呆気ない。
十ヶ月おなかの中で育った赤ん坊は、足で踏み付ければ一瞬で死んでしまう。
生まれることに比べて死ぬことは易しい。
人間はやったあと捕まるからやらないけど、幽霊は捕まらないのにあんまり事件を起こしていない気がする。
やっぱり幽霊になったあとに悪いことをすると地獄に落ちたりするんだろうか。
「普通の人が見えない人魚が見えるんですし、きっと来ようと思えば来れますよ」
「じゃあ、待ってますね」
ユラリは笑っていった。
多分信じてないんだろう。
私も保証する手段はないし。
今はまだ生身で来れるのだ。
お化けになってから頑張ればいい。
消える前に最後に見るのがこの美しい人魚なら、未練も残さず去れるだろう。




