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第十四話 カメラ③

 ユラリはパシャパシャと色んな所に向けて写真を撮っている。

 ユラリを写真に撮れない。

 私はカメラを持つ目的が無い。


 ユラリが楽しそうだからいいか、とぼんやりその姿を眺める。


 岬の上だとユラリは動きづらそうだ。

 上半身を捻ったり腕を伸ばしたり曲げたりして色んな場所を撮ってるが、海の中の方がよく撮れるだろう。

 そこまで考えて、このカメラが水の中でも動くことを思い出した。


「そうだ、防水だから泳ぎながらでも撮れますよ。これ」


「泳ぎながらって、海の中って事ですか?」


 ユラリに聞かれ、肯定を示すため頷く。

 塩水は良くないのかな?防水だから大丈夫だよね。


「じゃあちょっと行ってきます」


 そう言ってユラリはカメラを首にかけ海に飛び込んだ。


「そんなに深くには持っていかないでくださいね」


 岬の上からユラリに声をかける。

 はーい、とユラリが間延びした返事をする。


 海の底まで耐えられるカメラなら、ユラリが住む人魚の街も写真に納められるのだろうか。

 それともユラリと一緒で写真に撮れないのかな。


 海底に行けたら、どんな世界が広がってるんだろう。

 海の底は前人未到らしい。

 これは中学の時の合唱曲の歌詞で知った。

 宇宙へいき月の石を持ち帰った人間は、まだ海の底まで行けない。


「クラゲがいっぱいいます」


 少し後にユラリが海から頭を出して言った。

 海の上からだとキラキラ光る海面とユラリの顔が見えるだけで、クラゲがいるなんて分からない。


「危ない。刺されたら嫌ですね」


「人魚は鱗があるので刺されないんですよ」


 心配してくれてありがとうございます。

 とユラリが笑う。


 クラゲは海の中だけでなく砂浜にもたくさんいる。

 砂浜に打ち上げられたクラゲが干からびている。

 海の中だと透明なのに、打ち上げられて死んでしまったクラゲはほんのりと茶色く、積極的に触ろうとは思わない見た目をしている。


「私、前にクラゲに刺されました。最初は岩かなにかにぶつかったのかと思いましたよ」


「大変でしたね。人間にも鱗があれば刺されませんよ」


「鱗ってそんなにいいものですか」


「無いと困ります」


 ユラリは海中に潜ったり海面から飛び出したりを繰り返しながら写真を撮る。

 しばらくしてももかのいる岬に上がって来る。


「たくさん撮れました」


「きれい。写真で撮るとこうなるんですね」


 海中の写真はきれいだ。

 青緑の水に太陽の光が差し込み、たまに魚や蛸やクラゲが写り込んでいる。

 これが普段ユラリが見ている景色なのだろう。


「海の中だと、目を開けてもよく見えませんし、はっきり見るのは初めてかもしれないです」


「そうなんですか。私は逆に陸に上がった時の方が少し見えにくいです」


 そう言ってユラリは手を顔に翳して太陽を見る。


「人魚と人間の違いなんですかね。」


 人間と人魚には多分たくさん違いがある。

 ユラリと同じ景色を見ることは無いのだろうと思う。


「やっぱり長くいる方に合わせる様になっているんじゃないでしょうか」


「ゴーグルをつけると何もつけないよりよく見えるし、人魚もそういうのがあるかも」


「目に何か被せたらいいんですかね」


「サングラスで太陽の光を遮ったらいいかもしれません」


「陸は海の中より明るいですしね」


 そう言って笑うユラリは海中で見ても明るいのだろう。


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