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三題話  作者: amago.T/
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<亡霊、プライド、化粧>のお題をいただきました。


 見れば見るほど疑わしい説明の書かれたホームページや口コミを頼りに事務所に訪れた依頼者が、どれほどに苦悩しているのかをだらだらとオーバー気味に感情を込めて語るのを、同情している風に装って必要な情報以外聞き流したらば報酬や免責事項が細かい字でびっしりと書かれた書類にサインをしていただくのが、僕の仕事です。

 決行に都合のいい日時を決定したらばひとまずはお帰りいただき、疑わしげな目で見てから去っていく依頼者の素性を調べ、案件の信憑性が高いと判断したらば先生に必要事項を報告するのですが。

 先生は少し面倒──もとい気難しいお方なので、あまりにおもしろい──もとい難しい案件の場合は報告するのが億劫になります。いっそのこと先生の許可なしに同業種の他の方に譲ってしまいたくもなりますが、それはしないようにとの厳命を受けておりますので、仕方なく、本当に仕方なく、それを表情に出しつつ仕方なくご報告申し上げますが。


「あたしのプライドにかけて除霊してやるわ!」


 少しでもおもしろ──もとい難しい案件だと、すぐにこれです。

 意気揚々と宣言し、先生が取り出したのは、先生曰く“小さめのコスメポーチ”です。

 小さめの鞄になどはいるはずもないそれの中には、試供品や、知り合いから強奪──いえ、快く譲ってもらった品々が先生なりに整頓されて詰まっています。

 それのファスナーを強引に──もとい丁寧に開けてすることといえば、化粧以外にないでしょう。

 先生は、一流の除霊師なのです。……が、同業種の他の方とは少し異なりまして、気合いを入れるときには、化粧をするのです。

 気合いを入れようとすればするほど念入りに、化粧をします。

 なので、先生がおも──いえ、難しい案件に当たったときは、とても、とっっても厚化粧になります。

 自己暗示(マインドコントロール)の一種だろうと思いますが、そのときの厚化粧さと化粧臭さったら半端じゃぁない。それはそれは、見ているこちらが気分を悪くするほどにまで。

 今回の案件は、付き合っていた彼女がいわく付き物件に引っ越したら女嫌いで男好きな亡霊がおり、怪奇現象に悩む彼女を心配して依頼者がそこを訪ねたときに憑かれた(気がする)というもので、亡霊の怨念が強いことと依頼者自身が憑かれやすい体質な(らしい)のもあって他の同業種の方に依頼しても効果が無かったそうです。

 それはそうと。


(くっさ)い!!」


 堪えることなくおもいっきり咳込んでやりますが、先生は素知らぬ顔でございます。

 自分のことだとは露ほどもお思いになっておられないご様子で、僕にもう少し丁寧に清掃をするようにとさえやんわりとご指摘になります。


 さて、準備が整いましたらば現地へと向かうのですが。


(割愛)



 今回も何事もなく仕事を終えられましたので、報告書を提出したらば本日の僕の業務は終了でございます。

 先生の働きぶりについては僕から別段申し上げるべきことはございませんので、作成しました報告書をご参考に。


 皆さま、なにかお困りでしたら、この事務所へお立ち寄りください。



 〜〜*報告書(仮)*〜〜 作成日時 ○/△/◇

       作成者:雑用係


 以下、依頼者を甲、実行責任者を乙と表記する。


 依頼内容

  甲に取り憑いたとみられる霊の追い払い


 実施内容

  乙の働きかけにより霊は対象から剥離、乙持参の魔除けの効能により消滅を確認。

  なお、魔除けは乙が自身に塗布する形で霊の付近へ持ち込み、強制剥離により消耗していた霊はあまりの化粧臭さに怯み、乙の顔を見て自我を取り戻し、成仏。

 ---以上---

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