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迷子の竜の冒険記  作者: 黒辺あゆみ
第二章 迷子の竜、都に行く
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都での生活 応用編

Sideコニー


都の学校でも、ポチは一緒だ。

 おじさんが言うには、ポチはコニーの「契約竜」だから、ずっと一緒にいてもいいのだそうだ。

「契約ってなに?」

「竜に名付けをすることだ」

コニーの質問に、おじさんが言った。

 確かにポチにポチと名前をつけたのはコニーだ。母親に名前はなんだと聞かれたので、ポチだと答えたのだ。

「あいつめ、確信犯か……!」

これを聞いたおじさんはうなだれていた。

 コニーにはよくわからないけど、ポチとずっと一緒にいられるのは嬉しい。

 それに、都の学校にも友達ができた。

 きっかけは入学式だ。今からどうすればいいのか説明がわからず、いっそ帰ろうかと思っていると、親切な男の子が話しかけてくれたのだ。言葉が切れ切れのおかしな話し方だったが、コニーには聞き取りやすい早さで助かった。彼があと一歩遅く現れれば、コニーは帰っていただろう。

「都の学校でも、やっていけそうかも」

「うむ、よき友人は宝だな」

一日の授業内容をコニーに説明する羽目になる彼が、教師に泣きつくまではそう時間はかからなかった。

 その友達の兄が、コニーの兄であるピートを知っているらしい。聞くとなにやら有名人のような言い方をしていた。ピートはそんなことを一言も言っていなかった。

 友達の兄が話したいと言ったらしく、コニーはポチと一緒に友達の家に招待された。

「こんにちわコニーです、よろしく」

「ポチという名だが断じて犬ではない、誇り高き竜である」

一人と一匹に挨拶され、友達の兄は目を丸くした。

「へー、あのピートの弟、ほー……」

友達の兄は興味津々といった様子で、コニーをじろじろながめ、ずっと笑っていた。

 ピートが何をしたんだろうかと気になって尋ねてみた。

「にーちゃん、なにかしましたか? たまにすっごい悪戯をして、村中から追いかけられたりするの」

ピートの悪戯は、そこいらのものとはスケールが違う。ピートは色々とすごいのだ。

 いつだったが、村の子供が落とし穴作りにハマってしまい、村の住人が困った時があった。その時子供を懲らしめるために、ピートはすごい落とし穴を作って、子供たちを突き落とした。落とし穴にはめられる気持ちを学んでもらおうとしたのだ。ここまではいいのだが、問題はこの後だ。

 落とし穴に出口を作ってあったらしいが、そこに至るまでの道は複雑な迷路になっており、子供の力では踏破できず、大人が救援に向かうもそちらも迷うという二次被害が発生。結果、村人総出で救助にあたる大事になった。

 これを聞いた友達の兄は、爆笑した。

「弟なだけあって、よく知ってるな! ま、ピートだって親兄弟に知られたくないことがあるだろうから、内緒ってことで」

知られたくたいくらいに恥ずかしいことでもしたんだろうか。とっても気になるし、コニーには何でも話してくれるピートなので、今度手紙で聞いてみようと思った。


Sideポチ


先日会った青い竜から、上手な火の吹き方を教えてもらうことになった。

「火を吹こうとすると、たまに口の中が煙たくなってしまうのだ」

ポチが告白すると、青い竜は言った。

「おまえ不器用だな」

ポチはムッとする。不器用とは何事か。他竜よりも、ちょっとだけやり方がまずいだけだ。

 ポチがいじけ出す前に、青い竜は口の中で煙を出さない方法を伝授してくれた。

「よいか、息を吸うときに火を出そうとしてはいかん。すった息を、思いっきり吐きながら火を出すのだ」

なるほど、息を吸う時に火を出そうとしたのがまずかったらしい。ポチはたまに水遊びでも、水の中で息を吸おうとして溺れることが、たまにある。あれと同じことかもしれない。

 理解したことをそう説明すると、青い竜が呆れた。

「お前、馬鹿だな」

失礼な竜である。

 ともあれ、言われた通りに火を吐いてみる。

「むぅ」

ポチはゆっくりと息を吸った。火はまだ出してはいけない。

「ふぅ!」

ぶふーボスッ!

 最初うまくいきそうであったが、すぐに煙が出てしまった。だが煙を口の外に出すことには成功した。

「……。」

微妙な結果にポチが沈黙していると、青い竜は不思議そうに煙を眺める。

「いるのだな、こういう竜も」

なんだ、自分が生まれたときから完璧な竜だったとでも言うのか。己は子供なのだから、多少の失敗は寛容に受け止めてもよいであろうに。

 ポチがふてくされていると、青い竜はそれを感じ取ったらしい。

「毎日練習すれば、そのうちできるようになるだろう」

そうなぐさめてくれた。

 ――我はできないのではない、断じてそうではない。

 今日はかえって、おやつをやけ食いしてやろうと思う。

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