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迷子の竜の冒険記  作者: 黒辺あゆみ
第三章 迷子の竜、お城に行く

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恋は命がけ

Sideコニー


コニーはピートにお願いごとをされた。

「王子様がね、婚約者のお姫様と直接話がしたいらしいんだ。でもね、王子様はあの通り五メートル圏内で会話ができない人だろう? コニーの力でなんとかならないかな?」

王子様のお悩み相談をさらに相談された形である。

 今までも、なんとか近くで会話をさせようと周囲の人間が努力したそうだが、ダメだったらしい。

 対人恐怖症の王子様に直接会話を求めるなど、なんという無理難題を吹っかけるのだとコニーは思った。会話ができないから対人恐怖症であるのに。

 しかし、他ならぬピートからのお願いであるので、コニーは張り切った。

「お話できればいいの?」

「そう、なんとかなるかな?」

コニーの質問に、ピートが頷く。

 コニーはもう一度念を押す。

「お話できればいいんだよね?」

「そうだよ」

ピートの答えを聞いて、コニーはしばし宙を見つめたかと思うと。

「わかったー。行こうポチ」

「了解である」

ポチを引き連れて、コニーは元気にお城の廊下を走っていく。

「今日も元気ねー」

「廊下は走るな」

「おやつがあるわよー」

コニーはいろいろな人から声を掛けられ、それらにいちいち挨拶してまわる。

 そうして走っていく先は、とある部屋であった。

「おじさんこんにちはー」

コニーがドアを開ける前に声をかけると、中から注意が飛んだ。

「くれぐれもドアを壊すな」

これまでにコニーが三回、ドアを壊しているのだから無理もない。

「そうっと、そうっと」

開けたドアの先にいたのは、中年の男性であった。

「来ちゃった」

コニーはにっこり笑って部屋の中まで入っていく。

 この男性、実は都にいるおじさんのお兄さんであった。つまりはこの男性も母のお兄さんであり、コニーのおじさんなのだ。

「今日は何用だ」

「ちょっと道具を作るんだぁ」

おじさんの問いかけに、コニーは答えた。

「……なんの道具だ」

「あのね、お話する道具なの」

そう言ったコニーは、さっそくおじさんの部屋の捜索を始めた。


Sideポチ


ポチのお城での生活は、実は忙しかった。

 というのも、ポチが実施している調査についての項目が増えたからである。

「魔術師の血は、胃腸によいのか滋養強壮に効くのか、どちらであるか」

この質問に、一応聞いてやった父は胃腸によいのだと答えた。

 そして今回会った母にも、同じ質問をしたところ。

「あらぁ? カゼを引いたときの飲むのではないかしらぁ?」

という、第三の意見が提示されたのだ。想定外である。

 しかも、この調査項目は条件が厳しい。まず、丈夫な種族である竜はめったにカゼをひかない。ゆえに、カゼ薬としての効能を確かめるのは困難である。どうやったらカゼに効くという実証を得られるのかという難問に挑みつつ、今までの調査もこなしていたポチであった。

 そんなポチに噛み付かれるのを警戒している魔術師連中から、コニーのおじさんである魔術師は、この調査を意味が無いので止めさせるように要請されていた。ポチの噛み付き被害が拡大しているためである。

 何より恐ろしいのは、魔術師の血に効能があるという結果に至った場合であろう。常備薬代わりに連れて行こうとか、他の竜が考えたらどうしてくれるのだ、と魔術師たちは戦々恐々である。

 しかしこの被害の困った点は、ポチが噛み付くのは魔術師のみであるゆえ、他の城の者は他人事であることだ。ポチの調査結果を待っている者もいるのだとか。他人事だと思って面白がっているのであろう。

 都でも同様の調査を行っていたので、ポチは魔術師の間である意味有名になっているのであった。

 そんなポチは、コニーが道具作りにかかりきりになっていてヒマなので、コニーが物を壊さないように見張っている魔術師に、気になったことを聞いてみた。

「王子様は五メートル以内で他人と会話すると、どうなるのだ?」

じんましんが出るとか、しゃっくりが止まらなくなるとか。なにか症状が出るのだろうか。

 そんなポチの素朴な疑問に、魔術師が答えた。

「泡を吹いて気絶すると、聞いたことがある」

そんな、森で突然熊に出くわしたのでもあるまいに、とポチは思った。

 なんとも人生命がけな王子様である。

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