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迷子の竜の冒険記  作者: 黒辺あゆみ
第三章 迷子の竜、お城に行く
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ピートの主張

私はピート、コニーの兄です。

 思えばコニーがポチを拾ってきたときは驚きました。だって竜ですよ? まず竜は何を食べるのかから調べなくてはなりません。毎日大人数人分の量の生肉を仕入れなくてはならなかったら、どうしようかと悩みました。

 けれども、人間と同じ食事で構わないみたいなので、安心したものです。あれで生肉食だったら、もう一度捨てて来させたかもしれません。そんなに食べられたら、裏山は数日でハゲ山になったことでしょう。

 すんなりと人間との生活に慣れた竜でしたが、我が家での生活の何が悪かったのか、竜はなにやら肥満気味です。コニーと同じ量を食べて、コニーは太らないのに何故竜は太るのでしょうか? 太りやすい体質なのかもしれません。

 いつか会う親竜にしかられて襲われたらどうしようかと思っていましたが、親竜は肥満問題をそれほど深刻に考えていないようでした。

 このまま深く考えないでくれるとありがたいです。


 そうそう、今回私は王子様に招かれて、お城にうかがうことになりました。

 私は招いてくださった王子様と、親友だと言われています。これにはたいへん馬鹿らし、ゲフン! 大きな理由があるのです。

 あれは私が都の学校へ通っていた時でした。

 ある日、学校へ忍び込んでいた王子様(対人恐怖症のくせにこういう度胸はあるらしい)が、私の目の前へ走りこんできたかと思えば。

「友達になってください!」

そう叫んで走り去ったのです。まさしく通り魔的犯行です。その時はどこの変態かと思いました。

 後で聞けばあれは王子様で、私は王子様と五メートル圏内で会話した貴重な人間だとか言われました。会話ですか、言い逃げされただけなのに。

 ともかくそういうわけで、私は王子様の親友というレッテルが貼られたわけです。

 まあこのレッテルを、最大限利用しようかとは思いますがね。


そんな王子様が、なにやら私に大事な相談事があるそうなのです。

 正直メンドクサ……恐れ多いことだと思ったのですが、ポチの友人の青い竜が城まで送ってくれるらしいとコニーに言われて、誘惑に負けてしまいました。「竜に乗るなんて!」と父に鬱陶しいほど羨ましがられました。

 帰ったらせいぜい自慢してやりたいと思います。

 そして、王子様が私に何の相談があるのかというと。

 なんでも近々、王子様の婚約者の方が隣国からいらっしゃるらしく。その婚約者の方と、必ず直接お話をするようにと、王様からきつく言われたそうです。乳母や乳兄弟ごしの会話はダメだと言われ、どうしようと困ったのだとか。

 王子様自身ではいい考えが思い浮かばず、思い余って私に相談しようと考えたのだと聞きました。

 竜に乗って、あんな辺鄙など田舎に一人でやって来る度胸があるなら、婚約者との会話ぐらい、できそうなものですがね。それとこれとは話が違うらしいのです。

 しかし私としても、こんなことを相談されても、がんばれと励ますくらいしかできそうもない。王子様を拘束して婚約者の姫の前に転がせというなら、協力を惜しみませんが。

 こういうのは、どちらかというと私の母に相談すべきだったのではないでしょうか。他人の恋愛ごとは大好物ですから。

 それでも、何かしらの解決策を出さなければいけない雰囲気です。私の案は全てばあやさんに却下されたので、仕方ないのでコニーにこの相談を丸投げすることにしました。

 コニーは私からざっくりとした話を聞くと。

「わかった~」

そう言って勢いよく頷いて、ポチを連れて走り去りました。

 本当に分かったのでしょうか、少々不安です。

 しかし、この結果がどう転ぶかわかりませんが、すくなくとも面白いことにはなるに違いありません。そのあたりは、コニーを信頼しているのです。

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