表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

馴染みの風景

作者: 楸 椿榎

今日、うちの近くの本屋が閉店した。


子供の頃から本を買いに行くというと、とりあえずそこに行っていたから何かと世話になっていた。

限定版の予約などもそこでしていたし、部活で使うコピー用紙なども買いに行っていた。


最近は隣の県の大学に通学するようになったという生活の変化もあり、足を運ぶ回数は減っていた。

少し前に一度、閉店するという話は聞いていた。

そうなのか。なら閉店する前に一度は行くか。

そう思っていた。

多分年末に閉店するんだろう。

そう思っていた。


予防注射を打ちに行くとき、その本屋の前を通った。

すると、私の母がこう言ったのだ。

「ああ、そういえば今日閉店するらしいね、ここ」

慌てて首を回した。

そこにはいつもの見慣れた本屋が佇んでいる。

その姿は、みるみる遠くなっていった。


予防注射の後、その店に立ち寄ろうという話になったのだが、病院から出てみると外は雨になっていて、「洗濯物を干したままだ」という母の言葉で約束は立ち消えた。


家に帰ってから大分経って思い出したが、時すでに遅し。

暗くなった店の前で、雨の音が嫌に耳に響いた。


次のお店が何になるのか、私は全く知らない。

だけど、たぶんないだろうとは思いながらも、また本屋が開かれることを、片隅で期待していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ