案件3 魔女裁判 7
そう。私も実は今朝寝坊して、今日の英語のテストは散々だったわ。早くに寮を出て自習室で単語の暗記をしようと思っていたので、似たようなものです。
そうそう。『青い鳥』の内容が知りたいとのことなので、簡単に説明したものを同封しておきます。
『青い鳥』の作者はメーテルリンクで、『チルチルとミチル』というタイトルでなら聞いたことがあるんじゃないかしら。
今回の劇の配役は、私はミチルの役をすることに決まりました。
『雪の女王』ではカイの役。『シンデレラ』を演れば王子。男役ばかり回ってくるのはなぜかしらね。
台本を覚えるのがまた一苦労だわ。私は暗記力がないから、演劇をするには致命傷よね。
致命傷といえば、ヒトミちゃんの今度の恋も病膏盲にはいるという感じね。
リナちゃんはそういうけど、ヨハン先生はまるでモデルみたいで素敵だわ。背も高いし。
ファンクラブができるのも、時間の問題じゃないかしら。
それに今までのヒトミちゃんの片思いの相手より、ずっと現実味があるわ。アイドル、俳優、歌手、アニメの主人公……。
私も人のことは言えないわね。でも仕方がないと思うわ。
私は他のみんなと違って、ずっと私立の幼稚園、初等科中等科がエスカレーター式になった学校に通っていたんだもの。しかも女子校。
だから大学は、絶対共学にするつもりです。しかも、寮生というのが辛いわよね。
うちの両親の考えてることって分からないわ。純粋培養のお嬢様として育てようにも、うちはヒトミちゃんやリナちゃんとは違って中流家庭なのよ。
どうせ卒業後OLを二、三年やって寿退社なんて、つまらない人生設計よね。
最近私が読んだ本といえば、『ガラスの仮面』の文庫版ぐらい。アユカさんのように、難しい本は読めないです。
でも谷川俊太郎の詩集は、機会があれば一度読んでみたいわ。
教科書に載っていた『二十億光年の孤独』は、私のお気に入りの詩の一つです。
『万有引力とは
ひき合う孤独の力である』
このフレーズが特に好きです。
サン=テグジュペリといえば、『星の王子さま』を思い出すわ。ありきたりかも知れないけれど、私は王子さまとバラの花のシーンが好きです。
あと羊の絵を書いたのを見て、うわばみに飲み込まれた羊だと王子さまが言う場面。
小さい頃、うわばみという意味が分からなくて、何だか気になってよく眠れなかった覚えがあります。




