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案件3 魔女裁判 2

 しかし愛美まなみは、最初から除外できないものとして、鬼や魔物の存在を認めている。それは愛美が紫苑しおんと同じく、人の身に在らぬものの姿がえるからに他ならない。

 非日常を知ったからこそ、出てくる言葉なのだ。

「存在の有無は、誰も確かめることはできませんしね。しかし、神の存在を信じることと神を信じることは別問題でしょう」

 紫苑は、はからずも教会に身を寄せて、病床の神父を手伝い助祭の真似事をしたりもする。自分がキリスト教徒であるということは、外国人の血を引いているのと同じぐらい、疑いようのないことだ。

「大河のように連綿と繋がる歴史の流れを考える時、人間の力の及ばない運命のようなものを感じることがあります。宇宙的、超越的なもの。それを神と呼ぶなら、私は神を信じています。クリスチャンの紫苑さんに、こんなこと言うのは失礼でしょうけど、キリスト教的な神による救いなんてものは、信じていないです」

 人間の有史以来の長い年月も、宇宙という永遠をも内包するかのような広大な時間律と照らせば、なんと儚いものか。人は歴史を宇宙を思う時、自分の卑少さを知り、運命という言葉に集約させる。

 葬式は仏式で、結婚式に神前式をとったり神社への参拝もし、クリスマスを祝う。世界的にも珍しく宗教的な制約の少ない日本に生まれたということも、愛美の発言に大きく影響しているだろう。

「精神風土、宗教土壌の違いがありますから、それは当然でしょう。概して信仰心が薄いと言われる日本人らしい、柔軟的で理知的な考え方です」

 紫苑は、色々な宗教の理念や作法に興味がある。それを調べることがライフワークになっていると言ってもいい。常々日本の宗教の多様性と、独自のスタイルには尽きせぬ関心を払っている。

 神道。仏教。修験道。陰陽道。すたれてしまったものも取り混ぜて、土俗信仰に至るまで日本固有で独特の発展を遂げていないものはない。日本が最先端科学技術を標榜するようになったのはごく最近のことで、実際は素晴らしい呪術体系に裏打ちされた呪術国家というのが本当のところだ。

 いつの世でもその事実はひた隠しにされ、今現在も日本の闇として温存され、時には社会に恐怖と混乱を招くこともある。

 その闇に生きる者の一人が、紫苑や愛美といったSGAのメンバーなのだ。

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