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案件1 そして誰かがいなくなる 7

 愛美まなみの頭の中に、一つのシナリオができる。

 開発の途中で放棄された裏庭の工事。破壊された祠に祀られていた、地神の祟りだろうか。

 工事員達に何かあったという話は聞かされていない。それとも知らないだけだろうか。

 警察や社会はあてにならない。だからこそSGAがあるのだ。

 事件を解決するのは愛美と東大寺だ。

「何それ、面白そうじゃん。真冬の怪談かよ。その祠とやらを放課後にでも見に行ってみようぜ」

 東大寺に負けず劣らず軽そう(失礼?)なのは、清水康平と言って、菊池信雄の親友らしい。真面目な信雄と少し軽薄なところのある康平は、なぜか馬が合うらしい。

 そんな彼らのグループの一員となった東大寺は、目先が利いたのだと後になって愛美は思った。

「祠はもうないよ。次に行った時には撤去されたのか、跡形もなかった」

 信雄がそう言うと、康平が残念そうに舌打ちした。他の生徒達もすぐにその話題には興味をなくし、別の話で盛り上がり始めた。

 このクラスの生徒は、よほど怪談が好きらしい。

 愛美は、鬼や妖怪などは信じるが、幽霊は信じていない。この目で見たことだけを信じるのが、愛美の得た哲学だ。

「この学校建つ前のビルがさ、幽霊ビルって呼ばれてたって知ってるか。この場所って戦争中に病院があったんだって。だから今でも夜中の学校には、空襲で瀕死の重傷を負って運ばれてきて死んだ人達の幽霊がこう・・・」

「緑ケ丘高校七不思議その1。空襲で亡くなった人の幽霊が出る」

 幽霊の真似をして、手を胸の前でだらしなく下げる男子生徒に、誰かが合いの手を入れた。

 ちょうど昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り、生徒達はまるで魔法でもかけられたかのように、自分の席へと移動して行った。

 しかし教師がやって来て、起立礼の挨拶が始まるまでは、すぐには話し声は収まらなかった。

  *

 緑ケ丘高校で最初に失踪したのは、玉城和世たまきかずよという三年生だ。センター試験対策の補講が終わって友人と帰る約束をしてトイレに行ったまま、そのまま戻って来なかった。

 先に帰ったのかと訝りながら友人達は帰途についたが、和世はその日以来ずっと家に戻っていない。女子トイレには、和世の鞄だけが残されていた。

 二人目は、樋口ひぐち茂という四十代半ばの英語教師だ。その日配るプリントを忘れて、授業を中断して取りに戻ったまま、教室には戻って来なかった。

 その時間は空いていて職員室にいた教師の誰もが、樋口教諭は職員室には戻って来てはいないと断言している。

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